希少職種図鑑 [病院運営管理]

職種概要

派遣中:0人
累計:27人
分類:保健・医療
活動例:保健医療施設管理や医療サービスの向上に寄与する活動
類似職種:公衆衛生、保健師、看護師など

※人数は2021年4月末現在。

話=原 隆さん(シニア海外協力隊員/ザンビア・2017年度4次隊)

Q メインの活動は?

配属先の幹部会議のメンバーが開いてくれた原さん(中央)の送別会

 配属先の病院では、幹部職員の指導力不足が顕著でした。そこで私が力を入れたのは、人づくりや組織づくりを通して経営基盤を強化する活動です。例えば、財務や業務量などの月次データをグラフなどで表したマンスリーレポートを発行し、病院運営の「見える化」を図りました。また、約40人の幹部職員を対象に、「BSC」(*1)の手法を学んで「ビジョンメイキング」(*2)の力を養うワークショップも開きました。幹部職員が病院のビジョンと戦略を描けるようになった後は、その実現に必要な人づくりや組織づくり、例えば幹部会議の議題に「財務」を組み込み、その議論をフォローすることなどに取り組みました。財務の議論は当初、「物が足りない」といった問題は挙がるものの、その解決策の検討には至らずに終わっていましたが、やがて月次データをもとに問題の解決策が検討されるようになりました。

*1 BSC…「Balanced Scorecard」の略。企業のビジョン・戦略をバランスよく達成するため、「財務」の視点だけでなく、「顧客」や「業務プロセス」などの視点でも指標を設定して行う業績評価手法。
*2 ビジョンメイキング…組織のメンバーのモチベーションを高めるため、幹部が組織のビジョンを設定すること。

Q 活動の最大の困難は?

 私が提案した病院運営の改善策の効果が定着するためには、病院が自分たちでそれをサポートしていく仕組みを持つことが必要となります。そこで、各部門の若手職員と院長からなる「経営企画室」を設置し、マンスリーレポートの作成や、幹部会議で決定された改善策の実践指導などを担ってもらうことにしました。しかし、メンバーの他機関への異動が重なるうちに、経営企画室は機能しなくなりました。

Q どう対応しましたか?

 若手職員によるボトムアップのやり方は難しいと考えて経営企画室を解散し、幹部会議を司令塔としてトップダウンで改善策の実践指導などを行ってもらうようにしてみました。すると、幹部職員に自覚や責任感が生まれ、改善策の実践結果のモニタリングが定着するなどの効果が現れました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 看護師の経験がある方が「病院運営管理」の職種で協力隊に参加する場合、医療サービスに詳しいという強みを生かして、その質の確保に向けて5S・KAIZENを支援する活動例が多いようです。一方、私は医療コンサルタントとしての経験があったので、「経営基盤づくり」にフォーカスを当てて活動しました。このように、「病院運営管理」はバックグラウンドによってさまざまなアプローチが可能な職種だと思います。どのようなバックグラウンドであっても共通して重要なのは、「配属先の病院を地域の宝にするのだ」というくらいの強い思いでしょう。それがあれば、困難に直面しても必ず道は開けると思います。

原さん基礎情報





【PROFILE】
1954年生まれ、熊本県出身。大学卒業後、エンジニアリング会社の社員としてイラクやサウジアラビアでの事業に携わった後、医療コンサルティング会社を設立。勤続30年を機に2018年4月、シニア海外協力隊員としてザンビアに赴任(現職参加)。20年3月に帰国。

【活動概要】
ルサカ州ルサカ郡のマテロ1次レベル病院に配属され、病院の運営に関する主に以下の活動に従事。
●幹部職員の能力強化支援
●年次計画策定や予算編成の支援
●診療の質を評価する仕組みの整備支援

知られざるストーリー