活動Q&A集 〜協力隊技術顧問が回答〜

JICA海外協力隊への技術支援を目的に、分野ごとに配置されている技術顧問。派遣中隊員から寄せられた活動に関する相談と、それに対する技術顧問による回答の例をご紹介します。

Question 1:PCの修理部品の購入について
〜アフリカでIT教育に取り組む隊員より〜

 配属先に故障しているPCがあるのですが、修理部品を自費で購入すべきか、配属先の自助努力を促すために買わずにいるべきか、迷っています。故障しているPCが直れば活動の幅が大きく広がり、生徒がよりPCを使いこなせるようになると思います。しかしその一方で、配属先には「隊員に備品を寄贈してもらうのは当然」という精神が少なからずあるように見え、それを助長することを危惧しています。

Answer 1:

 確かにそのとおりですね。セオリーとしては、配属先に備品購入をお願いするべきですが、やはり資金面で困難を抱えている配属先では対応が難しく、自助努力ではどうしようもないケースも少なくないと思います。
 私は、隊員個人で賄える範囲で、それほど大きな金額でなければ、自分で購入してしまうのもありだと考えます。備品を買って配属先に与えるだけでは、単なる「寄贈」に終わってしまいますが、買った備品の活用までフォローするならば、「寄贈」ではなく「投資」になるという考え方もできますね。
 投資に対するリターンは、生徒がPCを使えるようになり、将来、安定した収入が得られるようになること。そして、その収入により、生徒の子供によりよい教育を与えるチャンスが増えることも期待できます。備品そのものは5年もすれば使えなくなりますが、将来のことも考えると、比較的大きなリターンが期待できます。
 また、隊員本人が投資のリターンを得るためにも、いろいろと策を考えることになります。
 購入した備品をどう活用するか?
 紛失や故障がないように配属先でどう管理してもらうか?
 それらを行動に移していけば、活動の幅も広がります。また、隊員の活動が進むにつれて、周囲の方に隊員活動への理解が進み、更なる支援が得られることもあります。
 過去には、最後まで配属先の自助努力にこだわった隊員もいました。その最終報告書では、「あの時、自分のお金で備品を買っておけば、もっといろいろな活動ができた。活動期間が2年間と限られているなか、無駄に過ごす時間を少なくすることもできた……」と後悔されています。
 もちろん、「備品を自費で購入する/しない」という問題の正解はないのですが、多くの隊員の経験からアドバイスすると、自費での購入もありと考えます。
 ただ、「投資」には失敗するリスクもあるので、そこは、失敗しても痛くない程度の出費に抑えておきましょう。

【回答者】





桜井人広さん
●JICA海外協力隊技術顧問(担当分野:情報通信技術〈コンピュータ技術〉)
●株式会社TOKYO 代表取締役



Question 2:ITを活用した教材づくりについて
〜中等学校でIT教育に取り組む隊員より〜

 中・高校生に対するIT教育の補助教材の作成を始めました。赴任したばかりでまだまだ語学レベルが低く、教材づくりに時間がかかるので苦労しています。
 ITを活用して効率よく教材をつくれればと思うのですが、良い方法があれば教えてください。

Answer 2:

 インターネットが利用できる環境にあることが前提になりますが(これが問題となるケースも多いと思いますが)、日本語で説明されたHPをGoogle Chrome(以下、Chrome)の機能を使って任国の言語に翻訳するという方法が、補助教材をつくるうえで役立つかと思います。
(1)素材の収集
 補助教材の素材となりそうな日本語で説明されたHPを、インターネットで検索して見つけ出します。このとき、ウェブブラウザはChromeを使ってください。
(2)翻訳
 見つかったHPが補助教材の素材となることを確認したら、以下の手順で翻訳します。英語だけでなく、多言語(フランス語やアラビア語など)に翻訳可能です。多少誤訳も見られますが、十分に利用可能です。
●Chromeの右上にある「設定ボタン」を押下し、さらにプルダウンされたリストから「設定」を選択します。
●左に表示された設定メニューの一番下にある「詳細設定」を選択し、下位メニューを展開します。
●「言語」の設定項目のうち、「母国語以外のページで翻訳ツールを表示する」を「ON」にすれば、翻訳機能が有効になります。
●「言語」の設定項目のうち、翻訳したい言語(「英語」など)を選んで右端の「設定ボタン」を押し、「この言語のページで翻訳ツールを表示する」を「ON」にします。ここまでが事前設定です。
●翻訳対象HPを開き、URL入力エリアの右端にある「『このページを翻訳』ボタン」を押すと、数秒でHPが翻訳されます。
(3)PDF化と編集
 翻訳されたHPを開いた状態で「印刷」のダイアログボックスを出し、「送信先」に「PDFに保存」を選択して「保存」ボタンを押下すると、翻訳されたPDFファイルが手に入ります。
 さらに編集を加えたい場合は、PDFの文字をカット&コピーでWord等のファイルに貼りつけ、そのファイル上で編集します。
(4)活用事例 
 たとえば、日本語によるIT学習のeラーニング教材も、現地語に自動翻訳して活用することができます。英語に自動翻訳し、留学中のフィリピン人に提供した際には、十分に効果を上げることができました。

【回答者】





四元一弘さん
●JICA海外協力隊技術顧問(担当分野:情報通信技術〈PCインストラクター〉)
●株式会社ゼネット 代表取締役社長(ITコンサルタント)

ボランティア成果品 Pick Up 〜IT分野〜






『Lecture Plan』ほか

【作者】タンザニアのPCインストラクター隊員
【内容】専門教育機関におけるIT授業の教員向け資料。WordやExcelの使い方を教える授業の「カリキュラム案」と「プレゼンテーション資料」からなる。
【形態】Excelファイル(カリキュラム案)とPowerPointファイル(プレゼンテーション資料)・英語






『COMPUTER HARDWARE』

【作者】ガーナのPCインストラクター隊員
【内容】職業訓練校におけるIT授業の生徒に向けた、PCのハードウェアに関する動画教材。PCのハードウェアの基本知識や修理方法について解説する。
【形態】MP4・英語
【構成】「PCとは」「PCの操作方法」「PCの修理方法」など

[IT分野の他の登録例]

●『Computer studies』
中高校におけるIT授業のプレゼンテーション資料(PowerPointファイル・英語/作=ケニアのPCインストラクター隊員)

●『INTRODUCTION TO PC 』
職業訓練校におけるIT授業のプレゼンテーション資料(PDFファイル・英語/作=ナミビアのPCインストラクター隊員)

●小テスト集と練習問題集
中高校におけるIT授業の小テスト集と練習問題集(WordファイルとExcelファイル・英語/作=ナミビアのPCインストラクター隊員)

●練習問題集
小学校におけるIT授業の練習問題集(PDFファイル・スワヒリ語/作=タンザニアのPCインストラクター隊員)

●Wordによるポスター作成のマニュアル
Wordでポスターのデザインを作成する方法のマニュアル(Wordファイル・英語/作=ソロモンのPCインストラクター隊員)

知られざるストーリー