[特集] 振り返りにも大助かり  活動記録の残し方

動画編

「三つのとるクセ」で、ユーチューブ動画を38本制作

竹谷郷一さん
竹谷郷一さん
ミクロネシア/体育/ 2012年度3次隊、ザンビア/体育/ 2017年度1次隊・神奈川県出身

ザンビアでは教員養成校に配属され、水泳の授業と実技の授業改善、運動会の開催を行う。2012年に派遣されたミクロネシアでは静止画の撮影のみだったが、ザンビアではデジタルカメラで動画を撮影し、YouTubeを開設。現在サッカーと医療でアフリカ地域支援を行うNPO Pass onに所属し、ザンビア在住。

   ザンビアに体育隊員として派遣され、現地の生活や学校の様子などをYou Tubeに投稿してきました。好きなYouTubeを視聴しながら撮影の仕方を研究し、ほかの隊員を紹介する動画も含めて、全部で38本の動画をアップしました。そこで私なりの撮影のコツをお伝えします。

   まず、自分が住んでいる町を紹介するなど、自分で自分を撮影する場合。自撮り棒を持ち、テレビのリポーターさながらに案内していくと、視聴者にこちらが撮影した動画ということが伝わり、リアル感が増します。リポートするときには、レンズの奥に視聴者がいることを意識して、レンズをしっかりと見て話すことを意識しましょう。私の場合、自分の動画を撮るときにはそのときに感じたことを大切にしたいため、台本は作らずに話す内容をざっくりと頭のなかでまとめる程度にとどめて、ぶっつけ本番で撮影しました。

竹谷さんのユーチューブチャンネル「Go Takeya」のトップページ

竹谷さんのユーチューブチャンネル「Go Takeya」のトップページ

   一方、ほかの隊員を撮影する場合は、まずこういうシーンから始めて、次のシーンはとイメージを膨らませ、構成を固めてから撮影しました。撮る相手にも、「このシーンから撮りたいから、こうしてほしい」と細かく依頼をしたり、やり直しもして撮りました。

   良い意味で目を引く動画を撮るには、非日常的なアングルが新鮮に映ると思います。しゃがんだり、地面すれすれぐらいまで目線を下げるだけでも、印象が変わります。脚が短い小さな三脚はとても役立つアイテムで、カメラの角度の調整ができたり、自撮り棒として使えるタイプもあります。

   動画撮影の際、音声はとても重要です。屋外での撮影では、マイクをこするような「風切り音」が入ることがあります。食器洗い用のスポンジを小さく長方形に切って両面テープでマイクの部分に貼りつけると、風切り音が軽減されますので試してみてください。

   編集作業は技術も時間も必要なので、動画&写真編集アプリを使うのも一案です。私は「ゴープロクイック」を使っていました。自動編集された動画をそのまま使ってもいいですし、自分で手直しもできます。

   ここまで動画制作のテクニックをお伝えしてきましたが、最後にスマートフォン(以下、スマホ)で活動記録を動画で残す際に、身につけておきたい三つの〝とるクセ〟を紹介します。

ザンビアの教員養成校で水泳を教える竹谷さん

ザンビアの教員養成校で水泳を教える竹谷さん

「動画を撮るクセ」… 派遣国で2年間生活すると思うと、「また今度撮影すればいいか」と先延ばしにしがちです。しかし、チャンスは二度とないかもしれません。後悔しないためにもずうずうしいかもなどと躊躇(ちゅうちょ)せずに、「撮ってもいいですか?」「撮ってもらえますか?」とお願いしましょう。

「許可を取るクセ」… 私が心に留めているのが「国が違えば、法律が違う。場所が変われば、ルールが変わる。日が変われば機嫌が変わる」です。国によって法律も文化や宗教も異なり、同じ国のなかでもルールが違う地域もあります。また、人についてもこの間はOKだったのに、今日はダメと言われることもあります。毎回、許可を取りましょう。

「コミュニケーションを取るクセ」…撮影する際は特に周囲の人とコミュニケーションを取りましょう。いろいろな情報を得ることができるほか、写りたくない人がいることに気づいて配慮することもできます。私はカメラを手にしているときは、知らない人であっても意識して周囲の人にあいさつをしていました。

   帰国して数年たつと、「派遣国で過ごしたあの2年間が本当にあったこととは思えなくなってきた」と感じるOVが少なくありません。動画は自分の記念にもなります。楽しみながらチャレンジしてみてください。

映像にメリハリをつけるには?

