[特集] 活動時のお悩み解消
課題別支援LinkedInグループ徹底解剖

より大きなネットワークができるオンライン座談会

課題別支援LinkedInグループのスピンオフ企画として、リンクトインに参加していない人も含めたオンライン座談会が開催されている。どんなテーマで行われているのか、三つのグループの事例を紹介する。

CASE1 青少年活動×座談会

テーマは「子どもの人権」 葛藤をシェアし、原点に立ち返る

「青少年活動」職種のグループでは2022年3月、「青少年活動と子どもの人権」をテーマにオンライン座談会が開催され、主にケニアに派遣中の現役隊員9人とOV4人を含む16人が参加した。

「体罰は必要か?」 をテーマに意見交換

オンライン座談会の様子

オンライン座談会の様子

   土曜日の日本時間午後5時。オンライン上で開催された座談会では、「青少年活動と子どもの人権」がテーマとなった。このテーマを提案したのは、2021年からケニアの児童拘置所に配属されている現役隊員だ。活動のなかで、現地の職員が棒を使って子どもに体罰をする様子に出くわすことが何度となくあった。子どもの人権侵害にあたるのではないかと感じたが、日本とケニアの文化の相違を理由に子どもへの体罰を正当化されてしまうことに葛藤を抱えていた。これを聞いたほかの派遣中の隊員たちからも、自身の配属先でしつけと称した体罰の事例があると報告があった。

   座談会では、過去に同じような施設で働いた経験のあるOVが、理解のある職員を巻き込んで組織全体で体罰を減らした事例を伝えたり、職員に対する研修会を実施したこと、また意見が異なる人との向き合い方などについて自身の経験を交えて伝えた。

ケニア・ジョモ・ケニヤッタ農工大学を横切る地元の小学生
(写真提供:久野真一/JICA)

ケニア・ジョモ・ケニヤッタ農工大学を横切る地元の小学生 (写真提供:久野真一/JICA)

   こうした現役隊員やOVの話を受け、青少年活動職種の技術顧問を務める藤岡孝志さんは、「職員と隊員が一緒になって子どもたちと関わり、体罰がなくても子どもたちの行動が変わっていく姿勢を見せていくことが大切。目の前の活動現場においてどこが変化しうるかを見極め、子ども中心の考え方を根幹に据えながら周囲の幸せを考えることが重要です」と語った。

   協力隊の職種のなかでも幅広い領域を扱う「青少年活動」は、家庭や学校教育では対応が難しい内容が活動の対象となることが多い。座談会は最終的に「青少年活動のアイデンティティとは何か」という深い話題にまで広がっていき、参加した隊員からは「オンライン座談会に参加してよかった」「コロナ禍でほかの隊員と話す機会が少なく、各地で活動している隊員と話せて心強いと感じた」「これをきっかけにリンクトインを定期的に活用したい」といったコメントが寄せられた。

座談会は開催日時やテーマの工夫も必要

   この座談会を企画した青年海外協力隊事務局課題業務・選考課の内藤優和さんは、現役隊員に向け、関心のあるテーマを聞くだけでなく、開催日時についても事前にヒアリングを行ったという。

「今回は、オンライン座談会を開催した3月の時点で青少年活動職種の隊員が最も多く派遣されていたケニアの隊員を主な対象にしました。隊員は世界中にいますから、今後は国やテーマを変えた形の開催も模索していこうと考えています。現役隊員の派遣先での悩みの解決につなげていけたらいいですね」

ケニア・カムガ村の小学6年生の授業風景(写真提供:佐藤浩治/JICA)

ケニア・カムガ村の小学6年生の授業風景(写真提供:佐藤浩治/JICA)

   藤岡さんは、「青少年活動の活動地域は学校から少年院や孤児院まで多岐にわたるため、隊員間の情報共有は重要」と話す。同職種ではリンクトイングループが始まったことで、情報発信や相互交流が活発になり、現役隊員も自由に語りやすい場になっている。

「派遣中の隊員の対話は派遣前の隊員研修のブラッシュアップにつながり、OVとの会話は帰国後のキャリアを考えるうえで有意義です。今、日本でも、子どもや若者を尊重しそれぞれの状況に応じたサポートの必要性が叫ばれています。各国・地域の将来を担う青少年の健全育成を目指す職種『青少年活動』の隊員として、常に問題意識を持って、さまざまな課題に取り組んでいただくと嬉しいです」(藤岡さん)

   同グループでは、これからも隊員のニーズに合わせて多様なテーマを取り上げていく予定だ。参加者からもアイデアを募集している。

藤岡孝志
藤岡孝志さん/JICA海外協力隊技術顧問(青少年活動)

多くの隊員はこれまで派遣先の課題に対して一人で向き合わなければならず、強いストレスにさらされてきました。座談会を通じて隊員一人ひとりの声を拾えるようになったことは、隊員にとってもJICAにとっても大きな意味があります。「青少年活動」という職種について自由に語り合いましょう。ぜひ隊員だけでなくOVも参加してたくさんのアイデアを寄せてください

 

座談会に参加したOV

淡路侑太
淡路侑太さん/(ケニア/青少年活動/2019年度1次隊)

人間関係ができていないと活動全体がうまくいかず、負のスパイラルに陥ってしまうことがあります。座談会を通して悩みを分かち合い、気持ちに余裕ができれば、活動が前に進むこともあると思います

                                                                                                      
黒田篤槻
黒田篤槻さん/(ケニア/青少年活動/2017年度3次隊)

隊員が悩みを相談したり情報を共有し合ったりする場として、各地に隊員連絡所(ドミトリー)がありましたが、コロナ禍で多くが閉鎖されています。オンライン座談会はその代替手段としても、とても意義のある取り組みだと思います

                                          

Text=新海美保 写真提供=ご協力いただいた各位

知られざるストーリー