希少職種図鑑 [気象]

職種概要

派遣中:0人
累計:31人
分類:公共・公益事業
活動例:国や地方の気象データ収集・解析チームで、ソフト作成法の指導や、気象観測法や気象データ解析法の教育・指導を行う。
類似職種:—

※人数は2021年1月末現在。

話=鈴木 潤さん(シニア海外協力隊員/トンガ・2017年度2次隊)

Q メインの活動は?

配属先の職員と鈴木さん(前列中央が鈴木さん)

 配属先のトンガ気象局は、気象の観測や予報などを行う機関ですが、気象観測データを整理・統計するということが行われていませんでした。それらはきめ細かな気象予報につながることなので、私はフィールドノートに記録されたままになっていた過去の気象観測データを統計的に処理し、気象の地域特性や最高・最低気温の出現状況などについて調査しました。そうして得た情報は、気象予報に活用できるような資料にまとめ、毎日の予報作業の際に担当職員とそれを使って話し合い、予報をより正確で具体的なものにするやり方を示していきました。

Q 活動での最大の困難は?

 長年にわたって使ってきた予報解説文をより具体的なものに変えてもらうのは難しいことでした。予報担当者は予報が外れるリスクを警戒しているようでした。例えば、「大雨が降りそうです」という表現を「100ミリを超える大雨が降りそうです」という表現にしようと提案しても、「周辺国と同レベルの予報解説文を使ってきた。どうして変える必要があるのか?」との意見が予報担当者から出ました。

Q どう対応しましたか?

 毎日、私なりに量的な予報を加えて作成したその日の予報解説文を配属先の全職員にメールで配信してみました。メールでの配信にしたのは、職員の勤務が3交代制であるため、口頭で全職員に伝えることができなかったからです。結局、具体的な雨量を予報解説文に盛り込むことは、任期の最後まで受け入れてはもらえませんでしたが、最高・最低気温などの予測については、私が作成した資料を使ってより正確に行われるようになりました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 トンガのような小さな島嶼国には、自前の気象予報システムはほとんどありません。しかし、気象予報に必要な資料は周辺国(トンガの場合はニュージーランドやオーストラリアなど)や日本、世界気象機関の支援で十分にあり、気象予報に携わる人たちは定期的に周辺国で研修も受けているので、気象の観測や予報の力が他国より劣っているわけではありません。そのため、トンガと同じような小さな国で気象職種の活動を行う方は、「同僚たちを指導する」というのではなく、「同僚たちと一緒に仕事をする」というスタンスのほうが良いかもしれません。そのなかで、観測データの保存や解析など、気象の観測や予報の周辺作業でまだ十分に行われていないものについて、より良いやり方を提案していけば、有益な支援になるのではと思います。

鈴木さん基礎情報





【PROFILE】
1950年生まれ、福島県出身。大学卒業後、気象や環境に関するコンサルティングを行う会社に入社。気象の予報・調査・解析や、大気汚染などの環境調査・環境アセスメントの業務に約45年間携わる。67歳で退職し、2017年10月、シニア海外協力隊員としてトンガに赴任。19年10月に帰国。

【活動概要】
トンガ気象局(ファモツ)に配属され、気象業務に関する主に以下の活動に従事。
●過去の気象観測データの統計的な処理と、それによって得られた情報の整理
●毎日の気象予報への参加
●気象予報の新たな解説文の提案

知られざるストーリー