Q. 映像にメリハリをつけるには?

A.「即席スライダー」で、動きのある動画が撮影できます。
薄い紙やタオルを置いたうえに小さな三脚を立ててスマホを設置し、紙やタオルをゆっくりと引っ張って動かしながら撮影します。撮り始めの数秒間は摩擦が生じて映像にブレが生じる可能性が高いので、少し動画を回してから動かすといいと思います。

CHECK !
竹谷さんのYoutubeチャンネル「Go Takeya」

1本10分前後×合計38本の動画がアップされている。
竹谷さんがガイドするもの、ほかの隊員を撮ったものなど内容はさまざま。
2022年8月8日現在の再生回数ベスト5は下記。

YouTubeはこちら

1位:[JICA青年海外協力隊Vlog19]
中町公祐選手の応援へ!サッカー観戦!
Watching a football match in Zambia
時間10:21
見ている人が僕の体験していることを感じられるようなイメージで、試合の映像はもちろん、チケットを買う場面、会場で売っている物、ファンの応援の雰囲気など、なるべく多くのシーンを撮るようにしました。

2位:[JICA青年海外協力隊]
ザンビアの小学校教育隊員に一日密着!!
活動紹介動画
時間14:15
起こることを予測し、アングルを考えておきました。例えば、3: 30あたりからマジックを披露するところ。見ている子どもたちの表情を撮れるよう、隊員の後ろに場所を取りました。笑いだす瞬間など、表情が表れる瞬間は編集時に非常に重宝します。狙っている人がいればズームしてみたり、よく笑う人がいたら何かが起こる前から撮っておくと、いい画が押さえられます。

3位:[JICA青年海外協力隊 活動紹介動画]
ザンビアの小学校教育隊員の活動の様子をおとどけ!
Teaching Mathematics in Zambia
時間7:40
授業の様子、折り紙、歌など、どんなところを撮ってほしいかを隊員とあらかじめ打ち合わせしました。学校で活動する隊員なら、特別なことをする日に呼んでもらったりして、それを普段の活動の様子と交えて編集するとメリハリが出ます。

4位:[JICA青年海外協力隊 Vlog16]
Visiting my friends in Serenje
ザンビアのある意味名所のひとつ
時間8:11
この日はすべてがアドリブでした。そのため、出会った子どもたちとのやりとり、川をジャンプして渡るなど、周りで起こる出来事にアンテナを張りながら撮影しました。

5位:[JICA青年海外協力隊]
アフリカでジャパンフェスティバルを開くとこうなる!
JAPAN FESTIVAL in Africa!!
時間9:23
映す対象の人数が多かったため、誰かが写っていないことのないようにチェックリストを作って撮影漏れのないようにしました。協力隊員が現地の人たちに囲まれて笑顔になっているところや、日本の文化に触れて不思議そうだったり楽しそうにしているザンビアの人々の表情を狙いました。



帰国後の出前授業でも使いやすい動画を撮るポイント

トラン ティ 美佳
トラン ティ 美佳さん
コスタリカ/映像/ 2018年度1次隊・兵庫県出身

日本のテレビ局でディレクターを務めたのち、協力隊に参加。コスタリカ映画制作センターに配属され、中高生に向け、スマホ映画制作講座「自分の町を撮影しよう!」プロジェクトを実施。映像を通して自分の気持ちを表現する術や楽しさを伝えた。現在JICA大阪デスク。

   映像隊員として、コスタリカの中高生にスマホを使った映像制作を教える講座を実施していました。「動画で活動記録を撮る方法」については、過去に誌面で紹介しました(下囲み参照)。今回は「帰国後の出前講座で使える動画の撮影ポイント」についてお伝えします。

   まずは動画撮影前のポイント。「誰に何を伝えたいか?=動画の目的」を撮影前に明確にすることをお薦めします。出前講座の場合、「誰」は「日本に暮らす子どもたちや市民の方々」、 「何を伝えたいか」は、「活動の体験談」「派遣国の文化や暮らし」「途上国の現状」などが多いかと思います。

   活動先が学校の場合は、授業やランチ、休み時間、行事、放課後など、どんなシーンを撮影しても、日本に暮らす方々にとっては新鮮に映ると思います。日本と異なる部分、日本と同じ部分という視点を持って撮影すると撮影しやすくなるかと思います。月ごとに撮影するアイテムを決めてみる手もあります。例えば、今月はご飯、来月は移動手段、再来月は民族衣装というようなイメージです。ほかにもSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標に沿う形で撮影しても面白いかもしれません(編集部考案のテーマ設定はページ下部の囲みへ)。

