先輩隊員のシューカツ記

【今月の先輩】就職先 - 株式会社姫路ヴィクトリーナ

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

協力隊で培ったフットワークと行動力を生かせる仕事に

情野弘一さん
情野弘一さん
グアテマラ/バレーボール/2018年度1次隊・大阪府出身

就職先:株式会社姫路ヴィクトリーナ   マーケティング営業部

事業概要:プロバレーボールチームの運営、アスリートのマネジメント

情野弘一さんの略歴

  • ▶1995年 大阪府生まれ
  • ▶2018年3月 大学卒業
  • ▶2018年6月 青年海外協力隊員としてグアテマラに赴任
  • ▶2020年3月 新型コロナウイルス感染症拡大のため緊急帰国
  • ▶2020年6月 任期終了
  • ▶2021年4月 株式会社姫路ヴィクトリーナ入社 マーケティング営業部に所属

 中学から大学までバレーボールに熱中してきた情野さんは、大学を卒業してすぐに、バレーボール隊員として協力隊に参加した。赴任先のグアテマラはサッカーやバスケットボールに人気が集まり、バレーボールの普及は進んでいなかった。配属先のバレーボール協会も、選手の獲得に苦労していた。

 スポーツ隊員による普及活動は、学校を巡回し子どもたちに競技を教えるというのが一般的なやり方だ。情野さんも最初のうちは学校を巡回していたが、子どもたちは集まらない。そこで行ったのが、SNSを使った広報活動。現地では珍しい日本人指導者であることを強みにバレーボール教室を宣伝し参加者を募集、そこから選手を選抜することにした。SNSで協会の公式アカウントを作り、有料の自動広告機能を設定し、参加者募集の広告を掲載。参加費を徴収することで、広告費と教室のスタッフへの給料を支払った。

「協力隊では例のないやり方でしたが、選手がいなければ活動ができません。選手を増やすために、やれることをすべてやろうと思いました」

 その行動力は、就職活動にも生かされている。バレーボールのプロクラブチームであるヴィクトリーナ姫路の求人情報を見つけたとき、情野さんは、全日本ユースで指導をしているバレーボール隊員のOVに連絡を取った。もし会社に知り合いがいたら、紹介してほしいと頼むためだ。

「任期中、ボールの調達などで相談に乗ってもらい、帰国後もお世話になっていた先輩です。バレーボールの世界では知られた方なので、ダメ元でお願いしてみました。そうしたら、球団のGM(ゼネラルマネージャー)につないでくださったんです」

 バレーボール指導者から営業マンへ、情野さんは姫路ヴィクトリーナで新たなスタートを切った。

「協力隊で培った行動力と、人を巻き込む力を武器に、突き進んでいます」

1. 協力隊時代 2018年6月~

バレーボール教室

SNSでの宣伝効果が発揮されたバレーボール教室

要請内容は、配属先のバレーボール協会で、小学生、中学生、高校生の選手の指導と、指導者の養成、協会運営の改善を行うこと。選手を集めるため、SNSを使いバレーボール教室への参加者を募集し、集まった子どもたちのなかから芽の出そうな生徒を選手として引き抜き、指導にあたりました。また、大会を通してバレーボール連盟の委員と知り合いました。彼はかつて海外協力隊の陸上隊員から指導を受けた経験があり、私の活動にも非常に興味を持ってくれました。連盟から要請を受け、任期後半は首都にも出張し、代表選手のサポートや首都の選抜チーム、指導者の技術指導にも取り組みました。

2. 帰国~就職先探し 2020年6月

学生時代からスポーツ関連か国際協力に関わる仕事に就きたいと思っていました。JICAにも興味はありましたが、帰国と就職活動のタイミングが合わず、アルバイトをしながら希望に合いそうな企業を受けることにしました。転職サイトで気になる企業を見つけると、JICA関西の青年海外協力隊相談役の方に、その企業で自分が思っているような仕事ができるのか相談に乗っていただいたり、JICA関西が開催しているオンラインの企業交流会にも参加したりしました。

▶「PARTNER」「マイナビ」「リクナビ」

“スポーツ”“バレーボール”“国際協力”などのキーワードで検索すると、たくさんの企業がヒットしてしまうので、具体的に気になる企業名や語学(スペイン語)をキーワードに検索。

3. 協力隊OVに連絡 2020年10月

姫路ヴィクトリーナの求人にエントリーする前に、派遣前訓練の講演会で知り合い、今は味の素ナショナルトレーニングセンターでコーチをしている、バレーボール隊員のOVに連絡。プロスポーツのビジネスがどのようなものか知るため、同社に知り合いがいたら紹介してもらえないかとお願いしたところ、ゼネラルマネージャーにつなげてくださり、履歴書・職務経歴書を送ることになりました。

4. 書類提出 11月

提出書類 ▶履歴書・職務経歴書

自己PRでは、協力隊の体験を絡ませて、会社が求める人材に当てはまることをアピールしました。例えば、募集していたのは営業職だったので、SNSを活用してゼロからお金や人を集めたことを、具体的な数字を挙げて書きました。大学卒業後、すぐに協力隊に参加している私には職務経歴はありませんが、協力隊で実践してきたことには自信がありました。そのため、協力隊で2年間しっかり活動したことを伝えるように心がけました。

5. 面接 12月

書類を郵送してから1~2週間後、書類が届いているのか確認のための電話をしたところ、球団社長から面談しようと声をかけていただきました。面談で印象に残っているのは、「企業や組織の中で、どういうタイプか」という質問。私は、トップに立つ人間を陰で支えて、組織を回していくタイプだと思っていると答えました。
社長とはその後、3回面談をし、内定となりました。

2021年1月内定、4月1日入社

現在の仕事

2021-22シーズン初勝利のシーン

2021-22シーズン初勝利のシーン(ヴィクトリーナ姫路広報写真)

所属はマーケティング営業部です。ヴィクトリーナ姫路には、活動を応援してくれる協賛・後援企業があります。現在は、後援企業の担当者として、活動の報告や支援継続のお願い、企業への提案などを行っています。入社半年とはいえ、職務経験のある中途採用で入社しているので、任される企業の数も多く責任を感じています。スポーツは、日常生活に必要不可欠なものではないので、その難しさも日々感じています。しかしながら、私の強みは前に進んで行くフットワークと行動力。それは、協力隊の経験を通じて得た力だと思っています。

後輩へメッセージ

就職活動ではテクニックも必要ですが、周りにいる人に頼ることも大事。協力隊には同じような経験を持つスポーツ隊員のOVがたくさんいるので、遠慮せずに相談してみるのもいいでしょう。私自身、OVに助けていただいた一人なので、後輩から相談を受ければ喜んで協力したいと思っています。
やるべきことをやって、いろんな人に頼って、続けていくことで、きっと結果は出るはずです。

Text =油科真弓 写真提供= 情野弘一さん/株式会社姫路ヴィクトリーナ

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