▶ためになる研修会を企画しても日当を配ったり食べ物の提供がないと参加してもらえませんでした。(マラウイ・青少年活動・女性)
小学校で、児童たちに図工や音楽などを教えていました。マラウイでは情操教育科目が定着していなかったため、教員向けに授業の進め方などの研修会を企画しましたが、参加者があまり集まりませんでした。
聞けば、マラウイには「アローワンス(日当)文化」があり、主催者側が参加者にお金を包んだり、食事や飲み物(リフレッシュメント)を用意したりしてもてなすので、それがないと参加しないというのです。
日本では、自分の知識を増やしたいと、参加者側がセミナー料を支払ってでも受講するので、意欲の低さに戸惑いました。
日当や食事を用意する予算がなく、開催を諦めざるを得ないこともありました。どうしたらよかったのでしょうか。
関西大学総合情報学部教授。インディアナ大学スピーチ・コミュニケーション研究科で博士号取得。専門はコミュニケーション学、非言語コミュニケーション。国際理解教育のサポートを行う関西大学の学生団体「Meet the GLOBE」のプロジェクトでは日本の小学生や高校生と現役の協力隊員との交流を図る。
▶同じ目線に立って、やりたいことやできないことを相手に伝えてみましょう。
日当については、マラウイに限らず、多くの協力隊員が悩んできたことだと思います。前号では、自分を「現地化」することをお薦めしましたが、このお悩みに関しても、まずは「現地化」した目線で考えてみましょう。
読者の皆さんは、なぜ多くの地域で主催者側がお金や食べ物を用意する慣習があるかわかりますか? 考えられる一番の理由は「現地の人の収入が少ないから」です。
研修は1~2時間で終わったとしても、交通機関が発達していない地域では、研修場所への移動で1日使うこともあり得ます。その間仕事ができませんから、収入が減ってしまいます。家が遠く、研修会会場に来るのに飛行機を使わなくてはならなければ、金銭面で大きな負担です。
つまり、補填するお金をもらわなければ、参加したい気持ちはあっても、参加できないという事情があります。研修会で出された食事がその日の一食目の方や、その場で食べずに家に持ち帰って、家族に食べさせたりする方もいるかもしれません。お金がない方でも参加してほしいという気持ちがあるから、主催者側はお金を包んだり、食事を用意したりしてもてなすのではないでしょうか。
一方でこうした任地の事情は理解していても、協力隊員が大盤振る舞いできる予算を持っているわけではありません。在外事務所に現地業務費を申請するとしても、毎回は難しいでしょう。では、予算がなければ開催を諦めるしかないのでしょうか。
私からの提案は、会に参加するメリットと、こちらの事情を正直に伝えることです。同僚の教員への参加を促す会なら、初対面でない教員もいるでしょうから、例えば、「この研修会に参加してもらったら、こんな力が身に付くのであなたに参加してほしいと思っている。ただ、私たちには予算がないので、今回は飲み物だけは用意できるけれど、食べ物は持ち寄りにしたいのだけどどう思う?」と状況を伝えて相談します。
最初は少人数の会でもいいでしょう。持ち寄りにすることで、自分の分だけでなく、少し多めに持ってきてくれる人が出てくるかもしれません。その研修会が最終的に給料アップも目指せる力が付くとなれば、口コミで広まり、徐々に飲み物だけでも参加したいという人たちも現れるはずです。
お金や食べ物以外の付加価値を付ける方法もあります。フィリピンでは、「サティフィケイト(修了証や免許状)」をもらえるかが、会への参加を決める判断材料という人も少なくありません。そうした国なら、カウンターパートらと相談して、研修会が終わったときに修了証のようなものを発行するのも有効でしょう。
現地化したあなたには、親身になって相談に乗ってくれる人たちがたくさんいるはずです。地元の人たちはどうしているかを聞きながら、頼り頼られる関係を築いていきましょう。
Text・Photo =ホシカワミナコ