コスタリカでトランさんらが実施した映像講座で動画撮影をする生徒

コスタリカでトランさんらが実施した映像講座で動画撮影をする生徒

   次に、実際に撮影をする際に気にかけておくとよいポイントをお伝えします。一つ目は、面白いなと思ったら、すぐに撮影すること。着任直後に感じる異文化への驚きや感動は、日がたつにつれ薄れていきます。だからこそ、これは面白い!と感じたときに、撮影ができる状態であれば、ぜひその瞬間を映像に残してみてください。そうすることで、「その人にしか撮れない動画」を残せると思います。

   二つ目は「音」。音は場の雰囲気を伝えるためにとても大切な要素の一つです。撮影時に音もしっかり記録するためには、可能な限り対象物に近づくことをお薦めします。もし近づくことが難しい場合は、スマホを2台使い、1台は対象物の近くで音を、もう1台はカメラとして映像を撮影する方法もあります。編集時は、音を聞いてもらうためにBGMを入れすぎないよう意識してみてください。

   三つ目は、撮影時にレンズのなかだけを見ないことです。物事の全体像を押さえ、撮影のポイントを確認するためにも、対象物をレンズ越しだけで見るのではなく、時折レンズから目を離し、自分の目で捉えておくよう意識すると、レンズの外で起こっていることも撮影することができます。

   最後に、自らが動画のなかに写ることの重要性についてお伝えします。日本での出前授業などで動画を使う場合、少しでもご自身が動画に写っていることで、皆さんが現地にいたことを見る側に感じてもらうことができます。

   では、どのようにご自身が写った動画を撮影するか。教室の場合、後ろの机やご自身の脇にあたる場所にカメラを設置し、ご自身も含めて教室全体を写した〝引き〟の映像を撮影しておく。もしくは、授業終わりに生徒の前に立ち、自撮りをする形でご自身の後ろにいる生徒たちに手を振ってもらうと、教室の賑やかな雰囲気も伝わり、楽しい映像になるかと思います。

   活動先の皆さんのさまざまな表情は、関係性を築いた協力隊員だからこそ撮影できるものです。ぜひ皆さんならではの臨場感ある映像の撮影に挑戦してみてください。

授業を受ける子どもたちの顔を撮影するときの工夫は?

Q. 授業を受ける子どもたちの顔を撮影するときの工夫は?

A. カメラを首から下げて撮影してみるのもよいかもしれません。
この方法で撮影すると、先生目線で、生徒がどんな表情で授業を受けているかを撮影できると思います。 先に少し撮影してみて、ちゃんと録画できているか、どんな画角で撮れているかを確認してください。

Q. 動画のテーマとしてお薦めのものは?
A. 『SDGs17の目標』に合わせて撮影すると、出前授業のときなどに使いやすいと思います。


SDGs17の目標のテーマ(内容は編集部で考案)
2.飢餓をゼロに
   ➡毎日の学校給食の紹介動画

4.質の高い教育をみんなに
   ➡学校生活(授業、教室のなか、黒板、ノート、休み時間、制服など)の紹介動画

6.安全な水とトイレを世界中に
  ➡学校や町、家庭のトイレの紹介動画

7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  ➡家のかまどや照明、あればクリーンエネルギー関連施設などの紹介動画

9.産業と技術革新の基盤をつくろう
   ➡派遣国で行われている、インフラ関連の日本のODAの紹介動画

11.住み続けられるまちづくりを
  ➡活動する地域の町やまちづくりの紹介動画

12.つくる責任、つかう責任
  ➡公共施設や公共の場にあるゴミ箱、家庭のゴミ箱(ゴミ分別)紹介動画

14.海の豊かさを守ろう
  ➡砂浜のゴミや、海やビーチに生息する動植物の紹介動画

15.陸の豊かさも守ろう
  ➡森林破壊や砂漠化、山地に生息する動植物の紹介動画

17.パートナーシップで目標を達成しよう
  ➡協力隊員が国際機関やNGOなどとコラボしたイベントなどの紹介動画

CHECK !

トランさん執筆による「スマートフォンで動画づくり」は、過去のクロスロード「JICA海外協力隊的プチテクガイド」で詳しく紹介しています。

①企画・構成編(2020年1月号P30)
②撮影編(2020年3月号P30)
③編集編(2020年4月号P30)

記事はこちら



CHECK !

トランさんが配属先やコスタリカの省庁に報告するために同僚と共に作成した活動についての動画(スペイン語)が見られます。

活動を振り返って

講座手法

活動報告

Text=梶垣由利子 lllustration=岡村裕美   写真提供=ご協力いただいた各位

知られざるストーリー