※2022年8月2日現在
出典:外務省ホームページ
※2022年11月30日現在
出典:国際協力機構(JICA)
自然災害や貧困のイメージが強いバングラデシュだが、近年は経済成長著しく、2026年には後発開発途上国を卒業する見込みだ(※1)。協力隊の歴史やこれから期待される活動について、JICAバングラデシュ事務所次長の中村貴弘さんにお話を聞いた。
お話を伺ったのは
PROFILE
JICAバングラデシュ事務所次長。2000年に国際協力事業団(現JICA)に入団。主にアフリカ地域の農業・農村開発を担当し、エチオピア事務所、イギリス留学、総務部などを経て、18年から現職。
日本の4割ほどの国土に1億6000万人が住むバングラデシュ。国名は「ベンガルの国」を意味する。その前身は、1947年にイギリスから独立したパキスタンだ。インドを挟んで東(現バングラデシュ)と西(現パキスタン)に別れ、使用言語も異なっていた。西パキスタン優位の情勢下、50年代に東パキスタンで「西パキスタンの公用語のウルドゥー語ではなく、母語のベンガル語を公用語に」との運動が起き、独立戦争などを経て71年にバングラデシュとして独立した。
先進国で最初に独立を承認したのが日本だった。経済的搾取や独立戦争で疲弊したこの国の厳しい食糧問題に取り組むため、73年に稲作、園芸作物、農業機械の3人の青年海外協力隊(以下、協力隊)を派遣。今日まで続く活動が始まり、今年で50周年となる。「この国のリーダー層が若かった頃から、隊員は国の各地で人々と同じような生活をし、国の誇りであるベンガル語で活動してきました。おかげでとても親日的で、日本人とわかると『友達の友達に協力隊がいる』と話しかけられます」とJICAバングラデシュ事務所次長の中村貴弘さんは言う。
日本の協力は、農業・農村開発や保健、教育、都市開発、防災・気候変動など多岐にわたり、近年は経済特区や首都の都市高速鉄道(MRT)建設などのメガプロジェクトも多く、経済開発を後押ししてきた。しかし、隊員派遣は、2016年7月にJICA関係者が犠牲になったダッカ襲撃テロ事件(※2)を受けて中断している。
それまでに派遣されていた隊員は1284名に及ぶ。分野は、当初の農業や職業訓練から、時代の変遷に伴う開発課題の多様化に合わせて広がり、ソフト・ハード両面で多くの貢献がある。任期終了後も国際協力分野や研究、NGO活動、起業などで二つの国の懸け橋として活躍する人も多い。
「テロ事件は大変痛ましい事案でしたが、現在の治安は安定しています。テロや犯罪、事故に対する安全対策を徹底し、この国からの『協力隊の復活を』との強い要望に応えて再開に向けて進めています。隊員を受け入れてもらうためのネットワークをもう一度紡ぎ、6年の空白を埋めるべく、22年度短期派遣募集(※3)で再開第1弾となる隊員の公募を予定しています」
この国は経済成長のポテンシャルの大きさで世界から注目され、大きく変貌を遂げつつある。「絶対的貧困から脱し、生活の質の向上、都市と地方の格差解消を目指す段階にきています。そして年齢中央値が27歳と若く、活気にあふれた国です。若い人たちが常に新しいことをしようとしているので、協力隊として来る人には日本のアイデアを基に新しいものを一緒に作る意気込みで来てもらえたらと思います」
※1…2021年11月24日の第76回国連総会での決議により、卒業見込みが決定された
※2…2016年7月1日、ダッカ市内のレストランにおいて数名の武装グループが人質を取って籠城し、日本人7名を含む約20名を殺害、多数が負傷した事件。7名の日本人はJICAによるダッカ都市交通整備事業協力準備調査に従事していた。
※3…2022年度短期派遣募集期間:2022年12月16日〜2023年1月12日
Text=工藤美和