希少職種図鑑 [上水道]

職種概要

派遣中:3人
累計:39人
分類:公共・公益事業
活動例:市役所で安全な水へのアクセス向上を目指した技術支援 など
類似職種:土木、水質検査

※人数は、2020年3月31日現在。

話=南 智大さん(ネパール・2017年度3次隊)

Q メインの活動は?

現地の人のために作成した漏水調査機材を用いて、実際に発生した漏水現場で調査方法などを教える南さん

 主な活動地域では、取水量の減少、人口増加、停電などのさまざまな原因から、配水量不足という問題を抱えていました。そこで活動先の組織に対し、上水道施設の更新・維持管理に関する業務支援を主に行いました。まず上水道配管図の作成を行うにあたり、活動先の配管工と既設の上水道管路調査をし、その際に施工不良が原因と思われる漏水を確認しました。既存の地上漏水修理は、漏水調査を行わず、人力で掘削を行いながら、漏水箇所を探すため、多くの時間と労力を要します。そこで、現地の水道事業体でも購入できる価格の漏水調査機材を現地の鍛冶屋にて作成し、それを用いた漏水調査に関する研修と、施工不良による漏水を減らすため、活動地域の配管工を対象に管路の接続・漏水調査に関する講習を実施。漏水調査機材は、ネパール国内の事業体へ広めるため、まずは漏水調査の実績が必要であることから複数の事業体へ貸し出し、漏水調査に使用してもらっています。その後の活動は後輩隊員へ引き継ぎました。

Q 活動の最大の困難は?

 活動先の役員は上水道配管図の作成を快諾した一方、従業員たちは否定的な反応でした。図面作成に伴う作業の説明時も「私たちはそんなこと習ったことがない、スキルもない。あなたは習っているんだから、あなたがひとりですればいい」と何度も言われました。私は彼らに「私も習っていないよ。まずはやってみよう」と伝え、ときには言い合いになることもありましたが、私は彼らが行うことに意味があると考えていたため、自分のみで行うという選択肢はありませんでした。

Q どう乗り越えましたか?

 自分の考えを伝え続け、極力彼らの仕事に同行してコミュニケーションをとるうちに、私の活動に対する彼らの態度が変わってきたように感じました。時の経過とともに言語も上達したことで、言いたいことが伝わるようになったのかもしれません。提案から5カ月後(赴任11カ月後)には図面作成に向けて活動が動きだしました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 上水道の隊員の活動例がなかったために、どのような活動を行えるのかと悩んだこともありました。皆さんにはこれまでの上水道に関する自分の経験を生かして活動をしてほしいと思います。また、隊員は予算を持たないため、活動の際に難しい側面もあるかと思います。予算を持たずともできる活動はあると思うので、工夫をしながら、限られた期間の中で自分らしい活動を行ってほしいと思います。

南さん基礎情報





【PROFILE】
1984年生まれ、鹿児島県出身。鹿児島工業高等専門学校土木工学科(現:都市環境システム工学科)を卒業後、5年間民間企業で働く。2010年、鹿児島市役所へ入庁し、水道局にて上水道管路施設の維持管理業務に6年間従事。18年1月、青年海外協力隊に現職参加し、ネパールへ赴任。20年1月に帰国。現在は、鹿児島市役所に復職し、土木工事の発注業務などに従事している。

【活動概要】
郡の上水道施設の建設を行う事務所に配属され、新設後に施設の移管を受け、更新・維持管理業務を行う組織へ、以下の活動を行う。
●NRW(無収水 *)の削減
●漏水調査機材の製作及びその機材を用いた研修、施工品質向上の為の研修の実施など
●GISソフトを用いた上水道施設配管図の作成

* 無収水…配水管からの漏水や違法な使用による盗水などにより料金が徴収できない水。

知られざるストーリー