現地語と日本語の辞書を作成

安藤俊明さん(パプアニューギニア・PCインストラクター・2018年度1次隊)






PROFILE

【PROFILE】
東京都出身。大学卒業後、情報科教員として高校に、技術・家庭科教員として中学校に勤務した後、2018年7月に青年海外協力隊員としてパプアニューギニアに赴任(現職教員特別参加制度)。20年3月に任期を終了し、同年4月に復職。

【活動概要】
ポポンデッタ高校(オロ州)に配属され、主に以下の活動に従事。
●コンピュータの授業の実施
●故障したパソコンの修理などの授業環境の整備
右の写真は安藤さんが担当したコンピュータの授業の様子。

【事前の語学学習】
●派遣前訓練で学んだ言語:英語
●現地語学訓練で学んだ言語:トク・ピシン語

【耳に残る言葉】
「Later!」(レイター!/もう少し後で!)
任地で主に使われているのは公用語のトク・ピシン語ですが、この英語は現地の人の会話によく出てきます。トク・ピシン語にも同じ意の「bihain」という単語があるのですが、依頼したことを期限どおりにやってもらえないときに問い合わせると、なぜかいつもこの語で返って来るのが不思議でした。


——赴任時の語学力は?

安藤さんが集め、活用したトク・ピシン語の教材

制作した辞書のページ例

 パプアニューギニアでは、現地語のトク・ピシン語とヒリモツ語、および英語の3つが公用語になっています。普段の生活で主に使われているのはトク・ピシン語ですが、学校教育では英語の導入が進められており、私の配属先のような中等教育機関では全面的に英語で教育を行うことになっていました。私が派遣前訓練で学んだのは英語なので、赴任後も活動に関しては語学の面でさほど苦労するということはありませんでした。問題は、生活言語であるトク・ピシン語の力です。現地語学訓練でわずか1週間程度学んだだけで任地に赴いたため、当初は日常生活での語学の苦労が多かったです。テレビやラジオの一部はトク・ピシン語なので理解できず、現地の人たちのトク・ピシン語の会話にはまったく加わることができない、店や銀行で英語が通じないために四苦八苦する、といった状態でした。

——トク・ピシン語についてどのような対策をとったのでしょうか。

 選考試験に合格してパプアニューギニアについて調べたところ、派遣前訓練で学ぶのは英語だけれども、トク・ピシン語の力も不可欠だと感じました。そこで、派遣前訓練に入る前に日本で入手可能なトク・ピシン語の教材を買い集めておいたのですが、それらは赴任後に重宝しました。

——そうした教材は実際にどのように活用していったのでしょうか。

 赴任してまもなく、トク・ピシン語を流暢に話す先輩隊員に話を聞いてみると、活動は英語でもこなせるけれども、任地の住民との会話は基本的にトク・ピシン語であり、とんでもない金額の水道代が請求されたときなどのっぴきならない状況を乗り切っていくためにはトク・ピシン語の力が不可欠だとのことでした。そこで私が実践したのは、入手しておいたトク・ピシン語の教材を活用して、トク・ピシン語、英語、日本語の3つの言語について、意味が共通する語句の対応をまとめた簡易な辞書をつくることでした。それを残せば、パプアニューギニアの後輩隊員にも有益だろうとの考えもありました。その制作作業を通じて、私自身のトク・ピシン語の語彙力は自ずと高まっていきました。

——辞書は具体的にどのようにつくっていったのでしょうか。

 トク・ピシン語の習得に関心を持つパプアニューギニアの協力隊員たちに声をかけて、賛同してくれた8人で制作グループをつくり、新設したFacebookページでやりとりしながら制作を進めました。語句の分野ごとに制作の役割分担をし、私の任期終了までに約2000の単語を盛り込む辞書をつくることができました。つくった辞書は後輩隊員に活用してもらえるよう、インターネット上でも公開しています。各単語には、現地の人に読み上げてもらった音声で発音を確認できるようにもしてあります。

——後輩の協力隊員に向け、語学力向上に関するアドバイスをお願いします。

 現在、おそらく協力隊員のどの派遣国も、現地のマスメディアの記事をインターネットで閲覧することができるため、派遣前からその国の現在の状況について情報を入手することができるかと思います。そうした記事を辞書を片手に読み解くことは、現地の情報の入手と現地の言語の習得を同時に叶えることができる、一石二鳥の勉強法ではないかと思います。

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