希少職種図鑑 [都市計画]

職種概要

派遣中:2人
累計:204人
分類:公共・公益事業
活動例:未開発地域の開発計画策定に向けた助言 など
類似職種:土木、行政サービス など

※人数は、2019年7月31日現在。

話=谷津憲司さん(シニア海外ボランティア/コロンビア・2015年度3次隊)

Q メインの活動は?

活動地の急斜面に立つバラック群。斜面の特性を生かした緑地計画に谷津さんの提案の一部が受け入れられた。「緑地の管理運営は地域の協力が欠かせないので合法住宅地と非合法住宅地の住民の交流がどう実現されるか楽しみ」と谷津さんは話す

 活動地域はいわゆるスラム地帯で、合法、違法の住宅地が混在し、車も入れないような急斜面に非耐久資材のベニヤやトタン板などでつくられたバラックが乱立している。雨が降れば、土砂崩れ、鉄砲水が住宅を襲うこともある。ゴミが散乱し、野放しの犬の群れが餌をあさる光景も珍しくない。このような地域の課題を解決するための計画立案、工事監理が主な業務だった。
 ゴミ処理システムや広域的な排水処理システムの確立が根本的な解決につながるが、対処的な計画が多く、長期的な提案はなかなか受け入れられない。私の提案した、将来を見越し、環境に配慮した公園計画に予算がつくことはなかった。プロジェクトの1割も実現しないのはどの国も同じだ。プロジェクトのうち途中参加した公園計画だけが帰国前に竣工。合法住宅地と非合法住宅地の境界にある公園で、実施にあたっては住民のボランティアが活躍した。

Q 活動の最大の困難は?

 私は、配属先で部署が2度、カウンターパートが雇用契約切れで3度変わった。地域計画(*1)は長期的な展望での立案が不可欠だが、1年ごとに契約を更新する現地の職員に、改革や提案を検討する精神的余裕はなく、計画や技術の継承はほとんど望めない状態だった。

Q どう対応しましたか?

 総合的な地域計画の重要性を職員も理解しているが、末端組織のレベルでそれを実現するのは難しい。かといって、無視してもいいと言うことではない。私は、現地調査を元に、現状分析のデータを3次元CAD(*2)や画像編集ソフトを使いできるだけ視覚的に表現して職員に配布し、長期的、広域的な視点で対象地域を見てもらえるように努めた。また、現地の人は短・中・長期的な展望に加え、日常のスケジュール管理も不十分なので、その重要性を伝えるため、現地では手に入りにくい日本のスケジュール手帳を全員に配布した。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 これまで培ってきた自分の技術や能力が現地で十分に生かせることは稀だと思います。現地の要望に対応できる柔軟な発想が必要ですが、そもそも要望がない場合もあります。そんなときは広い意味での文化交流と考え、自由に活動したほうがいいでしょう。私は配属先で大学を出たばかりの青年に、週2回昼休みに日本語を教えていましたが、彼は日本政府奨学金留学生として今年の4月に来日し、東京工業大学の大学院で建築構造の研究をしています。こんなうれしい話が聞けるのも、自分の専門にこだわらない活動があったからだと思っています。

*1 地域計画…地域空間を整備することによって、住民の生活の向上をはかる総合的な計画。
*2 3次元CAD…コンピュータを用いた3次元の設計をするための支援システム。

谷津さん基礎情報





【PROFILE】
1947年生まれ、宮城県出身。70年東北工業大学建築学科卒業、設計事務所勤務を経て71年から同大学勤務。99年から2015年3月まで同大学工学部建築学科教授。その間同学科建築学科長、株式会社地域空間研究所代表取締役を務める。15年3月、同大学退職。16年1月、協力隊に参加。18年1月帰国。現在、東北工業大学名誉教授。

【活動概要】
首都ボゴタ市の南部にある貧困層住居地域が抱える課題を改善するため、以下の活動を行う。
●住居地域の安全性確保のための道路計画と防災計画への助言
●自然環境を取り入れた住環境をつくるための計画 (公園計画・緑地計画)の提案・実施
●地方から都市部へ流入する貧困層への住宅確保のための計画立案、工事監理の提案 など

知られざるストーリー