英語漬けの環境をつくる

佐藤功大さん(マラウイ・薬剤師・2017年度3次隊)






PROFILE

【PROFILE】
1987年生まれ、北海道出身。大学の薬学部を卒業後、薬剤師として薬局と病院に勤務。2018年1月、青年海外協力隊員としてマラウイに赴任。20年1月に帰国。現在は国際NGOのアフリカでの事業に従事。

【活動概要】
ルンピ県の県病院に配属され、主に以下の活動に従事。
●院内薬局の業務支援
●5S活動の定着支援
右の写真は配属先の院内薬局の同僚たちと。佐藤さんの働きかけにより、「時間を守る部署」としてマラウイ政府から表彰されるまでになった。

【事前の語学学習】
●派遣前訓練で学んだ言語:英語
●現地語学訓練で学んだ言語:トゥンブカ語

【耳に残る言葉】
「2 minutes!」(トゥー・ミニッツ/あと2分だ!)
約束の時間が過ぎても現地の人が姿を見せないのはよくあること。そこで電話を掛けると、決まってこんなフレーズが出てきました。額面どおりに受け取ってはいけません。30分経ってもやって来ないのはざらでした。ようやく到着したときに口にする遅刻の言い訳も、いつもなかなか秀逸でした。


——赴任時の語学力は?

英語の語句を紙に書いて壁に貼った、佐藤さんの協力隊時代の自宅

 派遣前訓練では、もっともレベルが低いクラスに振り分けられました。検定試験の点数が応募できるラインをぎりぎりクリアするレベルだったので、事前に自習を試みたものの、ほとんど効果がなかったからです。訓練はなんとか乗り切りましたが、赴任後も当初は自分が何を言っているのかわからないまま会話をしているような状態でした。同僚は日本人の英語力が低いことを承知のうえで接してくれるので助かりましたが、よそではそうはいきませんでした。銀行でお金を下ろす際、手続きの説明が聞き取れないため、しまいに「あなたは病気?」などと言われてしまったこともあります。

——赴任当初に行った英語力向上のための対策で有効だったのは?

 たどたどしい英語でも嫌な顔をせずに会話に付き合ってくれるような現地の友人をつくることは、英語力向上の近道だと思いました。私は赴任してまもない時期に地域のサッカーチームに入らせてもらったのですが、そこで気が合う友人に出会うことができました。そうした友人を得るためには、相手から話しかけてもらいやすいよう、努めて笑顔でいることが重要かと思います。
 任地の自宅での生活を英語まみれにしたのも有効でした。私の自宅はテレビを観ることができず、インターネットも不安定だったので、iPodをスピーカーに繋げて音楽を聴くことが数少ない娯楽の1つでした。そこで、聴く音楽は英語のものにし、さらに音楽の合間に英語のリスニング教材を流すようにしてみました。また、英語の語句で覚えておいたほうが良いと思うものを紙に書き、壁のあちこちに貼りました。そうした努力の障壁は「恥ずかしさ」だと思います。現地の友人を自宅に招いた際、スピーカーからリスニング教材が流れ出してからかわれたこともあります。雨期は雨音が大きいので、近所の人に聞かれることを心配せずに大声で英語の歌を歌うチャンスでした。そうした生活を1年ほど続けたところ、活動中、切羽詰まった状況でとっさに英語のフレーズが出てくるまでになりました。

——その後、英語力をさらに上げるための勉強などは行いましたか。

 同僚に向けたプレゼンのやり方を、事前に台本をつくって読み上げるものから、台本をつくらずにしっかり考えながら話すものへと変え、そのための練習を日々重ねたことで、英語力がかなり高まったと感じました。練習はいつも2つのステップで進めました。プレゼンのテーマが決まったら、まずは時間を気にせず思いつくままに伝えたいことを英語で表現してみる。そうしてある程度話す内容が見えてきたら、時間を決めてそれに収まるよう調節してみたり、発表者と質問者の2役を演じてみたりする。私はフランス語なまりの英語に魅力を感じるようになっていたので、そのような英語を話している動画を参考にするなどして、プレゼンの練習のやる気を高めました。

——後輩の協力隊員に向け、語学力向上に関するアドバイスをお願いします。

 私のように応募時の英語力が最下位レベルの人は、派遣前訓練から相当苦労するはずです。しかし、私でさえ帰国後に国際NGOの職員として英語を使って仕事をすることができるまで語学力が伸びました。重要なのは、覚悟を決めて日々、勉強に励み続けることだと思います。

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