活動資料の添削を現地の人に依頼

山田瀬奈さん(ベナン・コミュニティ開発・2018年度1次隊)






PROFILE

【PROFILE】
1992年生まれ、三重県出身。大学卒業後、民間企業に勤務。2018年7月、青年海外協力隊員としてベナンに赴任。20年3月に一時帰国し、同年7月に任期終了。現在はまちづくりに関する仕事に携わっている。

【活動概要】
ドンガ県バシラ市ペネスル区の区役所に配属され、栄養改善を目的におから料理や乾燥おからを普及させる活動に従事。右の写真は、乳児のワクチン接種のために集まった村落部の女性たちに、おから料理の紹介をする山田さん。

【事前の語学学習】
●派遣前訓練で学んだ言語:フランス語
●現地語学訓練で学んだ言語:フランス語

【耳に残る言葉】
「déchet de soja」(デシェ・ドゥ・ソジャ/大豆のごみ)
おからはフランスで「pulpe de soja(大豆の果肉)」と呼ばれますが、任地ではこの言葉は知られておらず、代わりに「déchet de soja(大豆のごみ)」と呼ばれていました。日本では「栄養価が高い」という良いイメージがありますが、任地では家畜の餌。もっともな表現なのだと思いました。


——赴任時の語学力は?

講習会の教材を現地の人に添削してもらっている様子

講習会のために準備した台本

 フランス語は一から学ぶ言語だったので、ある程度自習してから派遣前訓練に入ったところ、上位のクラスではあったのですが、赴任時は読む・書く・聞く・話すのすべてが苦手という状態でした。

——語学力不足は当初、活動にどのような影響がありましたか。

 求められていたのは村落部で保健活動を行うことだったので、着任するとまずは村落部を回って保健に関する住民への聞き取り調査をすることにしました。ところが、村落部の住民が普段使っているのは現地語のアニ語で、公用語のフランス語は苦手という人も少なくありませんでした。そのため、私自身のフランス語力の不足とあいまって、フランス語での聞き取りは難航しました。フランス語が特に苦手な人への聞き取りは、フランス語を話せる近所の人にアニ語の通訳をしてもらったのですが、お願いした人のフランス語力も私のように低いレベルであることが多く、通訳を介した聞き取りもなかなか思うようには進みませんでした。

——語学にまつわるそうした困難に対し、その後どのように対応しましたか。

 アニ語の勉強を始めたのですが、すぐに活動で使えるだけのレベルにはなりません。そこで村落部の住民とコミュニケーションをとる際は、ときおりアニ語を混えつつも、彼らがわかる語句に絞ったフランス語をベースにすることにしたのですが、この方法は有効でした。保健に関する聞き取り調査の結果を踏まえて私が主に取り組んだのは、「おから」を使った料理を普及させる活動です。任地では豆腐のような料理がつくられていましたが、その過程で出るおからは捨てられるか、家畜の餌にされるかしていたので、それを活用してタンパク質や食物繊維の摂取量を増やしてもらおうと考えました。村落部の住民におから料理を紹介するために開く講習会も、フランス語で行いました。その台本や教材は事前に村の保健センターの職員に見せ、村落部の住民がわかるようなレベルのフランス語に修正してもらいました。多様な意見を集めたいと思ったので、添削はあえてほかの人が通るような場所で行ってもらい、通りがかった人にも声をかけ、台本や教材で使っているフランス語について意見を求めました。そうした方法をとったことで、受講者に理解してもらいやすい講習会にすることができました。さらに、私自身のフランス語力の向上にもつながったという実感がありました。添削してもらう際に、現地の人たちからより意味が通りやすい表現なども教えてもらうことができたからです。

——後輩の協力隊員に向け、語学力向上に関するアドバイスをお願いします。

 私の同僚たちはそれぞれの担当業務を抱えて忙しく、おから料理の講習会に同行してもらうことは難しかったのですが、村の保健センターの職員などは台本や教材の添削を快く引き受けてくれました。おそらく配属先がそうした状況にある協力隊員は少なくないと思います。ぜひ、添削については遠慮せずに現地の人たちに相談してみてください。また、同じ任地の人でも、年代や受けてきた教育などによって語学力はさまざまなはずですので、添削はできるだけ多様な人にお願いするのが良いかと思います。

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