空手や空手道の根底にある精神や文化の指導、指導者に対し指導方法を伝授する。
※人数は2021年9月末現在。
兵庫県出身。9歳から空手を始める。高校卒業後、一般企業に勤めながら空手指導者として活動。2016年からルワンダ、20年1月からセルビアに赴任。新型コロナウイルス感染拡大のため3月に一時帰国。12月に再赴任がかない現在も活動を続けている。
ナショナルチームとクラブ(道場)の生徒への指導です。
各国のナショナル選手を集めてトレーニングキャンプを実施するなどセルビアの空手のレベルは高く、東京2020オリンピックでは金メダリストを輩出しました。
セルビア人のコーチも多くいるなかであえて日本人による指導を要請したのは、日本へのリスペクトがあるのではないかと感じています。流派が私とは異なるため、技や形を深く指導することはできませんが、礼儀作法や基本練習を通じて空手道の精神を伝えたいと取り組んでいます。
要請内容はセルビアと同じですが、空手を取り巻く環境はかなり違いました。
ルワンダでは空手人口はまだ少なく、ナショナル選手の指導とあわせて各地の学校で空手を紹介する普及活動も実施しました。動画を見せて空手がどのようなスポーツなのか知ってもらうところから始めることもありました。
ろう学校に着任した隊員が手話もできたので、協力して聴覚障害のある子どもたちに空手を教える活動も行いました。普段より表情や動作を大きくして伝えることを心掛けました。回を重ねるごとに上達し、空手を楽しんでいる姿が印象に残っています。
言葉です。英語が通じたルワンダと違い、セルビアでは大人でも英語がまったく通じないため、スマホの翻訳アプリを駆使してコミュニケーションを取っています。
さらに新型コロナウイルス感染拡大後は、道場が使えなくなった時期もあり、活動が制限されています。空手は相手あってですから、思いどおりに指導できずに悔しい思いもしています。
スポーツ全般、動きを見せたほうが伝わりやすいので、日本からビデオカメラと一眼レフ、三脚を持参し、動画で記録を残しています。
また、1回目のルワンダ派遣からの帰国後、スポーツ指導者の資格を取得しました。空手道に限らず、スポーツの指導法は、日々アップデートしていくことが大切です。自分のやり方に固執せず、配属先に合ったやり方を模索しています。さらに勝ちにこだわるだけではない、空手道の精神を伝えたいと思います。
Text=油科真弓 写真提供=由地一樹さん