地域住民への保健指導、健康管理を通じて、病気を予防し健康的な生活をサポートする。
※人数は2022年1月末現在。
茨城県出身。看護師だった母の影響を受け看護師を目指す。看護大学を卒業し、感染症課病棟に3年間勤務したのち、協力隊に参加。帰国後は大学院に進学し、公衆衛生学を専攻。現在は特別区(東京23区)の保健師として母子保健の相談を担当している。
要請内容は、性感染症の治療や避妊薬の提供、妊婦診察などを行っているクリニックでの農村巡回診療、カルテシステム運営などの補助、患者教育です。しかし、派遣を要請した責任者が交代したため、配属先は私が何のために来たのか、わかっていない状況でした。バヌアツに「保健師」という職種が存在しないこともあり、私を看護師として捉えていたようです。最初はそうした現場のニーズがわからず、職種とのギャップに悩みました。
物品整理をしながら、クリニックの様子を観察しました。看護師は2人だけで人手が足りないのは明らかだったので、薬や医療機器の整理をしたり、診察の補助に入ったりと、看護師の補助に徹しました。そうするうちに、「こうしたほうがよいのでは」と思う部分も見えてきました。そこで、看護師に提案して、受付カードを導入して受付から診察、会計までの流れをつくったり、次回の診察予約を把握するための予約表を作成しました。
避妊の方法や月経の仕組みについて、手作りボードを使い啓発活動
看護師の補助をしながら、患者と積極的に話し、健康管理について、何を知っていて、何を知らないのか、理解することに努めました。予防医療のニーズを知るためには、患者の生活を知ることが大事だからです。そして、来院した患者さんに待ち時間を利用した啓発活動を行うことにしました。バヌアツでは性教育がほとんど行われていないため、避妊の方法や月経の仕組み、妊婦が気をつけることなどをリーフレットにして配布しました。また、肥満も問題となっていたので、食べ物に糖分や塩分、脂質がどのくらい含まれているかをポスターにして掲示しました。文字だけでは読まれないと聞き、イラストだけで理解できるように工夫しました。言葉だけで説明するよりもわかりやすく、次第に同僚も活用してくれるようになりました。
多様な価値観を伝えることも協力隊活動の一つと考えたからです。バヌアツでの協力隊経験を通じて、自分の価値観の変化を感じました。そのことを、バヌアツのことを知らない日本の方や、国際協力に関わる人たちにも知ってもらいたいと思い、活動後半に、恋愛や出産、子育てなど、バヌアツの性事情を、任地からSNSで週1回発信し、帰国後に冊子にまとめました。
Text=油科真弓 写真提供=香田美波さん