年末年始は特に注意を!
[特集] セルフディフェンスの見直しと徹底
~派遣国における安全対策~

事例に学ぶ、隊員の被害

過去のクロスロードに掲載された隊員が受けた事件・事故の記事を再編集した。

[自宅で]わずかな時間に自宅を空けた間に起きた事例

被害報告書

事案名:空き巣
発生地域:大洋州
発生場所:自宅のリビング
発生時間帯:14時
被害内容:スマートフォン


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   家の前にあるゴミ捨て場にゴミを捨てに行ったZさん。玄関のドアは閉めたが鍵をかけずに出たところ、戻ってくるとリビングのソファの上に置いてあったスマートフォンがなくなっていた。後日、逮捕された犯人は、「フェンスから敷地内に侵入し、物陰に隠れて家人が外出するまで待っていた」と供述。隙をうかがっていたことがわかった。


<対策>   安全管理部より   

隊員の住居は、玄関の鍵や窓に防犯用鉄格子を設置するなど、ハード面の侵入対策がなされています。しかし、問題はそれを利用する人の心がけです。たとえ自宅の目の前に行く場合でも、必ず鍵をかける癖をつけること。今、海外にいるということを決して忘れてはいけません。日本とは状況が全く違うということをはっきり意識し、確実に鍵をかけ、暑くても寝る際には必ず窓を閉めるなど、基本的なことを実行してください。


[道で]バスに乗車する際に起きた事例

被害報告書

事案名:窃盗(ひったくり)
発生地域:中南米
発生場所:市街地のバス停
発生時間帯:11時10分~11時30分
被害内容:約3000円(現金)、バッグ、財布、クレジットカード2枚、携帯電話2台、鍵、化粧ポーチ


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   市街地のバス停で、Gさんはほかの隊員3人と、目的地までバスで行くか徒歩にするか相談し、Gさんだけがバスを選択した。バスに乗車しようとしたとき、Gさんは背後から走ってきた15歳くらいの男に、手にしていたバッグをひったくられた。犯人は大通りを20メートルほど走り、脇道に逃げ込んだ。盗まれた直後にGさんが「マイ バッグ!」と叫んだため、ほかの隊員が気づき、後を追いかけ、Gさんも追いかけたが見失った。

   バッグには日本円で約3000円分の現金とクレジットカード、携帯電話、家の鍵などが入っていたため、近くの隊員の家へ行きクレジットカードを停止し、事務所に連絡。警察に被害届を提出し、家の鍵を交換した。


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<対策>   安全管理部より   

路上歩行中やバス乗車中は周囲を警戒していると思いますが、本事例は犯人からすれば非常に隙があるように見え、ひったくりをしやすい状態だったといえます。バスに乗る際は、バッグを身体の前で持つこと。また、犯人が武器を持った場合など、二次被害につながる可能性があるため、むやみに追いかけることも危険です。


[外出先で]市場を散策中に起きた事例

被害報告書

事案名:詐欺盗
発生地域:アジア
発生場所:市場
発生時間帯:11時30分~12時
被害内容:約2000円×2人=約4000円(現金)


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   Eさん、Fさんは市場を散策中に6人組の男(警察官の服装をした5人とリーダーと思われる私服の男1人)にパスポートの提示を求められた。人けのない近くのコンテナに連れていかれ、「麻薬をやっているのではないか? 荷物をすべて見せろ」と言われたため、そのとおりにした。男たちは財布の中身を確認したあと、2人を解放した。

   Eさん、Fさんが財布を確認したところ、それぞれ約2000円相当の現金が抜き取られていたため、翌日事務所に報告。事務所では再度安全対策の注意喚起を行った。


<対策>   安全管理部より   

偽装警察官が職務質問をしながら金品を窃取する手口です。この場合、相手の身分をしっかり確認し、不審に思った場合は「警察署に行く」「大使館に問い合わせる」などと告げ、相手に「これはまずい」と感じさせることが大切です。決して相手の車両に乗ったり、人けのないところに連れていかれたりしないように注意してください。


[ホテルで]短時間ホテルから外出した際に起きた事例

被害報告書

事案名:窃盗(ホテル荒らし)
発生地域:アフリカ
発生場所:ホテル
発生時間帯:20時20分~21時
被害内容:パスポート、日本円にして約49万円(現金)、ノートパソコン、ハードディスクドライブ×2、SDメモリーカード×2、クレジットカード×3、財布など


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   4階建ての部屋数が多い市街地のホテルで、Iさんは最上階の端の部屋に、同僚はその隣室に滞在していた。20時にIさんは夕食のために部屋を施錠し、鍵はフロントに預けず、携行して外出した。40分後ホテルに戻ると、部屋の鍵はかかっておらず、室内にあった3つのカバンはすべて開けられ、パスポートをはじめとする貴重品などがなくなっていた。カバンは鍵付きだったが、すべてジッパー開閉で、ジッパー部分が引き裂かれていた。

   隣室にいた同僚は「20時30分ごろ鍵をガチャガチャする音を聞いたが、向かいの部屋だと思った」と言う。事実、鍵に似たような形状のもので無理やり開けられていた。 犯人はホテル内部の人間と予想される。短い外出時間に事件が発生したことに加え、Iさんは部屋の番号が書かれたプレートを外して鍵を携行していたことから、どの部屋かを外部の人間が把握するのは難しかったためだ。

   Iさんはホテルの管理人に報告してから警察に通報。在外事務所からはパスポートの保管方法について、ほかの貴重品と一緒に保管しないなど、注意喚起が行われた。

<対策>   安全管理部より   

布カバンであろうとスーツケースであろうと、ジッパー式のカバンは鍵をかけていてもジッパー部分をドライバーなどで簡単に壊されたりこじ開けられたりするため、貴重品は入れないほうが賢明です。鍵のしっかりしたスーツケースを使用し、旅券やスマホ、PCといった貴重品は肌身離さず携行しましょう。

Text=ホシカワミナコ(本誌) 図版作成=岡村裕美 写真提供=飯渕一樹(本誌)、ホシカワミナコ(本誌)
※使用している写真はイメージです

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