Award Winners in 2019
〜第15回JICA理事長表彰〜

国際協力事業を通じて途上国の人材育成や社会発展に多大な貢献をした個人・団体を顕彰するJICA理事長賞を受賞したJICA海外協力隊OB・OGをご紹介します。

個人受賞

金森秀行さん(マラウイ・農業土木・1978年度1次隊)

●元JICA国際協力専門員







かなもり・ひでゆき●1949年生まれ、兵庫県出身。大学卒業後、鹿児島県職員を経て協力隊に参加。灌漑開発計画のための地形測量や水源地調査、関連施設の施工管理に取り組む。米アイオワ州立大学大学院修士課程を修了後、84年からJICA国際協力専門員として灌漑分野を中心とする農業開発に従事。2015年に退職。
(写真は、フィリピンにおけるJICAのプロジェクト方式技術協力「畑地灌漑技術開発計画(フェーズI)」の専門家として、現地で技術指導にあたる金森さん(中央、1989年撮影))


 金森さんは、JICA国際協力専門員として30年以上にわたり、灌漑分野を中心とする農業開発の技術移転に多大な貢献をしてきたとして今回の受賞に至った。JICA国際協力専門員として実際に携わったのは、フィリピン・ルーマニア・タンザニアにおける技術協力専門家(以下、専門家)としての仕事、タイのアジア地域支援事務所における広域企画調査員としての仕事、アジアやアフリカを中心に計34カ国での技術協力に関する調査・支援活動、専門家の育成など。また、農業開発の技術協力に関して、持続性の高い技術の選択と効率的な移転を目的に集めた情報と知見を整理してJICAのアーカイブに残し、現在も若手職員などのナレッジ強化に貢献している。

受賞の言葉

 専門家としての経験を他の専門家にフィードバックするという国際協力専門員の仕事の効果は、支援した専門家たちが行う事業が評価される際に顕在化しません。今回の受賞は、それを認めていただいたと感謝しています。国際協力専門員としての仕事の基礎は、協力隊時代に築かれました。前職時と合わせて、灌漑開発事業の調査・計画から測量・設計・積算・施工に至るすべてを経験し、どの段階についても専門家として働ける技術を得ることができた一方、「現地のレベルに適した技術を選択する」という、途上国における「技術移転」の要を知ることができたからです。

個人受賞

藤掛洋子さん(パラグアイ・家政・1992年度2次隊)

●横浜国立大学 学長特任補佐兼教授







ふじかけ・ようこ●民間企業勤務を経て協力隊に参加。任期終了後、JICA専門家としてパラグアイ、チュニジア、ペルー他で勤務。お茶の水女子大学で博士号(学術)を取得後、東京家政学院大学/大学院准教授を経て、現職。青年海外協力隊技術顧問(「家政・生活改善」等担当)、NPO法人ミタイ・ミタクニャイ子ども基金代表理事。
(写真は、マーケティング講習会で発表する農村女性たちと藤掛さん(中央))


 個人受賞した藤掛洋子さんは、協力隊に参加した後、JICA短期技術協力専門家としてパラグアイ、チェニジア、ペルー、ホンジュラス他で国際協力事業に従事。現在は横浜国立大学学長特任補佐ならびに大学院教授の職にあり、同大が協力機関となっているJICA草の根技術協力事業(新・草の根パートナー型)「パラグアイ農村女性の生活改善プロジェクト:横浜からともに夢を紡ぐ」ではプロジェクト・マネージャーも務めている。
 以上のほか、藤掛さんはNPO法人ミタイ・ミタクニャイ子ども基金の代表理事としてパラグアイにおける4つの学校の建設・支援やスラムにおける生活改善支援などを行い、国際協力活動は27年目を向かえた。現在は若者たちの育成にも力を入れている。

受賞の言葉

 協力隊員としてパラグアイの農村部で女性や子どもたちのために働かせていただき、農村女性たちが力をつけていく姿から私自身も多くの力と学びを得ました。大学で教鞭をとることができているのも、NGOで活動ができているのも、協力隊員として農村女性たちとともに失敗と成功の経験を積み重ねてきたからです。2016年よりJICA草の根技術協力事業にプロジェクト・マネージャーとして関わらせて頂き、パラグアイの農村女性たちと新たな夢を紡いでいます。残る期間は、加工食品のマーケティングとブランディングを行い、シングルマザーを含む農村女性たちの所得創出支援やエンパワーメントのために力を注ぎます。

団体受賞

NPO法人自然塾寺子屋

[理事長]矢島亮一さん(パナマ・村落開発普及員・1998年度3次隊)







しぜんじゅくてらこや●
設立:2001年
所在地:群馬県甘楽郡甘楽町小幡7(甘楽事務所)
事業内容:
農産物の生産・加工・販売
グリーンツーリズム・アグリツーリズム
農村フィールドワーカーの養成、ほか
(写真は、2019年2月、自然塾寺子屋で研修を受講したパラグアイの日系人(右)の農場をフォローアップのために訪問した矢島さん)


 団体受賞を果たしたNPO法人自然塾寺子屋は、協力隊経験者の矢島亮一さんが帰国後、群馬県甘楽郡甘楽町で立ち上げた団体。農産物の生産・加工・販売、農業体験や自然体験のプログラム、コミュニティカフェ「信州屋」の運営など、「国内」の地域活性化に向けた事業を行う一方、協力隊の技術補完研修の受け入れや、JICA研修員受入事業における研修の受け入れなど「海外」の地域活性化に向けた事業にも取り組んできた。同団体のキャッチフレーズは、「農村から世界の未来を育てる」。
 理事長の矢島さんや事務局長の森栄梨子(もりえりこ)さん(ホンジュラス・村落開発普及員・2010年度4次隊)を含め、メンバーは協力隊経験者が中心だ。

受賞の言葉

 自然塾寺子屋の仕事は、協力隊の活動からすべてが始まっています。派遣前、私は農家に生まれたことに引け目のようなものを感じていましたが、協力隊員として暮らしたパナマでは、農業に誇りを持っている現地の方々と出会うことができました。そうして私も日本の農村や農家に誇りを感じることができるようになり、その価値を発信したいとの一心で取り組んできたのが、自然塾寺子屋の活動です。日本で多文化共生社会づくりが重要になるなか、今後は外国の方々に好きになってもらえるような地域づくりの活動に、さらに力を入れていきたいと考えています。(矢島さん)

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