【PROFILE】
1986年生まれ、兵庫県出身。大学卒業後、中学校の英語科教諭と小学校教諭を7年間務める。2018年7月、青年海外協力隊員としてパラグアイに赴任。20年3月に一時帰国し、同年7月に任期終了。現在はJICAの国際協力推進員(京都府担当)。
【活動概要】
NGO「クレセール」(グアイラ県)に配属され、主に以下の活動に従事。
●小学校での算数や体育の授業の実施
●高校生や大学生を対象とする英語講座の実施
●女性を対象とするズンバの指導
右の写真は小学校の体育授業でソーラン節を教える畑中さん。
【事前の語学学習】
●派遣前訓練で学んだ言語:スペイン語
●現地語学訓練で学んだ言語:スペイン語
【耳に残る言葉】
「Así no más!」(アスィ・ノ・マス!/そのままでいいよ!)
同僚などに活動でうまくいかないことについて相談した際によく返ってきた言葉です。パラグアイではこの表現が使われていましたが、正式な表現は「nada más」です。「そんなにがんばらなくても大丈夫」という、のんびりとして寛容なパラグアイ人の姿勢が表れている言葉だと感じました。
協力隊員たちで開いた「日本祭り」で、日本食の栄養についてプレゼンする畑中さん。スペイン語力の向上にもつなげるため、準備に時間をかけたプレゼンの1つだ
畑中さんの語学学習用ノート
スペイン語は初めて学ぶ言語だったので、選考試験に合格した後、スペイン語ができる知人に少し習うなどしておいたものの、上達した実感がほとんどないまま派遣前訓練に入りました。しかし、訓練が終わるころにはネイティブの先生とスムーズに会話ができるようになっていました。派遣前訓練の間の上達でもっとも効果があった勉強法は「音読」です。訓練所の語学の先生に勧められ、毎晩、その日の授業で発音を学んだ語句や文を1〜2時間かけて繰り返し音読するという習慣を続けたのですが、特にリスニング能力の上達を感じられるようになりました。しかし、派遣前訓練で学ぶ語彙だけではやはり足りず、赴任した当初は語彙の乏しさが一番のネックでした。複数人での会話でわからない単語が1つ出てきたとたん動揺してしまい、先の話にまったく付いていけなくなってしまうことがよくあったからです。
現地の人と一対一で会話しているときにわからない単語が出てきたら、その場で相手に意味を尋ねたり、スマートフォンに会話を録音しておいて後で辞書で調べたりといったことを地道に続けた結果、徐々に語彙は増えていきました。
保健・医療分野の協力隊員で、スペイン語力の向上が顕著に速かった人がいたので、その秘訣を探ったところ、週に1度のペースで啓発のプレゼンを行っていることがわかりました。そこで私も赴任して半年ほど経ったころから、スペイン語でプレゼンをする機会が訪れた際、同時にスペイン語力の向上にもつなげようと考え、台本づくりやその発音の練習に時間をかけるようにしました。すると任期の半ばには、同僚に「スペイン語力がずいぶん向上したね」と言ってもらえるようになりました。
「使えるようになりたい」と思っている言い回し、意味はわかるけれども普段の会話ではまだ自然に出てくるまでにはなっていない言い回しを、意識して台本に盛り込み、その発音練習を繰り返し行うようにしました。台本をつくったら現地の人に読み上げてもらい、それをスマートフォンで録音して発音のモデルとしました。意識して盛り込んだ言い回しの中心は、「〜を通して」や「〜の問題については」など、文と文をつなげるものです。それらはさまざまなトピックの会話で使える汎用性の高い表現なので、プレゼンで使った後は意識してほかの場面でも使い、技能の定着を図りました。
派遣前訓練のスペイン語の恩師にいただいた「音読が重要」という助言は、今振り返っても貴重なものだったと思います。恩師は「ただ音読するだけでなく、できるだけ速く音読できるように練習することが重要だ」とも指導してくださいました。「言えるものは聞き取れる」という趣旨の教えであり、実際、私はプレゼンの練習で現地の人たちと同じような速さで話す練習を重ねたところ、赴任の約1年後には現地の人が通常の速さで話すスペイン語が8割方は聞き取れるようになりました。