[特集]環境教育隊員に学ぶ、
活動がうまくいく3つのポイント

活動を成功に導く3つのポイント

3人のOVの活動やアンケート結果から見えてきた「活動を成功させるポイント」を3つにまとめ、前出の加藤さんにコメントをいただいた。環境教育に限らずあなたの活動にもぜひ取り入れてみてほしい。

Point 1 顔を売る

例 テレビ番組に出たことで、三戸さんは地元の人気者になった

任地の問題を見つけ、活動内容や場所を自分で探すことも多い環境教育職種では、人脈づくりが活動の基本です。そのためにも、多くの人に自分をアピールして覚えてもらいましょう。
ミクロネシアの前川さんは、地元NGOとの調査で各家庭を訪問するだけでなく、調査後の活動でも自らゴミ収集車に乗って広報活動をするなど、足で稼いで日本から来た自分を印象づけました。小さな島での活動を円滑に行うために有効だったと思います。
三戸さんのエクアドルでのテレビ出演は、顔を売るわかりやすい例ですね。任地の人口規模が大きい場合には、マスメディアの活用も効果的ですし、今はSNSもどんどん活用することで、幅広い年齢層に届きます。
環境教育は即効性のあるメリットが伝わりにくい活動です。現地になじみのない外国人が地域の人々の生活を変えるような話をするには、前段階として信頼関係が不可欠です。まずは地元に溶け込むこと。自分の顔を売り、カウンターパート(以下、CP)や関連団体、地域住民、子どもたちとの信頼関係を築きましょう。

Point 2 ニーズを引き出す

例 前川さんは現地語が話せるNGOの人たちと現地調査やワークショップを行った

同じ国や地域でも、かかわる人によってニーズは変わります。
前川さんがミクロネシアでの活動を成功させたのは、事前にゴミ収集車寄贈後の計画をしっかり立てていただけでなく、CPや地域の人と向き合い、地域を徹底的に調査して現場の問題点やニーズをしっかり把握したことにあります。
ウガンダの市川さんは活動先では環境教育を行うことが不可欠と感じながらも、2つの団体それぞれの希望も取り入れ、3つの活動を進めました。その根底には、同じウガンダ人でも組織が違えば置かれている状況も違い、ニーズが異なることを早々に見極めたことがあるのだと思います。
エクアドルの三戸さんも対象年齢によって授業内容のニーズが異なることに気づき、教材を使い分けました。テレビ番組では、環境問題を深掘りするというより、毎回異なるテーマを取り上げました。まずは住民に広く環境問題に興味を持ってもらいたいという配属先のニーズにも応えるためです。
こちらの希望を一方的に伝えるだけでは、周囲は協力してくれません。地域のニーズに合わせながら柔軟に活動を進めていきましょう。

Point 3 やってもらう

例 収入向上のための商品作りは、得意とする人にリーダーになってもらい、市川さんはコーディネーターを担う

環境教育は即効性よりもじわじわと効果を感じられる漢方薬のようなものです。2年という短期間で人の行動を変えるのは簡単ではありません。自分の任期が終わったあとも続く活動を目指すには、協力隊員がすべて行うのではなく、任地の人にも任せることが大切です。
ミクロネシアの前川さんは、自ら現場の状況を確認しながらも、2年間の計画はCPに立ててもらい、また周囲のやる気のあるメンバーを探して、皆で活動を広げていきました。
ウガンダの市川さんはネイチャーガイドとしての専門知識を持っているにもかかわらず、各団体をつなぐコーディネーターとしてうまく立ち回りました。各活動でかかわっているメンバーの得意分野を見極め、リーダーになってもらうことで、市川さん自身が動くのではなく、住民主体の環境活動を促した好例だと思います。
CPや住民たちの「やってみようかな」という気持ちをうまく引き出し、モチベーションを維持させるべく、活動先の人々が主役となる活動を心がけましょう。

3つのポイントを意識して活動に環境要素を取り入れよう

特集冒頭でお伝えした通り、途上国の人々にも環境問題を「いますぐにでも解決すべき課題」として捉えてもらわなければならない時代にきています。
私はヨルダンでの隊員時代、小中高校を管轄する文化芸術活動課に配属され、最初に各学校を巡回しましたが、いずれも環境教育の優先順位はかなり低い状況でした。2年間の活動を通して最終的には生徒たちの行動が変わったと実感を持つことができましたが、それが環境問題の解決にどうつながったかまではまだ見えていません。
しかし数年たった今、大人になりつつあるあの子たちが環境問題を少しでも解決するために行動を起こし、それを次世代の子どもたちに伝えているかもしれません。それを信じて、種をまき続けることが大事だと思います。
特集に登場した3人のOVの活動は、計画・行政分野、商業・観光分野、公共・公益事業分野、人的資源分野などにも関わります。あなたの活動に環境要素を盛り込むなら、どんな活動が考えられますか。考え方や活動内容を変えることで、物事が好転した隊員は少なくありません。3つのポイントを意識しながら、ぜひ活動に環境要素を取り入れてみてください。

Text=桜木奈央子
写真提供=加藤超大さん、前川健一さん、市川雅美さん、三戸朝陽さん

知られざるストーリー