この職種の先輩隊員に注目!~現場で見つけた仕事図鑑

農林統計

  • 分類:農林水産

   農林水産業について、生産高、耕地面積、農業人口、経営状況などの実態を調査

  • 派遣中:0人(累計:17人)
  • 類似職種:バイオテクノロジー、野菜栽培、統計

※人数は2021年11月末現在。

鈴木博俊さん
鈴木博俊さん
シニア海外協力隊員/ガボン/ 2017年度2次隊

愛知県出身。JAあいち経済連に38年勤務。営農、畜産の事業部で、農家の生産活動を支援。60歳で定年退職後、再雇用されていたが、海外でボランティア活動をしたいという10年来の思いを実現するため、シニア海外協力隊に応募した。

単独で一から集めたデータを農業振興につなげてほしい

Q 要請内容は?

子どもたちと野菜づくり

近くの小学校で子どもたちと一緒に野菜作り

 配属先は、理工系の国立大学にある国立農業・バイオテクノロジー高等研究所。農業振興はガボンの重要課題の一つであり、同研究所では農業・バイオテクノロジーに特化した研究と農業分野の人材育成を行っていますが、研究のベースとなる統計データの蓄積ができていません。要請内容は、付属農場や近隣農家を回り、農業生産向上を目的とした統計データの作成支援を行うというものでした。しかし、現実にはデータを収集する動きは見られず、そのことを要請されることはありませんでした。そこで、職種とはやや異なりますが、自分ができる活動のなかでデータ収集を試みることにしました。

Q 主な活動は?

 農業は気象条件により生産性が左右されるため、まずは大学内に最高最低温度計と雨量計を設置し、年間を通じて気温と降水量を計測することにしました。一時帰国の際には同僚に協力を依頼し、365日のデータを記録しました。次に、ガボンで食べられている野菜について、株と株の間の広さの違いが生産性にどれほど影響を与えるのか、生育調査と収量調査を実施しました。また、農業生産性を高めるための資材としてコンポスト(※)づくりを実施、その手順についても参考にしてもらうよう視覚化しました。現地では野菜が十分に取られていなかったため、市内の小学校を訪問し、健康のために野菜を取ることの重要性を伝えるとともに、一緒に野菜栽培もしました。

Q 配属先からのアプローチは?

 ほとんどありませんでした。唯一、カウンターパート(以下、CP)である学部長から、任期途中にコメを作ってほしいと言われました。ガボンで食べられているコメのほとんどが輸入米だったため、国産のコメを作りたいという思いがあったようです。しかしながら、私もコメ栽培の経験はないので、ネットで栽培方法を調べながら、畑を開墾し陸稲を栽培しました。こちらも、種まきから収穫、脱穀までを写真に記録し、生育・収量調査を行いました。

Q 活動はどうでしたか?

 CPや同僚の教師たちは、授業や卒論の指導などで私の活動に同行できる状態ではありませんでした。私が集めたデータはすべて同僚に提供して帰国しました。今後、そのデータを裏づけにして、野菜やコメの栽培に生かしてくれることを期待しています。

※コンポスト…落ち葉や生ごみなどを、微生物の働きを活用して分解し、堆肥を作ること

Text=油科真弓 写真提供=鈴木博俊さん

知られざるストーリー