JICA海外協力隊に参加したいと手を挙げて合格した方は、派遣前訓練に臨むことになります。現在、訓練を行う施設は、駒ヶ根青年海外協力隊訓練所(長野県駒ヶ根市)と、今回訪ねた二本松青年海外協力隊訓練所(福島県二本松市・以下、二本松訓練所)の2カ所があります。二本松訓練所は、安達太良山の麓、磐梯朝日国立公園内に建ち、そこから眺める山々の景観は素晴らしく、施設も清潔感にあふれており、集中して訓練に励むには最高の環境でした。
二本松訓練所は、安達太良山の麓の自然豊かな国立公園内にあり、職員も訓練生を最大限にサポートしたいという気持ちに満ちています。都会の喧騒(けんそう)から離れ、優しい人々に囲まれ、語学や必要な講座に励んでほしいと思います。
ここで行っていることは、「途上国へ行くための準備」です。派遣先で、現地の言葉で挨拶をして、自分の仕事の説明をする。そして充実した活動ができるように、コミュニケーションの土台である語学はもちろん、健康管理や安全管理、異文化適応など、必要な知識を身につけるための期間です。訓練当初は不安もあるでしょうが、しっかり訓練に励み、皆が自信を持って派遣国に旅立ってほしいと思います。
私は、訓練生の方に、訓練所での出会いも大切にしてもらいたいと思っています。ここには、年代、出身地、考え方の違う方が集まっています。そうした訓練生同士の触れ合いの中で、今までの自分の知識、技術、考え方の幅を広げていただきたい。派遣先では、今まで体験したことがないことも起こると思いますが、こうしたつき合いの中に、多くの問題解決のヒントがあるものです。
応募を考えている方に向けて言いたいのは、JICA海外協力隊は、国際協力をやりたい、でもやり方がわからないなどの不安がある方にとって、充実したサポート制度が整っている事業だということです。
行かないで後悔するよりは、一歩を踏み出してみたらいかがでしょうか。2年後には、日本で過ごしている2年間とは、全然違った密度の高い時の流れと、そこでさまざまな経験をすることにより自分自身も成長することでしょう。
コロナ禍によって訓練生同士のコミュニケーションが少なくなっている中、よりよい訓練生活を送っていただけるように、万全なサポート体制で臨んでいます。生活上で困っていることがないかや、モチベーションについて、面談を行ったり、スタッフが協力隊時代の体験談を話す機会を設けたりと工夫を重ねています。
訓練生の定員減:最大204人入れる施設で、コロナ禍前は多い時で190人弱が入所していましたが、現在は半分以下で運営しています。今年度は、一番多かった1次隊が80人、それ以外は50人前後です。
対面での訓練日数の短縮:2019年度は、二本松訓練所で70日間の訓練を行っていましたが、コロナ禍の訓練再開後は、期間を59日間に短縮しています。来年度以降については、感染状況などを踏まえ改めて検討を行います。
オンライン授業の増加:現在、コロナ禍で密を避けるため、オンライン型授業が増加していますが、カリキュラムについては、感染状況などを踏まえながら今後も見直しが行われる予定です。
基本的なコロナ対策:訓練生は毎朝部屋を出る前に検温・体調を確認、異常があった場合は部屋を出ずに診療室の指示を仰ぎます。マスクの着用、飛沫(ひまつ)対策、距離を取ることなど、基本的な対策を実施しているほか、各教室では、換気の徹底はもちろん、二酸化炭素濃度を測る機器を設置し、基準値を超えると音で知らせる仕組みになっています。
※2022年11月14日取材当日の情報です。今後、変更になる場合があります。
※二本松訓練所には、二本松市内の商店が定期的に出張販売している。
Text=阿部純一(本誌) Photo=飯渕一樹(本誌) 写真提供=二本松訓練所