希少職種図鑑 [歯科衛生士]

職種概要

派遣中:1人
累計:47人
分類:保健・医療
活動例:歯科衛生士や治療助手に対して技術向上のための指導 など
類似職種:歯科医師 など

※人数は、2019年11月30日現在。

話=小原晴子さん(パラオ・2015年度3次隊)

Q メインの活動は?

歯科衛生士に歯茎の下にある歯石の取り方を伝える小原さん。パラオには歯科衛生士学校がないため、就職後に働きながら学んで、歯科衛生士になる。「それが理由で、歯科衛生士たちに意識や知識の差があったのかもしれません」と小原さんは振り返る

 40〜50代の男女10人の歯科衛生士(以下、衛生士)がおり、経験年数は10〜20年と長期の一方、歯科医療に対する知識や意識にはそれぞれ大きな差がありました。実際の診察では患者のデンタルIQ(*1)の低さも実感したので、スタッフ教育に加え、私の帰国後に患者が口腔ケアに関する知識を継続して深めてもらえる活動を目指しました。
 スタッフ指導はミニテストから始め、講義の実施、知識のレベルの確認、知識の統一化を目標に実践しました。歯科医師たちにも衛生士の改善点を確認し、2年目は臨床実習を含めて指導行いました。また、効率良くより多くの患者に知識を増やす方法として、待合室にモニターを設置。そのモニターで流すための口腔ケアに関する内容や歯と健康の関係など10種類をこえる種類のスライドを作成しました。スタッフと協力してつくった患者指導用ビデオをそこで流すことができたのは、活動の中で一番うれしかったことです。

Q 活動の最大の困難は?

 勤続年数が長く、問題を問題と感じていないやり方で診療してきたために、その意識改革やモチベーションを上げることに苦労しました。また、パラオの文化として日本のような年功序列の慣習があり、プライドも高いため、「teach」という言葉を出すと受け入れてもらえないことがありました。

Q 試みた解決策は?

 衛生士の約半分は向上心があり協力的だったので、その人たちを中心に話を進めて周りを巻き込んでいきました。「講義を受けたくない」とはっきり言われたこともありましたが、希望の日程に合わせることや、興味がある講義の内容にし、講義をする日時などは事前に伝えるようにしました。また、「teach」ではなく「share my experience(経験を共有する)」という方が受け入れられました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 この職種には目で見えないところで衛生士の技術を判断する「歯肉縁下スケーリング」(*2)などがあります。歯科医師から「衛生士が歯茎の下の歯石を取り切れているか確認してほしい」と伝えられましたが、衛生士たちには「自分たちはできているから」と拒まれました。私は衛生士が拒むことまではやりませんでしたが、信頼関係を崩さないための見極めは大切だと思います。良い関係を築けていれば受け入れてもらえますし、多少のすれ違いによる失敗は修復しやすいとも思います。その国や地域で求められていることや改善点を見つけて小さいことでも挑戦してみてください。応援しています。

*1 デンタルIQ…歯科に関する知識。
*2 歯肉縁下スケーリング…歯茎の下 (歯周ポケットの中)の歯石取り

小原さん基礎情報





【PROFILE】
1980年生まれ、岩手県出身。2001年、旧岩手県立衛生学院・歯科衛生学科を卒業後、開業医の歯科医院に勤務。その7年後に退職し、ワーキングホリデーで2カ国に合わせて2年滞在。その後、地元の開業医に勤めたのち退職し、15年1月に協力隊としてパラオの国立病院に派遣される。18年4月に帰国。現在は、再び開業医の歯科に勤務。

【活動概要】
パラオ唯一の総合病院であるベラウ国立病院の歯科で、現地スタッフや地域住民を対象に主に以下の活動を行う。
●現地歯科衛生士への知識・技術面の指導
●コミュニティでのイベントに参加し、患者を含めた地域の方に啓発活動
●院内のソフト・ハード面での改善点の提案・実行

知られざるストーリー