[特集] 令和版   隊員活動のトラブル脱出法
着任期 〜 適応期編

1996年10月号の丹羽さんの体験記より※部分抜粋

任期序盤のまとめ

   (前文略)

   インドネシア側の認識としては、JICA専門家はある程度の資金が必要なプロジェクトや技術協力を行い、ジュニア・エキスパートつまり協力隊は地方主要都市で、あまり資金を必要としない、人に対する継続的な技術協力を行うという感じに受け止めていると思います。

   インドネシアは石油や資源に恵まれた国で、他の国に比べると経済的に豊かです。また外国の資本を導入して、積極的に地方の開発を行っています。そこであなたがインドネシアで生活してみると、「この国に本当に協力が必要だろうか?」という疑問が出てくると思います。

   (中略)

   あなたの職場は、あなたが考えているほどあなたを必要とはしていないかもしれません。あなたがいなくても仕事は回って行くからです。

   そんなクールな対応にもめげず、あなたは職場から「人・物・金」を引き出さなければ協力活動はできません。だからインドネシアの場合、実際的にも「ボランティア活動」ではなく、評価される活動を行うためのJICAジュニア・エキスパートでなければならない立場にあるのかもしれません。


協力隊の必要性を考える

編集室:上記の文章は、実は丹羽さんの文章の冒頭にあたる部分ですが、大きなテーマでもあるので前半の最後に皆さんから意見をいただきたいと思います。

前原:上記枠内にある「『この国に本当に協力が必要だろうか?』という疑問が出てくると思います」の部分、少なくとも私の環境教育職種には当てはまらないと思います。環境問題は、どの国も何かしらの課題を抱えているはずですから。活動中も協力隊の活動が必要がないとは思いませんでした。

下松:ブラジルの日系社会の場合は地域差があり、日本文化への思いが薄れている地域に着任した隊員のなかには、「やることがない」「なんで来たんだろう」と言っている人もいました。

桑山:ボツワナ赴任中にほかの隊員ともよく話をしていたのは、ボツワナはほかのアフリカの国々と比べるとダイヤモンド産出国であったりと経済的に恵まれており、お金を出して他国から指導者を呼ぶことができるのでボランティアが入らなくてもいいのでは、といったことです。

前原:国によってはそういったこともあるかもしれませんね。ほか、丹羽さんの記事でもう一つ疑問に思ったのが、「あなたは職場から『人・物・金』を引き出さなければ協力活動はできません」というところ。確かにスリランカのゴミの課題を解決していくためには、人・物・金が必要でしたが、職種によるようにも感じました。

酒井:「金」という意味では、私は前任者が高額な機材を購入していたので、期待されていたとは思います。

下松:教員の場合、確かに授業をする分にはお金はいらないですね。ただ私は劇やミュージカルの指導も任されていたので、大道具や小道具を作るために物が必要でした。現地には日本のようなクラフトに特化した道具やマテリアルがないので、周囲にあるものを使って工夫するしかありませんでした。

桑山:丹羽さんの記事は協力隊員への助言として書かれているので、全体的に隊員に対して厳しめですが、隊員たちは「よその国の人たちのためになりたい」と手を挙げて派遣されますから、どんな形であれ貢献できれば、私はそれでいいと思います。一人の隊員の任期は2年間でも、2代、3代と続いて、それぞれの活動が任地のためになっていれば、お金を持ってこれなくても、それでよしとするべきだと思います。

Text=池田純子

知られざるストーリー