帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。
就職先:アクセンチュア株式会社
事業概要:戦略策定からテクノロジーを活用したオペレーションの実行まで一貫したサービスを提供し、特にデジタル、クラウドおよびセキュリティ領域において卓越した能力で世界をリードするプロフェッショナルサービス企業
佐々木淳さんがJICA海外協力隊に応募したのは38歳のとき。当時、青年海外協力隊に応募できる年齢が39歳まで(※1)と知り、16年間勤務した会社を退社し、協力隊に参加した。そして39歳のとき、ジンバブエの教員養成校に、コンピュータ技術隊員として赴任した。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、赴任から4カ月後に一時帰国となった。1年後に再赴任するものの、わずか3カ月後にロックダウンで学校は閉鎖、佐々木さんも首都退避となるなど、活動は何度も中断し、計画も変更となった。
帰国後の進路について考え始めたのは、首都に退避していた頃。
「選択肢は、ビジネスと国際協力の二つ。どちらに進むとしても、自分を生かせるのはIT分野です。そこで、IT力をより高められる会社に的を絞り、就職活動を始めました」
就職先に決めたのは、外資系のコンサルティング企業であるアクセンチュア株式会社。IT力や英語力の強化ができることはもちろんだが、北海道での勤務を提案されたことが決め手だったという。
「それまで、ITの仕事をするなら東京しかないと思っていましたが、東京と同じ仕事を地方でもできるなら面白いと思いました」
就職し北海道在住となったが、社内でのやりとりは、メールやチャットを通じて、英語で行うことがほとんどだ。
「以前の自分なら、間違いが怖くて英文でメールを送ることを躊躇(ちゅうちょ)していたと思いますが、今は平気です。ジンバブエでの経験を通じて、英語力というよりも、恐れずに英語を使う力が身についたと感じています」
実は、JICAが進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)(※2)推進プロジェクトを同社が受託するなど、両者の関わりは深い。
「いつか、JICAのプロジェクトに関わり、国際協力にも貢献できたらと思っています」
都市部の学校のITインターン生たちと
同僚とICTルームにて
ジンバブエではICT教育(※3)が小学校のカリキュラムに加わったことから、配属先である教員養成校でもICTコースが必須科目となっています。しかし、1000人を超える生徒に対して、教員はICT専任と、数学を兼任する2人のみ。約100台あるコンピュータの保守管理も2人が行っていました。そこで、コンピュータの保守管理や校内LANの維持管理などを通じ、ICTコースの授業運営をサポートするというのが、私への要請内容でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により一時帰国や首都退避をせざるを得なくなり、その間は、首都や都市部の学校を訪問し、学校のICT環境の改善に取り組むことにしました。すべての学校に共通していたのは、ICT専門家がおらず、数学の教員が授業を行いながらパソコンのメンテナンスをしているということ。ICT専門家の雇用は私が解決できる問題ではありませんが、学校を所轄している高等教育庁にプレゼンする機会を得て、現場に専門家を配属することの重要性を訴えることができました。その後、実際に担当者の雇用に向けて動き始めていると聞いたので、自分の活動の成果が出てきていると感じています。
ロックダウンで首都退避となったとき、通信環境がよかったことと、時間に余裕ができたこともあり、就職活動を始めることを決めました。具体的には、海外在住でも登録できる転職エージェントのサイトに、履歴書、自己PR、希望する仕事など、自分の情報をアップロードし、企業からの求人オファーを待つというやり方です。前職では、一つの業界、一つのシステムに16年間携わってきたので、より幅広いシステムの導入を経験し、IT力を高めたいと思い、ITコンサルタントを希望しました。
約10社を紹介していただき、そのうちの5社と、オンラインによる面接を行いました。のちに就職することになるアクセンチュアとは、1次面接でアクセンチュア・イノベーションセンター北海道のシニア・マネージャーと、2次面接でセンター長と面談しました。聞かれたことは、志望動機や職歴など、履歴書に書いた内容が中心でした。
5社と面接をし、最初に内定をもらったアクセンチュアへの就職を決めました。アクセンチュアは世界中に展開しているグローバル企業で、IT力はもちろん、英語力もアップできると思ったのが、就職を決めた理由です。ジンバブエのロックダウンがいつ終わるかわからない状況だったため、首都退避の間に決めておきたかったという思いもありました。
アクセンチュア・イノベーションセンター北海道にて
企業の業務を代行するアウトソーシングプロジェクトに、システム構築の担当として携わっています。顧客は日本の企業ですが、システム構築は海外にあるアクセンチュアの開発拠点で行っているため、その橋渡しをするのが私の仕事です。アクセンチュアでは、新型コロナウイルスの感染拡大以前から、在宅によるリモート勤務を導入していて、配属先はアクセンチュア・イノベーションセンター北海道ですが、仕事は在宅で行っています。北海道にいながら、世界各国の社員たちとメールやチャットでコミュニケーションを取り、業務を進めています。
協力隊時代、企画調査員[ボランティア事業]の方に「アフリカ熱が高いうちに将来を決めないほうがいい」と言われたことが印象に残っています。協力隊員としてアフリカで活動をすると、活動が終わる頃にはアフリカに貢献したいという熱い思いが湧き上がってきます。しかし、いったん冷静になり、2年間の活動で得たものと日本で培ってきたものを見定めて、今後どうすべきか、俯瞰的に見たほうがいいと思います。私自身は任期中に就職活動をしましたが、1年間の一時帰国やロックダウンでの首都退避があったため、冷静になる時間をつくることができました。同じ言葉を、後輩の皆さんにも贈ります。
(※1)現在は45歳までになっています。
(※2)DX…デジタル技術を活用することで、社会や生活を良い方向に変化させること。
(※3)ICT教育…パソコンや電子黒板、インターネットなどの情報通信技術を活用した教育。
Text=油科真弓 写真提供=佐々木 淳さん