派遣中:1人
累計:14人
分類:人的資源
活動例:出版物や広報物制作技術の向上のための指導 など
※人数は、2019年9月30日現在。
推定350人。ウルグアイの日系社会は南米最小と言われています。2008年に移住百周年を祝いましたが移住史発刊はかなわず、16年に日本人会がプロジェクトを始動。私は3代目ボランティアとして着任しました。
戦前、多くの日本人が国策移民として南米に渡りましたが、日ウ間には協約がなく集団移住もありませんでした。南米で夢破れ「ウルグアイがいいらしい」と個人で転住した方々が新天地で日系社会を築いたのです。だからなのか、その組織力は他国ほど強くなく、貴重な史料も散逸寸前でした。
当時、本の編集方針は二転三転していました。関係者はあれこれ提案してくるのですが、自分は動かず他人任せ。計画開始から1年半を過ぎても、印刷可能な完成素材はゼロ。協力者は減り続け、移住史編集委員会に残っていたのは4人の有志のみでした。
でもやるしかない。記者20年、編集者5年の経験を元に、何とか形にできそうな案を編集会議で示してみました。
「現代史を主軸にして、一人一人の人物を深く描きたい。写真をたくさん盛り込み、読んで楽しい本ってどう?」
委員全員が目を輝かせ、次々にアイデアを出してきました。ここで新たな悩みが。全部は実現できないよ……。
理想を現実に落とし込む。編集から出版までの工程とそれぞれの分量感を示し、提案者に覚悟を迫りました。
「ではあなたが担当よろしくお願いします。できなければこの案はなし」
「え、馬場さんがやるのでは?」
「私は今、1人あたり1000字のインタビュー原稿を53人分、執筆中です」
お国柄によるかもしれませんが「できない」と否定形で切るより、肯定形で話しつつ断る方が理解を得やすい気がしました。次から次へと困難に見舞われましたが、バーベキューで肉を食らい、語って笑って乗り越えました。
「移住史はかくあるべき」という先入観を捨てたのが奏功しました。誰に向かって本を出すのか議論を尽くし、移住者インタビューを第1章に据え、写真を生かすべく全ページをカラーで印刷。「斬新でわかりやすい構成」「血が通っている本」と好評を得ました。
記者や編集者は仕事を抱え込みがちです。でも限られた時間で成果を出すには、地元の方々を信じて任せることが近道。日系2世の編集委員2人は卓越した語学力でスペイン語訳を校正してくれたり、幅広い人脈と交渉力で窮地を救ってくれたりしました。
為せば成る。何とかなりますよ。
【PROFILE】
1966年生まれ。東京都出身。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、朝日新聞社に入社。静岡県浜松市や群馬県大泉町など南米系日系人の集住地域から多くの記事を発信。2017年、社の 「自己充実休職制度」を取得し、シニア海外ボランティアとしてウルグアイに赴任。19年に帰国、読者の投稿を扱うオピニオン編集部 「声」に復職。
【活動概要】
在ウルグアイ日本人会に配属され、当地の日系社会初となる移住史を制作し発刊する。
●編集方針の起案と進行管理
●取材、執筆、校正、写真撮影、編集統括
●ページデザインと制作業務全般
●予算案の策定、印刷会社との折衝 など