リハビリ職種オンライン座談会は、2022年1月、派遣前・中の隊員9人を含む14人に、JOCVリハビリテーションネットワーク代表の小泉裕一さんも参加して実施した。
「派遣後3カ月ほどすると生活に慣れてくるものの、カウンターパートとの関係に悩み始める人が多いのではないか」。座談会で話題を提供したのは、新型コロナウイルス感染拡大により、任期途中でウズベキスタンからの帰国を余儀なくされた理学療法士の隊員。「2年間で成果を出さなければならない」という焦りから、カウンターパートに意見をして対立した時期があったが、配属先以外に視野を広げ、〝自分が変わる〟を意識したことで、徐々に関係が改善していったと報告した。そして、配属先との関係性に悩む現役隊員に対し、経験談を交えながら同じ目線で活動する基本姿勢に立ち返る大切さも伝えた。
ほかに、言語聴覚士としてマラウイで活動中の隊員は「手話のスピードが早く現地語交じりの会話についていけない」と悩みを共有。あるOVは「専門用語や現地語などの語彙は隊員経験者から事前に情報を入手するとよい。また文字に残しておいてあとで調べたり、現地の人と積極的につながってフォローしてもらうことで改善できることもある」とアドバイスした。
このほか、コロナ禍でのコミュニケーション不足や派遣国での理学療法士の認知度の低さ、2年間で成果を残す難しさなど、参加者それぞれが抱える悩みや葛藤をシェアし、隊員やOV、技術顧問などが有益な情報や励ましの言葉を伝えた。参加した現役隊員は「先輩隊員から具体的な解決方法を教えてもらえた。活動に生かしたい」「同じ職種のつながりができ、モチベーションが向上した」と感想を語った。
リハビリ職種グループのリンクトインでは、JOCVリハビリテーションネットワーク代表の小泉裕一さんをはじめ、OVも積極的に投稿していて参加者もなじみがあるため、座談会は盛り上がりを見せた。ファシリテーター役の小泉さんが隊員の悩みや思いを引き出す役割を果たし、参加者全員が発言した。コメンテーターとしてOVも多方面からアドバイスした。
技術顧問の渡邊雅行さんは、「これまで技術顧問への相談などはメールでしたが、リンクトインのほうが気軽に相談できるのではないでしょうか」と話す。同グループでは、参加者が日本で行ってきた経験や派遣国への思い、趣味や特技などを投稿しながら、参加者間の親密な関係づくりに役立てているという。「患者や利用者の個人情報保護の視点から、業務に関する内容はまだ少ないですが、国際協力の主要なキーワードや日本のリハビリテーション職種に関するトレンドなども発信していきます」。
配属先で戸惑ったこと、経験したことのない疾患や障害、現地の障害者の工夫や施設の行事など、自由に情報共有してください。現在はまだ技術顧問や事務局スタッフからの投稿や返信が多いですが、隊員やOVによる情報交換の場になればと思います
コロナ禍という社会情勢のなかでも、志を高く持ち、工夫して現地の方と関係性を築いている姿に心を打たれました。座談会に参加すれば世界中の同志とつながれます。孤独を感じている人もぜひ参加を
栄養士、家政・生活改善、料理の3職種合同のオンライン座談会が、2022年3月、青年海外協力隊栄養士ネットワークとコラボして実施され、派遣前・中の隊員6人を含む15人が参加した。
3職種合同のオンライン座談会は、かつて栄養士の職種でコスタリカに派遣された隊員の経験談の共有から始まった。地方の診療所に赴任したが、派遣先の理学療法士や連携する予定だった同期の隊員が不在になるなど、要請内容とは異なる状況を前に当初は戸惑った。しかし、プライベートの時間を利用して行った日本料理を紹介する取り組みが、配属先の栄養改善講習会の盛り上がりにつながった。「協力隊は思わぬことから活動の広がりを見せる。何事も楽しんで」と、派遣中の隊員にメッセージを送った。
また、派遣前の隊員や派遣中の隊員から、調理実習をうまく実施する方法やカウンターパートがいないときに協力者を増やすコツなどさまざまな悩みが共有され、OVから「各地域のキーパーソンを見つけて仲良くなるとよい」「協力者は配属先にいるとは限らない」といったアドバイスがあった。参加した隊員は、「先輩隊員の声を聞いて安心した」「これからいろいろな課題に直面すると思うが、支えてくださる人がいるとわかって心強い」「これからも定期的に座談会をやってほしい」といった声が聞かれた。
座談会では、技術顧問の藤掛洋子さんに加え、ファシリテーターとして青年海外協力隊栄養士ネットワーク(以下、栄養士OV会)代表の氏家真梨さんも参加した。「3職種合同で、職種を限定せずに食・栄養を中心とした意見交換ができたことは新鮮でした。国や職種が違っても共通の話題や課題は多く存在するため、今後はテーマを絞り、関連する多様な職種が集まる座談会も面白そうです」。
栄養士OV会では活動中の隊員が困っていたら少しでも役に立ちたいと考え、これまでもさまざまなサポートを行ってきた。そのため、オンライン座談会はOVの経験を現役隊員に役立ててもらうためにも、有意義だったようだ。「OV会では、その職種の支援だけにとどまらず、専門性を生かした隊員との関わりを大切にしていきたいと考えています。コロナ禍で制約が続くなか、再び隊員派遣が始まり、OV会としても新たなスタートを切った気持ちです」と笑顔を見せた。
一方、藤掛さんは、「座談会を通じてこれまでなかなかつながることのできなかった隊員やOVが集い、意見を交わし、リンクトインを通して継続的な関係ができています。現地からの情報をタイムリーに得られるようになったことは大きな意義があります。今後もSNSを通して、新しい国際協力のあり方を模索すると共に、家政系・栄養系の隊員たちと活発な意見交換をしたい」と語った。
日本からの情報発信だけでなく現地の情報をタイムリーに得られるようになりました。リンクトインは動画配信も可能で、多くの情報のやりとりが可能です。活発に意見を交換し、新しい国際協力のあり方を模索しましょう
栄養士OV会として、専門性を生かして少しでも隊員の皆さんの役に立ちたいです。OVの方からの連絡もお待ちしています。世界各地の隊員とつながるには、時差の調整も課題だと思います
※青年海外協力隊栄養士ネットワークとは…元栄養士隊員を中心としたOV会。帰国隊員の活動報告会、国際協力における栄養分野の意見交換や情報交流、調査・研究や学会での発表などを実施。OVとしての経験を現役隊員に伝える活動にも力を入れる。
(問い合わせ)▶ jocvnut.net@gmail.com
Text=新海美保 写真提供=ご協力いただいた各位