[特集]環境教育隊員に学ぶ、
活動がうまくいく3つのポイント

温暖化、海洋汚染、大気汚染など、環境問題は地球規模で深刻化し続け、先進国だけでなく途上国でも取り組まなければならない課題になっている。協力隊要請があるどの分野にも関わりがあり、他人事ではない。
環境問題を改善する活動のなかで大きな壁となるのが、人々の習慣や生活様式を変えることだ。過去の本誌環境教育特集を開いても、「同僚たちに活動への関心を持ってもらえない」「行動が変わったという手応えを得られない」といった、先輩隊員たちの嘆きや落ち込みの声が並んでいる。
しかし逆の見方をすると、環境教育職種で成果を残した先輩隊員に学べば、環境問題対策だけでなく、あらゆる職種で使える「活動がうまくいく」ポイントが導き出せるのではないか。この特集はそのような発想からスタートした。「取り組み方がわからない」「活動がうまくいかない」、そう感じて行き詰ったときにも活用してほしい。

なぜ、今「環境」を取り入れるべきなのか

はじめに、環境教育職種隊員の事前研修を担当する、日本環境教育フォーラム事務局長の加藤超大さんに、環境教育活動の必要性をお話しいただいた。

環境教育隊員に学ぶ、活動がうまくいく3つのポイント

教える人

加藤超大さん
公益社団法人日本環境教育フォーラム事務局長
加藤超大さん ヨルダン/環境教育/2012年度1次隊

PROFILE

愛知県出身。上海の高校への留学をきっかけに環境問題に興味を持ち、大学では環境教育学を学ぶ。卒業後、ヨルダンへの協力隊派遣を経て2014年に日本環境教育フォーラム入社。19年より現職。青年海外協力隊環境教育OV会会長も務める。

2030年までに持続可能な社会を実現するために、日本でも20年7月からスーパーやコンビニエンスストアなどでのビニール袋有料化が始まり、環境不可の少ないサステナブルな商品の販売が相次ぐなど、環境問題への関心はますます高まっています。

環境問題が人びとの暮らしと密接に関わっていることを示すわかりやすい例が、SDGsの概念を構造として表した「SDGsウェディングケーキモデル」(下図)です。スウェーデンにあるレジリエンス研究所所長のヨハン・ロックストローム博士が考案しました。

ケーキの一番上にあたる「経済圏」を支えているのが、真ん中の「社会圏」の層と、一番下の「生物圏」の層です。3つの層それぞれに世界を変えるためのSDGs17の目標が振り分けられています。例えば、「生物圏」では、「安全な水とトイレを世界中に」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」の4つです。これだけでも、環境問題が「生物圏」に大きく関わっていることがわかると思います。

もし、ケーキの土台となる「生物圏」のスポンジがスカスカだったら、上の「社会圏」と「経済圏」も倒れてしまうでしょう。つまり、土台を整えるためにまずは「生物圏」の環境問題に目を向ける必要があります。

さらにいえば、「社会圏」の層でも、「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」をはじめとしたSDGsの目標を達成していかないと、その上の「経済圏」の層は成り立ちません。
協力隊が担っている活動は、「経済圏」「社会圏」も含めて、SDGsの目標に該当しているものがほとんどだと思います。どれも持続可能な社会を実現するために欠かせない目標ですが、まずは「生物圏」という土台を強固なものにしていくために、すべての職種で環境要素を活動に盛り込んでいく必要があると思います。

多くの人に環境問題を意識してもらう環境教育の活動は、「持続可能な社会のために行動できる人材を育成すること」も大きな目的の一つですから、「人づくり」の側面があります。最終的なゴールは、実際に環境に負荷をかけない生活をするための行動を起こしてもらうことにあります。

ただし、協力隊の任期であるたった2年間で人の行動を変えるのは至難の業です。期間内に人や物事を変えようとするのではなく、いつか行動を起こしてもらうために、「きっかけの種を蒔く」という意識で活動していくといいと思います。

SDGs

Text・Photo(加藤さんプロフィール)=桜木奈央子 写真提供=前川健一さん

知られざるストーリー