帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。
就職先:株式会社biima
事業概要:スクール事業(総合キッズスポーツスクール「biima sports(ビーマ・スポーツ) 」)、保育事業(21世紀型教育の総合スポーツ保育園「biima school(ビーマ・スクール) 」)のほか、コンサルティング事業(bbc)、ITクリエイティブ事業
日本体育大学で、体育の教員免許取得を目指していた岡本光貴さんは、3年生のとき、大学とJICAが連携する短期ボランティアに体育隊員として参加。カンボジアで約1カ月、国立体育教員養成校の学生に体育の指導をした。そして、現場により深く関わりたいと、卒業後、新卒で長期派遣として再び同校に赴任した。
のちに就職する株式会社biimaを知ったのは、大学卒業間近のこと。同社がスポーツ指導者を募集しているが、興味はないかと友人から声をかけられたのがきっかけだった。すでに協力隊への参加が決まっていたのでそのときは断ったが、会社のコンセプトに魅力を感じたという。
「特に興味を持ったのが、運動能力の育成とあわせて、コミュニケーションや課題解決能力などを高める非認知能力開発プログラムです。言葉がわからないカンボジアで活動した経験から、社会ではこうしたスキルこそが重要だと感じたからです」
任期が終わったらこの会社で働きたいと強く思った岡本さんは、一時帰国の際には、同社でアルバイトをしている大学の後輩に会社の様子を聞いたり、後輩を通じて事業部長と会う機会を設けたりと、積極的にアプローチをした。それが功を奏して、任地からのオンラインによる説明会や面談が実現し、採用となった。
今、岡本さんが考えているのは、子どもの教育に、親をいかに巻き込むかということ。
「教育の質は家庭環境によって大きく変わります。学校の勉強も習い事も、子どもの一番近くにいるのは親なので、親が家庭において上手に子どもを導けるように、環境を整えられないか。将来的には、そのための場づくりをすることが目標です。それはカフェなのか、体育館なのか、あるいはまちづくりなのか、答えはまだ見えていませんが、環境とコンテンツの両軸で実現したいと思っています」
カンボジア各地から体育教師を集め研修会を実施
配属先は、カンボジアで唯一、体育教員の養成を目的とした国立体育教員養成校です。主な活動内容は、授業種目の指導法の紹介や実技指導の支援を通して、教員の指導力アップ、学生への直接的な指導を行うことでした。
活動2年目の2018年11月頃から、養成校を2年制学校から4年制大学に移行するプロジェクトが海外のNGO主導でスタートしたため、NGOとも連携しながらの活動となりました。2年間の活動を通じて、体育の授業を楽しく展開していくという視点を現場の教員に共有してほしいという思いが強くなり、帰国直前に、隊員仲間と教員のための3日間の研修会を企画・実施し、カンボジア中から約20人の教員が参加してくれました。
任期中に会社説明会があることを知りました。どうしても参加したいと思い、当時はまだオンラインでのセミナーは一般的ではありませんでしたが、事業部長にお願いし、オンラインでカンボジアから参加させてもらいました。
提出書類 ▶履歴書・エントリーシート
エントリーシートの志望動機には、「均一的な学校教育だけではどうしても取り残されてしまう子どもたちに、民間企業の立場からアプローチし、家庭の学習環境を整えるサポートをしたい」と書いたように記憶しています。
計3回、オンラインでの面談を行いました。1回目はスポーツ事業部のチームリーダー、2回目は事業部長、3回目は社長と。すべて1対1の面談でした。協力隊の活動内容や、その経験を会社でどう生かしたいのかなどを話しましたが、あまり深くは聞かれなかったという印象です。会社としてはオンライン面接が初めてだったこともあり、その時点では、合否判定を保留にしたいと伝えられました。
実際に私が現場で働く様子を見たいということで、帰国1週間後から1カ月、業務委託としてコーチ業務や会員とのやりとりなどを行いました。
biima sports の活動として、学校の先生向けの研修会を開催
「biima sports」は、現在30都道府県に150拠点を展開していますが、多くは地元の企業とのフランチャイズ契約によるものです。私の業務の一つは、その企業のフォローアップとして、コーチの育成、レッスン動画のチェックなどを行うことです。また、全国47都道府県に「biima sports」のコンテンツを提供できるよう、新規開拓のための営業活動も行っています。個人的な夢ですが、新型コロナウイルス感染症の流行が収束したら、海外への事業展開もしてみたいと思っています。
私は協力隊に参加する前から、帰国後に就職したいと思った会社があり、任期中から計画的に就職活動を行っていました。そのため、帰国後に就職活動を考えている後輩の皆さんにはあまり参考にならないかもしれません。ただ、隊員時代も帰国後も、子どもの教育に関わりたいという軸は一貫していました。自分の軸を持ち、そこに当てはまる会社選びをしていけば、やりたいこと、成し遂げたいことにつながる仕事が見つかると思います。
Text=油科真弓 写真提供=岡本光貴さん