希少職種図鑑
[シンクロ(現・アーティスティックスイミング)]

職種概要

派遣中:1人
累計:7人
分類:人的資源
活動例:代表選手の育成、コーチへの技術移転 など
類似職種:水泳

※人数は、2020年6月30日現在。

話=石山紗江さん(インドネシア・2017年度4次隊)

Q メインの活動は?

ジャカルタチームの選手・コーチと石山さん(後列中央)。コーチ陣は石山さんより年長だったが、「常に学びの姿勢で敬い、協力してくれました」と石山さんは振り返る。演技の振り付けでは、ただ美しさを求めるのではなく、ジャカルタチームの選手に似合うものを優先した

 メインの活動はジャカルタ選抜チームの指導でした。チームはインドネシア代表選手も多く有する、ジャカルタ特別州全域から選抜された14〜24歳の選手12人で構成されています。現地スタッフはカウンターパートを含むコーチが4人いました。現場の外からは早く結果を出すことを求められ、今までは大会前の数カ月という短い期間で表面的に取り繕うことが多かったようです。基礎的な技術の習得や演技構成に時間をかけなければならないので、長期戦略のための上層部の説得や、選手らとのコミュニケーション、予算の確保などが課せられた大きな課題でした。しかし半年が経つ頃には成果が見え始め、1年と少しが経った頃、チームで設定した1つ目の目標である国内のチーム種目全制覇と目標点数をクリアできました。

Q 活動の最大の困難は?

 最も悩んだのは金銭的な問題でした。インドネシアでは、結果を出すとある程度の予算が下りるのですが、「結果を出すための予算」は下りにくい傾向にあります。メダルが取れずとも、大きな大会に出るチャンスがあれば出て、選手たちに大きな大会に対する免疫を付けてもらい、慣れてもらう必要があります。そのための予算とスポンサーの開拓が難しかったです。

Q どう乗り越えましたか?

 特に画期的な解決策とはいえませんが、説得できる語学力やコミュニケーション能力、自身の意見が通りやすくなる環境や人間関係をつくることが必要でした。信頼を得るために、限られた環境でも結果を出すことや、本気でチームのことを考えていると理解してもらえるよう行動しました。心がけたのは、彼、彼女らのことを尊敬していると言葉にして頻繁に伝えること。また、優先すべきところや見習うべきところを見つけ、評価し、採用しました。そうするうちに信頼関係が築けていったと自負しています。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 派遣国の選手やコーチは人それぞれですが、日本のように指導者の言うことを全員が真面目に聞くことはあまり期待しない方が良いでしょう。しかし、自分の言葉で思いを伝えれば、応えてくれる人はきっといます。
 開発途上国の人は我々よりもスポーツに夢を抱き、アスリートに憧れているように感じます。新型コロナウイルス感染症の影響で、普通の生活、普通の練習にはもう少し時間が必要かもしれませんが、私はスポーツが国を、国民を元気にしてくれると信じています。派遣国の方もきっと皆さんに期待を抱き、皆さんを待っているでしょう。

石山さん基礎情報





【PROFILE】
1994年生まれ、京都府出身。8歳でシンクロを始め、その後、AASFアジアエージ大会で優勝、FINA世界ジュニア選手権で準優勝などの成績を収める。2017年、同志社大学社会学部教育文化学科を卒業。在学中の16年より菓子店を開業、卒業後も継続。その後、青年海外協力隊参加のため閉業し、18年5月、協力隊員としてインドネシアに赴任。19年7月、現地スポーツ省と直接契約に至り、任期短縮し、帰国。その後ジャカルタへ渡り、国家青年スポーツ省ジャカルタ支部にて契約、ジャカルタ選抜強化チームの監督、指導者として強化、普及に携わる。

【活動概要】
ジャカルタチームの選抜、強化、インドネシアにおけるアーティスティックスイミング(AS)の知名度向上のため、以下の活動を行う。
●日本式の選考会の実施
●基礎技術の指導
●大会のための演技構成を作成
●国内大会や海外遠征に帯同 など

知られざるストーリー