希少職種図鑑 [金属加工]

職種概要

派遣中:2人
累計:113人
分類:鉱工業
活動例:専門学校などで学生への金属加工の基礎技術の指導 など
類似職種:溶接、精密機器 など

※人数は、2019年11月30日現在。

話=平野 正さん(シニア海外ボランティア/インドネシア・2015年度2次隊)

Q メインの活動は?

10トン大物ルツボを製造中の現地技術者と平野さん(中央)。インドネシアはスズの生産量が世界有数。大物ルツボ鋳造品は、半球状の形をしており、採掘したスズを溶かして大きな鍋に入れるときに使用する

 インドネシア国営BARATA重工業で現地の技術者と共に、国内初となる大物鋳造品の製造に携わりました。製造過程で幾度も失敗を重ね、数百万円の不良品の山を築いてしまいましが、宗教、文化、言語、習慣の違いを越え、現地の同僚と苦悩し汗を流すことで、日本の「モノづくり」の心を伝えることができたと自負しています。

Q 活動の最大の困難は?

 SVとして6度派遣され、マレー語圏、スペイン語圏で活動しましたが、どこの国でも活動中、最大の困難はやはり、コミュニケーションツールの言語だと思いました。こちらの意思を技術移転先に伝えたくても言語が壁となり、うまく相手に伝わらず辛い思いをしたことが幾度となくありました。また、技術移転の際に現地の機材不足にも困っていました。

Q どう対応しましたか?

 言語については、技術的なことを伝えるときに、イラストを多用したり、縮尺模型を使ったりして意思疎通を行いました。活動中は必ず、巡回指導後、その国の言語でレポートを作成し、カンターパート(以下、CP)及び巡回先鋳造工場やJICA現地事務所に提出し、活動内容を周りに伝えていました。レポート作成時には多忙であってもCPに添削を依頼し、コミュニケーションをする機会を増やすことができました。活動終了時に溜まった100部近い現地語レポートは最終報告書として製本して活動先やJICA現地事務所に提出し、派遣先から貴重な財産になったと喜ばれました。
 機材不足については、日本での勤務先鋳造工場からの支援が解決策のひとつでした。同僚CPの本邦技術研修先受け入れや、鋳造機材の無償提供、不良品対策の技術指導などが私の活動の大きな一助となりました。現地の日系企業からの鋳造機材試供品の無償支援なども、限られた現地業務費の中で活動の助けになりました。

Q 派遣予定の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 活動に際し、どこの派遣国でも感じたのですが、今はインターネットの世の中であり、派遣国の技術者たちも平均的な技術を習得しています。協力隊員も、それなりの技術力と人間性を備えていないと、受け入れてもらえませんし、こちらの技術移転提案や改善提案を受け付けてもらえません。上から目線ではなく、相手をリスペクトする気持ちを忘れず、お互いを認め合って活動を進めてください。そしてぜひ日本の「モノづくり」の心を開発途上国の技術者に伝えてほしいと思います。

平野さん基礎情報





【PROFILE】
1949年生まれ、新潟県出身。67年に新潟県県立直江津工業高等学校・機械科を卒業後、地元の鋳造工場・大平洋特殊鋳造株式会社鋳造課に入社。31年間勤務後、50歳を機に長年の夢だったJICA海外協力隊に初参加。マレーシア、メキシコ、アルゼンチン、ボリビア (2度)、インドネシアと6度、金属加工(※)のSVとして派遣された。現在は、地元の精神病患者の社会復帰厚生施設で支援員として活動している。

※金属加工のほか、金型鋳造、鉄鋼・非鉄金属、鋳造・冶金の職種名で派遣された。

【活動概要】
国営BARATA重工業にて主に以下の活動を行う。
●5S・不良品対策などの指導
●従来、輸入品に頼っていた 「10トン大物ルツボ鋳造品」の国内製造に携わる

知られざるストーリー