希少職種図鑑 [再生可能・省エネルギー]

職種概要

派遣中:4人
累計:19人
分類:エネルギー
活動例:再生可能エネルギーや省エネルギーについての技術の紹介 など
類似職種:電力

※人数は、2020年5月31日現在。

話=吉田雪絵さん(セントビンセント・2016年度4次隊)

Q メインの活動は?

太陽光発電設備の実習の様子。再生可能エネルギーには太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどがある。セントビンセントは、人口約11万人、国面積は400平方キロメートル(東京都23区総面積の約3分の2)にも満たない。発電量の一部は水力発電だが、大部分はディーゼル燃料を使用した火力発電で、交通用のガソリンなどすべての石油燃料は輸入で賄われている

 セントビンセントにある短期大学の工学部に配属され、主に電気科の2年生を対象に、太陽光発電設備の基礎教育、実習を行いました。同国は小さな島国で、天然資源もなく、石油による発電に依存しており、電気代は日本の倍近くになります。そのため、再生可能エネルギーの導入拡大に向け、その知見を持った人材の育成が急務でした。確保できる授業時間は各年で最大60時間でしたが、ハリケーンの時期などは、休校になることも多く、実際に授業ができたのは40~50時間。生徒に知ってほしいことや、やりたい内容の半分ほどしかできなかった気がします。それでも、学校や生徒の協力や手助けがあって、なんとか授業をやり通すことができました。



Q 活動の最大の困難は?

 配属当初は、先生のアシスタントとして、授業内容の改善、実習などで使用する機材の作成などを行う予定でしたが、急な担当教員の離任により、私が授業運営をすることになりました。「先生」になるのは初めてで、何から始めていいのかもわからず、とても焦りました。課題作成、実習計画、試験作成、授業運営とやることに追われて、特に1年目は、生徒がちゃんと理解できているのかといったことにあまり時間を割けず、迷走していました。
 それに加え、同国の特徴のある英語に圧倒され、特に生徒たちは話すスピードも速いことから、最初は質問内容がわからないことも多かったです。

Q どう乗り越えましたか?

 生徒と共有する時間を増やすようにしました。日本のアニメに興味のある生徒は多いので、簡単な日本語を教えたり、雑談をしたりする時間を持つようにしました。それにより先生と生徒よりもより「友達」に近い関係性となり、授業中だけでなく空き時間などに質問に来る機会が増え、授業が活性化された気がします。そのおかげで、試験結果や実習レポートを見ても、1年目に比べると2年目の生徒のほうが授業内容の理解度が上がりました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 エネルギー分野は、ほかの職種と比べると、隊員に求められる内容や解決すべき課題の内容が明確なものが多いです。一方で、分野的に事業規模が大きく、国の政策に大きくかかわるものであるため、制約が多いといった難点はあるかと思います。しかし、利用できるスキームが比較的多く、草の根・人間の安全保障無償資金協力や国際機関と共同するなど活動の幅を広げれば広げるほど、より充実した活動を行えると思います。

吉田さん基礎情報





【PROFILE】
1988年生まれ、福島県出身。2010年、明治大学商学部を卒業後、米国に1年間語学留学。日本に帰国後、電気設備設計・施工管理会社に入社後、太陽光発電設備の設計及び申請業務に携わる。17年3月、青年海外協力隊員としてセントビンセントに赴任。19年3月帰国。現在は、在トリニダード・トバゴ日本国大使館にて草の根・人間の安全保障無償資金協力外部委嘱員として、兼轄8カ国を含む計9カ国の草の根無償実施に携わっている。

【活動概要】
セントビンセント及びグレナディーン諸島短期大学において、再生可能エネルギー人材の育成を目指し、以下の活動を行う。
●再生可能エネルギーの知識向上支援
●座学・実技を通じた太陽光発電設備技術の教育促進

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