希少職種図鑑 [畜産・乳製品加工]

職種概要

派遣中:0人
累計:17人
分類:農林水産
活動例:乳製品の加工技術・品質の向上、衛生管理、新商品の開発 など
類似職種:食品加工、農産物加工、家畜飼育

※人数は、2020年5月31日現在。

話=中西友香さん(ブータン・2016年度1次隊)

Q メインの活動は?

農家を対象にした乳製品製造の講習会の参加者(前列左が中西さん)。中西さんは、ヨーグルト以外に、暑い地域ではアイスクリーム、寒い地域では保存が可能な熟成チーズなど、地域によって適した乳製品を紹介して回った

 赴任時は、ちょうどブータンでヨーグルトが流行し始めた頃でした。首都でヨーグルトを買うことは可能でしたが、その他の地域ではまだメジャーな食べ物ではなかったので、国内のさまざまな地方に行ってヨーグルトの普及をすることが主な活動になりました。農家では1〜2頭の乳牛を飼育し、自分の家で消費しきれない分を多数の農家で集めて販売する仕組みができています。比較的簡単につくれ、健康にも良いとされるヨーグルトは、ブータン人に意欲的に受け入れてもらえました。村のみんなで協力して製造し、消費する姿が印象的でした。ただ、農家は乳牛の飼育や衛生管理に関する意識が低く、一方で農家には昔からやってきた方法があります。派遣期間だけでそういった意識を変えるのは難しいと感じていました。

Q 活動の最大の困難は?

 宗教的に殺生を嫌うので、雄牛や老牛、病弱な牛も屠殺はせずに野に放ったり、継続して飼育したりします。同国では毎年口蹄疫という牛の伝染病が10件以上発見されていますが、屠殺が行えないのでその被害をなくすことは困難でした。日本での常識と全く違っても、国柄を否定することはできないため、被害をただ見ていることしかできないのが不甲斐なかったです。

Q どう乗り越えましたか?

 同僚には留学経験や畜産系の資格を持つ方が多数いたので、他国と自国の違いを体験している方とコミュニケーションをとり、ブータンらしさを守りつつ改善する道はないか議論したことがとても有意義でした。議論により改善できたわけではありませんが、私自身の意識も変わり、日本で取り入れたいと思うブータンの手法も多数ありました。お互いの国の良さを認め合うことで乗り越えました。

Q 派遣予定の同職種の隊員にメッセージをお願いします。

 何かを相談したいとき、同職種の同期はおらず、先輩隊員にも辿りつけませんでしたが、「家畜飼育」や「農産物加工」の方に相談ができました。ブータンの乳牛は日本では見たことのない品種で、乳質も全く違うので、私の知る方法でチーズをつくってもうまくいかず、農家向けのトレーニング中に指導者なのに失敗したこともありました。戸惑うこともありますが、それを面白がり探求すると、自分の身になり、派遣国の人にも喜ばれると思います。
 開発途上国では日本のように乳等省令(*)が定まっていない国も多いかと思います。消費者の健康を守り衛生を管理するためにも、長期戦と思って根気よく少しずつでもできる改善に取り組んでいくのが大切だと思います。

* 乳等省令…乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の略称。食品衛生法に基づいて厚生労働省が発する命令のひとつ。

中西さん基礎情報





【PROFILE】
1988年生まれ、岐阜県出身。2011年、多摩美術大学情報デザイン学科を卒業後、東日本大震災をきっかけに食の重要さを実感し、北海道や長野の牧場で勤務。主にナチュラルチーズなどの乳製品製造を担当する。16年に退職後、青年海外協力隊員としてブータンに赴任。18年7月に帰国。現在、千葉県のサスティナブルファーム&パーク 「KURKKU FIELDS」に就職し、酪農と乳製品製造業に従事。

【活動概要】
ブータン国立乳製品研究所に配属され、生乳業者や農家に向け、乳製品加工技術の普及と向上のため次の活動を行う。
●乳製品の製造トレーニング、新しい加工品の紹介、品質管理の指導、技術力向上の支援
●乳製品の規格化と改良
●乳製品のポスター、パッケージデザインの開発など

知られざるストーリー