希少職種図鑑 [卓球]

職種概要

派遣中:1人
累計:164人
分類:人的資源
活動例:選手の競技力向上や指導者の育成、普及活動など
類似職種:—

※人数は2021年1月末現在。

話=久保田 綾さん(ベリーズ・2017年度1次隊)

Q メインの活動は?

卓球の普及活動の一環として、小学校を回って指導にあたる久保田さん

 18歳以下の子どもが所属する国内唯一の卓球クラブでの指導です。着任当時、配属先のベリーズ卓球協会には常勤の職員が1人しかおらず、彼が唯一のベリーズ人コーチでした。ほかに外部コーチとして2人のキューバ人がおり、私を含めて4人で指導にあたりました。私はベリーズ人コーチの指導技術向上を支援するため、日本の指導法をベリーズに合った形にアレンジして紹介するなどしました。ほかに、卓球を普及させるため、小学校で卓球クラブをつくり、指導する活動も行いました。また、競技の振興には審判員の育成も不可欠であるため、2週間の講習プログラムも立ち上げました。国内大会で審判員として活躍できるようになった受講者もいます。

Q 活動の最大の困難は?

 着任の1年後に、配属先で唯一の常勤職員だったベリーズ人コーチが退職し、指導技術を伝えるベリーズ人を失ってしまったことです。キューバ人コーチたちはベリーズ人のように英語を話すことができなかったため、意思疎通が難しく、クラブの運営は滞りがちになってしまいました。

Q どう対応しましたか?

 ベリーズ人コーチの代わりに、クラブの選手たちを技術伝達の対象と考えることにしました。そうして、競技の技術だけでなく、練習の組み立て方やその環境整備の方法、大会運営の要領なども彼らに伝えるようにしました。大会の開催など卓球協会がやるべきクラブ運営以外の事業は、非常勤の役員たちに主体となってもらえるよう、私は手伝いすぎず、あくまでサポート役に徹するよう心がけました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 途上国では、貧困ゆえに犯罪に手を染めてしまう子どもも少なくありません。スポーツは、そのような子どもたちの居場所をつくり、道を踏み外すのを防ぐことにもつながります。また、途上国のスポーツ選手が国際大会で活躍できるようになれば、自国への刺激にもなります。競技人口が少ないために協力隊員は「目の前の子どもたちに卓球を教えているだけだ」と、自分の活動に限界を感じてしまうことがあるかもしれません。しかし、その子どもたちが将来、卓球の指導者や愛好家となり、国の卓球を支える存在になるのであれば、協力隊員の活動の影響は決して小さくはないはずです。また、同じ国に卓球隊員が何代かにわたって派遣されるのならば、さらにその影響は大きくなるでしょう。ぜひ自分の活動の意義を信じ、全力を注いでいただきたいと思います。

久保田さん基礎情報





【PROFILE】
1988年生まれ、島根県出身。2010年、岡山大学教育学部を卒業後、英語科教員として島根県の公立中学校に勤務。17年6月、青年海外協力隊員としてベリーズに赴任(現職教員特別参加制度)。19年3月に帰国。現在は松江市立義務教育学校八束学園に勤務。

【活動概要】
ベリーズ卓球協会(ベリーズ郡ベリーズシティ)に配属され、卓球に関する主に以下の活動に従事。
●クラブチームでの指導
●小学校での卓球クラブの立ち上げと運営支援
●審判員の育成
●配属先の事業の補助

知られざるストーリー