希少職種図鑑 [金融]

職種概要

派遣中:0人
累計:46人
分類:計画・行政
活動例:大学などでの講師、金融機関への助言
類似職種:行政サービス、マーケティング

※人数は2021年5月末現在。

話=經澤伸一郎さん(シニア海外協力隊員/ウズベキスタン・2016年度4次隊)

Q メインの活動は?

經澤さん(最前列)が指導した大学生たちと

 ウズベキスタンでは1991年にソ連から独立して以来、国営企業の民営化、外国為替の自由化、海外からの投資の促進など、市場経済への移行が徐々に進められています。そうしたなか、私が配属された世界経済外交大学の国際経済学部では、市場経済化に対応できる人材の育成を目的に、国際経済や国際金融に関する教育を行っています。私は教員として、主に「国際金融市場」に関する講義やゼミを担当しました。また、外資系の銀行や証券会社に勤務するなかで得た知識をベースに、補習ゼミの形で「信用リスク管理」や「国際マーケティング」などについても教えました。学外では、証券市場の開発に携わる政府機関に対して、日本の金融・証券に関する法律を紹介するなどの支援をしました。

Q 活動の最大の困難は?

 大学側が突然物事を決定したり、新たな活動を要望したりすることが多かった点です。例えば、担当する授業の数の倍増を新学期が始まる直前に打診されたり、決まっていた時間割が急に変更されたりすることなどがありました。同僚教員や学生たちも対応のしづらさを感じているようでしたが、大学はトップダウン型の管理体制だったため、仕方なくそうした状況を受け入れているようでした。

Q どう対応しましたか?

 唐突な要望を一度引き受けてしまうと、次から次へと要望される傾向があったことから、「授業の準備には時間をかけたい」といった私の考えを、日頃から上層部に繰り返し話しておくよう努めました。それにより、限度を超えた要望について断るのが容易になったと感じました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

「金融」という職種で協力隊に参加されるのは、シニア世代の方が中心かと思います。シニア世代の協力隊員全般に共通することだと思いますが、「寛容の精神」を忘れないことが活動では重要だと思います。G7諸国のなかでも、日本は計画性や時間の正確さを特に重んじる国だと思います。そうした社会で長い間仕事をしてきたことから、派遣国では想定外のことがあまりに多いため、当初は強いフラストレーションを感じてしまうはずです。そうした状況を乗り切るためには、憤りを募らせてばかりいるのではなく、「郷に入れば郷に従え」という姿勢で対応するのが良いと、私は自分の活動を通して実感しました。そうした姿勢で数カ月間過ごしていると、次第に現地のペースに慣れていき、それ以後は落ち着いた気持ちで充実した時間を過ごせることと思います。

經澤さん基礎情報





【PROFILE】
1954年生まれ、東京都出身。成蹊大学経済学部を卒業後、米・アリゾナ州立大学サンダーバード国際経営大学院の国際経営学修士課程を修了。その後、外資系の銀行と証券会社で信用リスク管理に関する業務に従事。定年退職後の2017年3月、シニア海外協力隊員としてウズベキスタンに赴任。19年3月に帰国。

【活動概要】
世界経済外交大学(タシケント州タシケント市)に配属され、主に以下の活動に従事。
●国際金融市場論の授業の実施
●国際マーケティングや信用リスク管理について教える補習ゼミの実施
●証券市場の開発を行う政府機関へのアドバイス

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