希少職種図鑑 [高齢者介護]

職種概要

派遣中:0人
累計:61人
分類:社会福祉
活動例:生活支援やリクリエーションなどの支援を行う
類似職種:ソーシャルワーカー

※人数は2021年4月末現在。

話=大室知世さん(タイ・2017年度3次隊)

Q メインの活動は?

高齢者クラブで介護予防体操の指導をする大室さん(左から2人目)

 人口約5000人のうち2割を60歳以上が占め、高齢化が進みつつある町の役場が配属先でした。特に力を入れたのは、町内の約10カ所にある高齢者クラブを巡回し、介護予防体操を普及することです。着任直後に町の高齢者70人を対象に実施したアンケートで、運動に関心がある方が多いと知ったことから取り組んだ活動です。3カ月ごとに実施した高齢者対象の体力測定では、どの項目もわずかながら上昇傾向が見られたことから、一定の効果があったようでした。

Q 活動での最大の困難は?

 派遣前に勤務していた高齢者施設では介護予防体操を行っていたので、それを紹介する教室を企画し、高齢者クラブや町のクリニックで私がインストラクターとなって開催したのですが、当初は参加してくれる方がほとんどいなかったことです。

Q どう対応しましたか?

 介護予防のために体操をするということは町の方々に馴染みがなく、その意義がよくわからないから興味を持ってもらえないのだろうと考えました。そこでまず、日本の介護予防体操を紹介することをやめ、高齢者クラブの責任者を務めている方々に介護予防体操の意義を伝えたうえで、それを踏まえたオリジナルの体操を彼らに作成してもらうことにしました。そうすることで、現地の高齢者が楽しめる体操を考案してもらえたり、体操の意義をクラブのメンバーにわかりやすく伝えてもらえたりするだろうと考えたからです。また、「今より健康になったら何をしたいか」を事前に書き出して体操に取り組む目標を意識化してもらったり、3カ月ごとに体力測定を実施することで体操の効果の可視化を図ったりもしました。すると、高齢者クラブの体操教室は十数人が継続して参加してくれるようになりました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 協力隊の派遣国のなかには、「介護」という業種がまだない国も少なくないかと思います。そうした国では、「私は日本で『介護』の仕事をしていた」と説明しても、「それでいったい何ができるのか?」と問われてしまう場面もあるかと思います。一方で、現地の高齢者の生活や健康については協力隊員よりも現地の方々のほうがよくご存知であり、高齢者の支援方法については協力隊員が思いつかないようなアイデアを出してもらえることもあります。そのため、現地の方々の知恵を積極的に借りる姿勢が、高齢者介護の職種ではとても重要だと思います。

大室さん基礎情報





【PROFILE】
1986年生まれ、兵庫県出身。大学卒業後、介護福祉士として高齢者施設に勤務。2018年1月、青年海外協力隊員としてタイに赴任。20年1月に帰国。現在はひょうご外国人介護実習支援センターで、介護職に就く外国人の支援に従事。

【活動概要】
パッタルン県ムアンパッタルン郡カオチアック町の役場に配属され、主に以下の活動に従事。
●介護予防体操の制作・普及
●高齢者が制作した民芸品の販売支援
●看護師、保健ボランティア、高齢者の家族への介護方法の指導

知られざるストーリー