先輩隊員のシューカツ記

【今月の先輩】就職先-トキタ種苗株式会社

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

英大学院進学をやめて就職を選びました

来栖弘幸さん
来栖弘幸さん/モザンビーク・村落開発普及員・2009年度4次隊・広島県出身

トキタ種苗株式会社 海外事業本部 外国部 外国2課 係長

事業概要:野菜・花卉(かき)種苗の品種開発、生産、販売、輸出・農園芸資材開発

来栖弘幸さんの略歴

  • ▶1985年-広島県生まれ
  • ▶2008年-アメリカの大学を卒業後、日本で金属部品会社に入社
  • ▶2010年3月-青年海外協力隊員としてモザンビークに赴任
  • ▶2012年3月-帰国
  • ▶2012年9月-トキタ種苗株式会社入社 海外事業本部外国部へ配属

日本は農作物の多くを輸入に頼っているが、その元となる種子は日本で開発されていることが少なくない。日本の種子は世界的に評価が高く、占めるシェアも世界でトップクラス。その種苗業界で活躍している先輩隊員が、トキタ種苗の来栖弘幸さんだ。

来栖さんは、アメリカの大学を卒業後、約1年の社会人経験を経て、村落開発普及員としてモザンビークに赴任した。配属先は、農業技術の指導を行っている経済活動事務所。農業の知識などまったくなかったが、農地を巡回しながら情報を収集し、農業用水を確保するための浅井戸の施工、野菜の栽培、養蜂箱を使った養蜂の普及などに試行錯誤しながら取り組んだ。

この経験から、将来は農業や開発の仕事をしたいと考えるようになった来栖さんは、専門知識を身につけるため、任期終了後にイギリスの大学院で農業経済学を学ぶことを決めた。

ところが帰国後、たまたま見たJICAの国際キャリア総合情報サイト「PARTNER」の求人情報で、海外で事業展開しているトキタ種苗の存在を知ることになる。

「種子は農業をするうえで、元になるもの。それを海外で売る仕事ができたら面白いなと、漠然と感じました」

いろいろ調べていくうちに、大学院に行くよりもビジネスで農業に関わったほうが勉強になるのではないかという気持ちはどんどん強くなっていった。そして、面接を迎える頃には、就職することを決めていた。

改良品種を作り出す育種には、非常に時間がかかる。企画から数年かけて作り出した品種を売るまでに、早くて6年、長いものだと10年かかることも珍しくないという。

「入社から9年、育種から手掛けた品種を、ようやく商品として売れるところまできました。やりがいも日々強くなっています」

1.協力隊時代 2010年3月~

養蜂箱を開ける来栖さん

養蜂箱の技術はインターネットで情報を集めた

派遣先は、農業省の下部組織であるモルンベーニ郡経済活動事務所。事務所では、農家が安定して作物を生産できるよう、農業技術の巡回指導を主に行っていますが、多くが小規模農家で、なかなか現金収入を得られないという状況でした。取り組んだのは、浅井戸の施工、養蜂箱を使った養蜂の導入、野菜栽培の指導など。当初は何をしたらよいかわからず、まずは職員と一緒に農地を巡回し、とにかく、問題点を見つけ、解決策を考えることを意識していました。

2. 帰国~就職先探し 2012年3月~

農業経済学を学ぶためイギリスの大学院へ留学することを決めていましたが、入学する9月まで時間があったのと、農業や開発に関われる仕事があれば就職するのもありだと考え、「PARTNER」をチェックしました。

▶「PARTNER」

どのような求人があるかチェック。トキタ種苗を含め、農業関係の会社の求人情報を見つけました。

▶JICA中国の青年海外協力隊相談役

協力隊の経験はあるとはいえ、農業は専門ではないので就職活動に不安もあり、話を聞きに行きました。

3.書類提出 2012年7月19日

▶提出したもの

  • 履歴書
  • 自己PR書
  • 活動報告書

▶POINT

青年海外協力隊相談役からのアドバイスで、自己PR書とは別に、自分を知ってもらうために現地で取り組んだ養蜂プロジェクトの報告書を作成。資金調達から販路開拓までを一貫して行ったことを書き、現在の勤務先との面接に至りました。

4.面接 2012年8月中旬

面接は、社長との一対一で行われました。協力隊での経験について聞かれた記憶はないのですが、野菜の栽培指導の際に現地で購入した種子が、実はトキタ種苗が開発・生産したものであることを、面接のときに初めて知り、感動したのを覚えています。

2012年8月内定、9月1日入社

※このページで紹介した採用方法は、来栖さんのご経験に基づいたもので、2019年以降は採用方法が若干変更しています。

現在の仕事

主張中の来栖さん

外国部で北中南米を担当しています。わが社で開発した新品種を、北中南米の各地で試作し、現地の気候に合うかなどの評価を行い、販売しています。現在はコロナ禍のため現地への出張はできませんが、以前は、1回2週間ほどの出張で数カ国を回っていました。代理店探しから始めたところもあります。どこで何を売るかなど、一から考えて企画する仕事は、協力隊の活動に似ています。

時田会長と来栖さん
会長から一言

1994年から協力隊のOVを採用し、これまで約30人が入社しました。協力隊OVの魅力は、オープンマインドで、元気なところ。知らない場所でも物おじせずにどんどん進んでいく開拓精神があるので、頼もしく感じています(時田勉会長)。

後輩へメッセージ

大学院ではなく就職を選んだことを、最初は後悔もしましたが、今はやりたいことができているので、選択が間違っていなかったと確信しています。やりたいことをかなえる道は一つではありません。やりたいことがあるのであれば、そこまでの道をフレキシブルに考えてほしいと思います。

知られざるストーリー