[特集]Tokyo 2020から見える協力隊の可能性
〜ホストタウン事業の推進〜

日本の自治体と東京2020の参加国・地域の住民などが、スポーツ・文化・経済などを通じて交流し、地域の活性・共生社会の実現に取り組むホストタウン。派遣国のホストタウンを日本の自治体で支える協力隊OB・OGたちを紹介します。

パラオのホストタウン 茨城県常陸大宮市

本多美月さん(パラオ・陸上競技・2017年度1次隊)

●茨城県常陸大宮市 政策審議室 企画政策課 東京オリパラ推進室







ほんだ・みづき ●1993年生まれ、愛知県出身。大学を卒業後、教員を経て、2017年7月に協力隊に参加。パラオの陸上競技協会で陸上競技の普及や、ナショナルチームの指導に携わる。2019年7月に帰国し、9月より現職。
(写真は、本多さん(右)と、指導したパラオの陸上選手)


2019年いきいき茨城ゆめ国体の会場で常陸大宮市のホストタウンとしてパラオの紹介をする、パラオ人研修生と本多さん(左端)

東京2020の先も交流が続く事業を展開

 パラオで、陸上競技のナショナルチームのコーチとして活動した本多美月さん。派遣中の事前キャンプでパラオのホストタウンである茨城県常陸大宮市(ひたちおおみやし)を訪れたことが契機となり、協力隊の任期満了後の9月、同市の職員となった。現在は、パラオと同市をつなぐために、事前キャンプの受け入れ準備や、学校との交流活動に携わっている。
「次の事前キャンプの受け入れは、来年5月の予定。日本滞在中のプランはパラオのオリンピック委員会と連絡を取り合って、日本側で進めていきます。練習施設や宿泊施設の決定に加え、日本の陸上連盟などへの協力依頼をしています」
 パラオの関係者と面識があるのは大きな利点だが、業務はパラオ人のペースで進む。確認のため何度も電話をし、突然の計画変更にも対応できるのは「パラオにいたから」と感じている。
 東京2020後もパラオと同市の交流が続くようにするため、来年の2月にはパラオに派遣中の小学校教育隊員と協力し、両国の小学生がテレビ電話で交流する予定で、3月末には同市内で「パラオフェア」も開催。さらに、パラオに向け常陸大宮市を紹介するSNSの準備もしている。
「パラオではFacebookが大流行しているので、特設ページをつくる予定です。パラオ事情に詳しい私がこの市のために何ができるのかを考え、役立てるよう仕事をしていきたいと思います」

※常陸大宮市の東京2020情報は同市のウェブサイトをご覧ください。

ベリーズのホストタウン 千葉県横芝光町

村田浩子さん(ベリーズ・青少年活動・2006年度3次隊)

●千葉県横芝光町 企画空港課 企画政策班







むらた・ひろこ●千葉県出身。短大を卒業後、民間企業に就職。2007年、協力隊に参加。ベリーズで青少年育成を目的とした起業家支援を行う。09年に帰国後、尾鷲商工会議所、尾鷲物産株式会社を経て、19年3月より現職。


横芝駅前情報交流館「ヨリドコロ」で演奏をするベリーズのパンテンプターズ・スチール・オーケストラ。右端が北村さん

お世話なった派遣国の人たちを、今もてなしたい

「ベリーズのためにできることがあるのなら」と転職し、ベリーズのホストタウン、千葉県横芝光町(よこしばひかりまち)の職員となった村田浩子さん。ベリーズの理解促進事業の実施・運営などを担当しており、2019年11月にはベリーズからオーケストラを招いて、同町で演奏会と小中学校での交流会を実施した。
「オーケストラに元隊員の北村紘子(きたむらひろこ)さん(ベリーズ・音楽・2006年度1次隊)がいたことで、日本の子どもたちに人気のNHKオリンピック・パラリンピック応援ソング『パプリカ』をアレンジした楽曲を演奏してもらうことができました」
「パプリカ」が流れると子どもたちが踊り出し、演奏会は大盛り上がり。演奏会後にはオーケストラメンバーと共にベリーズ選手団を応援するボランティアを募集しながら町民と交流。実質3日間の滞在だったが「ベリーズ人の明るい人柄に惹きつけられた」と町民から伝えられた。今後は事前キャンプの調整やアートによる交流事業を実施予定だ。
 ホストタウン業務に携わって感じるのは、ホストタウンになったものの、相手国と交流の方法を考えあぐねている自治体が多いことだ。特に知名度の低い国は、関係者を見つけることが難しい。
「そんなときこそ隊員OB・OGの出番です。ぜひ積極的にホストタウンと連携してほしいと思います。ホストタウンの情報を提供するSNS(※)を立ち上げたのでご参加ください」

※青年海外協力隊とホストタウンをつなぐFacebook「世界の応援団」

コスタリカのホストタウン 長野県松川町

白井瑞穂さん(コスタリカ・日本語教育・2014年度3次隊)

●長野県松川町教育委員会生涯学習課 地域おこし協力隊員(東京2020オリ・パラ ホストタウン推進員)







しらい・みずほ ●1991年生まれ、徳島県出身。2014年、福島大学人間発達文化学類を卒業後、15年1月に協力隊に参加。国立大学にて日本語コースを担当するほか、日本祭りや弁論大会、日本語能力検定、セミナーの実施等に携わる。任期を7カ月延長し、17年8月帰国。同年11月より現職。
(写真は、白井さん(右)が企画したコスタリカ祭り)


2019世界柔道選手権に出場するコスタリカ選手4人へ町民からの応援旗を届けた

日本の地域と世界がつながる絶好の機会

 東京2020大会に向け、長野県松川町(まつかわまち)において、コスタリカとのホストタウン業務を担当する白井瑞穂さん。町民への周知・理解促進のための出前講座や広報、コスタリカとの交流イベントの企画・運営などを行っている。今後は、コスタリカに「ホストタウン松川町」をアピールし、互いに異文化交流や学びの機会とすることを目指している。
 大会開催中は、出場を終えたコスタリカ選手を迎え、町民との交流の場を設ける予定で、そのための企画・調整・運営業務を行う。また、町民応援団を結成し、大会会場での応援も検討中だ。
 現在の仕事は同町では前例がなく、自分で考え行動することが多いが、協力隊で培った「とりあえずやってみる精神」が生かされているそうだ。また、コスタリカの現役隊員やOB・OG隊員、現地でお世話なった方々の協力も得て活動しており、このネットワークの広さは協力隊ならではだと感じている。一般の人をはじめ協力隊OB・OGにもホストタウンを通じて東京2020参加国との新たな関係性や可能性を感じてほしいと白井さんはいう。
「ホストタウンは、日本の地域と世界がつながる絶好の機会。海外選手にとって、異国の地(日本)で応援してくれる人がいることは心強いこと。身近にホストタウンがあれば、イベントに参加していただき、一緒に盛り上げてくれるとうれしいです」

※松川町のホストタウン事業の詳細は同町のウェブサイトをご覧ください。

知られざるストーリー