佐賀県以外でも
ウクライナ難民・避難民への支援活動を続けるOV

日本国内でオンライン無料健康相談サービス

吉田 修さん
特定非営利法人TICO 代表理事、医師
吉田 修さん
<マラウイ/医師/1988(昭和63)年度3次隊・徳島県出身>
                
NPO法人AMDAと合同医療チームを結成し、ウクライナ国境近くで医療支援活動を行った。写真は診療にあたる吉田さん(2022年3月 写真提供=AMDA・TICO)

NPO法人AMDAと合同医療チームを結成し、ウクライナ国境近くで医療支援活動を行った。写真は診療にあたる吉田さん(2022年3月 写真提供=AMDA・TICO)

   TICO(ティコ)は、ザンビアとカンボジアを中心に医療・農村開発などの国際協力活動を行うNGO。徳島県内にある吉田さんが開業したさくら診療所で働く医師らを中心にしたメンバーが、災害・紛争時のほか、医療が脆弱な国や地域などに赴き、交代で途上国での医療支援を行っている。

   ウクライナ難民支援は、2022年3月に特定非営利法人AMDA(岡山県)と合同で医療チームを結成。ハンガリーのウクライナとの国境に近い町、キシュバールダを拠点にして現地調査後に仮設診療所などでの医療支援を実施した。吉田さんは国境の町・ベレグスラーニーやザホニー駅で現地医師と共に診療にあたった。「国境付近の町で移動途中に立ち寄る人に重症な病気やけがを抱えた患者さんは少なく、またハンガリー政府の難民受け入れが万全な体制だったため、ウクライナへと物資を輸送している活動の後方支援、つまり薬代や輸送費の資金的援助が必要と感じました。日本から医療品を送るより、現地で買ってもらったほうが輸送費も安いですから」。TICOでは現在もウェブサイト上にウクライナ支援専用の寄付口座を設けて、日本の人々からの寄付金を受けつけている。

TICOのウェブサイトにあるオンライン無料健康相談サービスの案内

TICOのウェブサイトにあるオンライン無料健康相談サービスの案内

   一方、代表者が4月1日に在日ウクライナ大使館を訪問して面談、日本でのウクライナ避難民に対する医療面の支援要請を受けた。そこで日本国内のウクライナ避難民に対し、TICOメンバーの医師によるオンラインでの無料健康相談サービスの提供を行う。相談内容によっては各居住地の医療機関を紹介し、避難民の方々が避難している日本全国の自治体で少しでも安心して健康な生活が送れるよう、支援を続けている。詳しくはTICOのウェブサイト(ウクライナ語の案内あり)で確認を。

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隣国ポーランドでニーズを聞きながら支援

宮永匡和さん
認定NPO法人 日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)
ポーランド臨時職員
宮永匡和さん
<ポーランド/美術/1995(平成7)年度1次隊・大分県出身>
最近の活動から。学校の準備教室に通う子どもらにスケート用具を購入したり、母親も一緒に参加できる遠足などのアクティビティも企画(写真提供=JCF、宮永さん)

最近の活動から。学校の準備教室に通う子どもらにスケート用具を購入したり、母親も一緒に参加できる遠足などのアクティビティも企画(写真提供=JCF、宮永さん)

   日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)は、チェルノブイリ医療支援、福島原発事故の被災支援、イラク医療支援を行っているNPOだ。

   ポーランドの古都・クラクフで20年以上暮らす画家の宮永さんは、2022年2月後半からウクライナ難民が避難してきているのを見て個人的に支援活動を始めていたところ、3月初旬にかねて親交のあったJCFから相談が届いた。日本からの支援金を元手にポーランドで宮永さんが物品を購入し、それを配給所に持っていくという役割の依頼だった。その依頼を引き受け、5月からはJCFの臨時スタッフとして活動している。

配給所の倉庫に運ぶために購入した食料品や衛生用品、日用品(写真提供=JCF、宮永さん)

配給所の倉庫に運ぶために購入した食料品や衛生用品、日用品(写真提供=JCF、宮永さん)

   ポーランドのウクライナ難民は、身分証の提示で配給所で食料や日用品の受け取りができ、一人あたり約1200円/日の家賃補助が大家に支払われたりといった国の支援を受けられる。そこで宮永さんもJCFが集めた支援金で食料や日用品を購入して配給倉庫に届けている。また小学校でウクライナ難民の子どもたちを対象にした準備教室の先生やその母親の意見を聞き、学用品やスポーツ用品の購入など、学校での支援も続けている。宮永さんによると、「10月17日現在、配給は住民登録2カ月未満の人のみが利用でき、家賃補助も半年を過ぎた人には適用されなくなりました。支援の打ち切りや言葉の壁、男性家族がウクライナに残っていることなどを理由に、夏休み前くらいからウクライナに帰国する人が急増している」という。しかし、新しく入国してくる難民もほぼ同数いる。「地元の支援疲れは感じます。みんな自分の生活もありますから、仕方がないことだと思います。私の場合は、JCFから『無理はしないで』と言ってもらっているので、自分のできる範囲で継続して支援をしたいと思っています」。JCFへの寄付や宮永さんの活動報告は同団体ウェブサイトやフェイスブックで見ることができる。

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Text=ホシカワミナコ(本誌)

知られざるストーリー