先輩隊員のシューカツ記

【今月の先輩】就職先 - サラヤ株式会社

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

思い描いたキャリア形成をこの会社なら実現できると思いました

梅澤志穂さん
梅澤志穂さん(ニジェール/看護師/2010年度2次隊、ウガンダ/看護師/2011年度8次隊・長野県出身)

就職先:サラヤ株式会社
事業概要:家庭用および業務用洗浄剤・消毒剤・うがい薬などの衛生用品と薬液供給機器などの開発・製造・販売、食品衛生・環境衛生のコンサルティング、食品などの開発・製造・販売

梅澤志穂さんの略歴

  • ▶1984年        長野県生まれ
  • ▶2007年4月   大学卒業後、国立国際医療センター(現国立国際医療研究センター)に就職。
                          集中治療室に看護師として勤務
  • ▶2010年10月   青年海外協力隊として赴任(ニジェール・ウガンダ)
  • ▶2012年10月   帰国。青年海外協力協会に看護師アルバイトとして勤務
  • ▶2013年6月   サラヤ株式会社に入社 海外事業部(現海外事業本部)営業部所属

「大学を卒業したら、まずはボランティアとして海外に行き、次に大学院で国際保健医療を勉強し、ゆくゆくは国際機関などでマクロな視野で国際保健の仕事に携わりたい」

   学生時代にキャリア形成をそう描いていた梅澤さん。大学卒業後に看護師として集中治療室に勤務することを選んだのも、協力隊に参加しやすいと考えたからだという。帰国後は、次の目標に向けて大学院留学の準備を進めていた。しかし、次に梅澤さんが選んだのは、大学院ではなく民間企業への就職だった。

ニジェールの子どもと自宅で遊ぶ梅澤さん

ニジェールの子どもと自宅で遊ぶ梅澤さん

   サラヤ株式会社との出会いは、2番目の派遣国のウガンダだった。同社はアルコール手指消毒剤の生産・販売に向け、JICAのBOPビジネス連携促進協力準備調査(※)を活用した調査を進めていた。調査内容は、病院にアルコール手指消毒剤を配布し使用実態を調べるというもので、その調査に隊員が協力していた。そして、梅澤さんの配属先も調査の対象だった。

「ウガンダの病院では、清潔な水もせっけんも不足していますが、アルコール手指消毒剤があれば手指衛生を保てます。手指を消毒する回数が増えた調査結果から、消毒剤導入の効果は明らかでした」

   帰国後、梅澤さんはこの結果を日本環境感染学会で発表し、それが縁で、サラヤに入社することになった。

「世界で事業展開しているサラヤであれば、マクロの視野で国際保健の仕事に関われると思いました。大学院には、いつでも留学できますから」

   実は、入社3年後に1年間休職して大学院に留学し、国際保健医療を勉強するという目標も実現している。

「思い描いていたキャリア形成をほぼ実現できたのは、手法にこだわらず柔軟に考えたことがよかったのだと思います。今は次の目標をどこに設定しようか、考えているところです」

1.協力隊時代   2010年10月~

ウガンダのカウンターパートと打ち合わせ

ウガンダのカウンターパートと打ち合わせ

最初の派遣国・ニジェールでは、配属先の保健局の傘下にある保健センターを訪問し、予防接種や幼児健診の手伝いをしながら、これからの活動方針を考えていました。しかし、2011年1月に治安悪化のため国内の全隊員の撤退が決まり、わずか半年で帰国となりました。帰国後は、JICAが運営する東日本大震災の避難所でボランティアをしながら、次の派遣の提示を待っていました。

そして11年5月にウガンダに赴任し、同国の看護師登録のための研修を受けたのち、ワキソ県のエンテベ病院に配属されました。配属先では、医療サービスの質向上のため、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動の導入と推進、院内感染対策に取り組むと共に、JICAのBOPビジネス連携促進協力準備調査としてサラヤ株式会社が同病院で実施した調査にも協力しました。ウガンダでエボラ出血熱のアウトブレイクが発生したときには、アルコール手指消毒剤が非常に役に立ち、感染対策の重要性を改めて実感することになりました。

2.帰国~大学院留学の準備   2012年10月~

青年海外協力協会で看護師としてアルバイトをしながら、英語学校に通うなど、大学院留学のための準備をしていました。その間、協力隊での経験を形として残したいと思い、調査で得たアルコール手指消毒剤による感染対策と手指衛生行動の変化を、日本環境感染学会で発表しました。その発表会に、ウガンダの活動を通じて知り会ったサラヤの担当者が出席していたことから、同社でも同じ内容を発表することになり、そこで同社への入社の誘いを受けました。

3.書類提出

提出書類 ▶履歴書、志望動機書

志望動機には、医療現場や協力隊での経験を生かして、海外のビジネスに挑戦したいと思っていることを書きました。特に、公的機関ではなく民間企業を選んだ理由として、途上国でビジネスを進めることで、援助を待つだけではなく、主体的に仕事をし、生計を立てる人たちを増やす一翼を担いたいと書いたと記憶しています。

4.面接

ほぼ入社は確定していましたが、2回の面接がありました。入社後、最初の1年間は、海外事業本部からメディカル事業本部に出向し、国内向けの事業に携わることが決まっていたため、1回目の面接では同事業本部の本部長、副本部長と会い、臨床経験や協力隊での活動を伝えると共に、同事業部で働く意思があるのかを確認されました。2回目の面接は、海外事業本部長、副本部長と、顔合わせとなりました。

入社   2013年6月

現在の仕事

海外の展示会で、サラヤグローバルメンバーと

海外の展示会で、サラヤグローバルメンバーと

海外事業本部で医療衛生を担当しています。海外拠点が30社以上あるので、その営業支援や商品開発、プロジェクトによっては現地スタッフに感染対策の教育を行うこともあります。対象は、途上国だけでなく、欧米やアジアなど全世界です。さらに、海外の展示会や国際学会への出展、セミナーの開催などにも携わっています。新型コロナウイルス感染症の流行拡大では、アルコール手指消毒剤など、感染対策用品を必要とする人が世界中にいることを改めて確認しました。これからも、必要とする人たちに、必要な商品を、可能な限り提供していけるよう、取り組んでいきたいと思っています。

後輩へメッセージ

就職活動で協力隊での経験を伝えたいなら、目に見える形で実績を伝えたほうが説得力はあります。私は学会で発表するというやり方を選びましたが、ブログや雑誌への投稿などでもよいと思います。私の場合、学会の発表を会社の担当者が聞いていたので運もよかったのですが、その運を引き寄せるのも自分の努力だと思っています。 “こんな仕事をしたい”という大きな夢を持ち、諦めずにいたら、そこまでの道のりは違っても夢はかなえられると思います。

※民間連携により、日本企業のBOPビジネス(貧困層が抱える課題の解決に貢献するビジネス)を支援。
2017年に「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」に改称。

Text=油科真弓 写真提供=梅澤志穂さん

知られざるストーリー