希少職種図鑑 [教育行政・学校運営]

職種概要

派遣中:0人
累計:232人
分類:人的資源
活動例:学校の管理職を対象に組織運営に関する指導を行う
類似職種:小学校教育

※人数は2021年3月末現在。

話=太郎良光男さん(シニア海外協力隊員/エジプト・2017年度3次隊)

Q メインの活動は?

エジプト・日本学校で現地教員に見てもらいながら算数授業を実践する太郎良さん

 ランゲージ・スクール(*1)やエジプト・日本学校(*2)を巡回し、日本式教育の良い点の導入を支援することです。例えば、学級活動や校内清掃などの特別活動(*3)の導入、子どもたちの作品で教室や校舎の掲示を充実させる方法、子どもたちの机を班ごとに向き合う配置からすべてを教壇に向いた配置とするなど学習形態別配置などについて、日本の学校での行われ方を紹介しながら実践をフォローしました。また、算数授業の改善に向け、学習規律の徹底や能動的な学習方法であるアクティブ・ラーニングの取り入れ方を現地の先生に知ってもらうため、私が授業を行って見てもらう活動も行いました。

*1 ランゲージ・スクール…英語などアラビア語以外の言語の教育に重きを置く公立学校。
*2 エジプト・日本学校…JICAの財政支援を受けて開校された、日本式教育の実践を目指す公立の初等教育機関。
*3 特別活動…教育の一環として取り入れる、「学級活動」「日直」「掃除」などの教科外活動。

Q 活動の最大の困難は?

 巡回先の学校の教育課程や文化が日本の学校のものとは異なっていたため、現地の先生たちが日本で行われている特別活動や教科指導の方法についての知識を持っていないなか、まずは彼らにそれらへの興味を持ってもらうことに苦労しました。

Q どう対応しましたか?

 有効だった対応策はいくつかありましたが、その1つは、私が提案することの意義をできるだけ「見える化」することです。例えば、机の配置を教壇に向けたものにする学校がいくつか出てきた段階で、各校の先生たちを対象に「現在の机の配置」と「子どもの授業への集中度」を訊くアンケートを実施し、その相関関係をグラフ化して各校に伝えました。すると最終的に、巡回先のすべてで机が教壇に向けて配置されるようになりました。
 ほかに有効だった対応策は、現地の先生たちが児童役となる「模擬授業」を含むワークショップの実施です。あるテーマを児童同士で話し合う学級活動の模擬授業では、先生たちが熱心に話し合う姿が見られ、学級活動に対する興味の高まりが伺えました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 協力隊員が活動する学校の校長たちは、先生としての豊かなキャリアを持っている方が大半だと思います。そのため、校長に対してなんらかの改善に向けた提案をする際は、相手のプライドを傷つけないよう配慮することが大切だと思います。まずはその学校の良い面を見つけ、伝える。そのうえで、課題と判断したことを挙げ、その具体的な解決策を提案する。その提案を受け入れてくれたかどうかも必ず確認し、もし実際の改善につながった場合は、それに対する評価を伝える。そうしたこまめなやりとりが重要だというのが、私が協力隊経験を通じて得た実感です。

太郎良さん基礎情報





【PROFILE】
1948年生まれ、福岡県出身。私立高校や公立中学校に数学科教員として勤務した後、公立中学校の教頭・校長、市教育委員会の指導主事・人事管理主事(教育事務所配属)などを歴任。定年退職後、市教育委員会の指導主幹、バンコク日本人学校の数学科教員(シニア派遣教員)を経て、2018年1月にシニア海外協力隊員としてエジプトに赴任。20年1月に帰国。

【活動概要】
カイロ県教育局に配属され、10校のランゲージ・スクールと3校のエジプト・日本学校を巡回し、主に以下の活動に従事。
●特別活動など日本式教育の導入の提案とその支援
●算数授業の改善に向けた支援

知られざるストーリー