二本松青年海外協力隊訓練所に行ってきました!

二本松青年海外協力隊訓練所

JICA海外協力隊に参加したいと手を挙げて合格した方は、派遣前訓練に臨むことになります。現在、訓練を行う施設は、駒ヶ根青年海外協力隊訓練所(長野県駒ヶ根市)と、今回訪ねた二本松青年海外協力隊訓練所(福島県二本松市・以下、二本松訓練所)の2カ所があります。二本松訓練所は、安達太良山の麓、磐梯朝日国立公園内に建ち、そこから眺める山々の景観は素晴らしく、施設も清潔感にあふれており、集中して訓練に励むには最高の環境でした。



田中宏幸所長からのメッセージ

小林丈通所長

二本松青年海外協力隊訓練所
田中宏幸所長
マレーシア/養殖/1991年度2次隊・福岡県出身

   二本松訓練所は、安達太良山の麓の自然豊かな国立公園内にあり、職員も訓練生を最大限にサポートしたいという気持ちに満ちています。都会の喧騒(けんそう)から離れ、優しい人々に囲まれ、語学や必要な講座に励んでほしいと思います。

   ここで行っていることは、「途上国へ行くための準備」です。派遣先で、現地の言葉で挨拶をして、自分の仕事の説明をする。そして充実した活動ができるように、コミュニケーションの土台である語学はもちろん、健康管理や安全管理、異文化適応など、必要な知識を身につけるための期間です。訓練当初は不安もあるでしょうが、しっかり訓練に励み、皆が自信を持って派遣国に旅立ってほしいと思います。

   私は、訓練生の方に、訓練所での出会いも大切にしてもらいたいと思っています。ここには、年代、出身地、考え方の違う方が集まっています。そうした訓練生同士の触れ合いの中で、今までの自分の知識、技術、考え方の幅を広げていただきたい。派遣先では、今まで体験したことがないことも起こると思いますが、こうしたつき合いの中に、多くの問題解決のヒントがあるものです。

   応募を考えている方に向けて言いたいのは、JICA海外協力隊は、国際協力をやりたい、でもやり方がわからないなどの不安がある方にとって、充実したサポート制度が整っている事業だということです。

   行かないで後悔するよりは、一歩を踏み出してみたらいかがでしょうか。2年後には、日本で過ごしている2年間とは、全然違った密度の高い時の流れと、そこでさまざまな経験をすることにより自分自身も成長することでしょう。


カリキュラム担当者に聞く Withコロナの派遣前訓練
私たちが案内します!

野並丈朗さん

野並丈朗さん:グアテマラ/感染症対策/1999年度3次隊・千葉県出身

四方田隆聖さん

四方田隆聖さん:タンザニア/体育/2019年度2次隊・千葉県出身

井上泰輔さん

井上泰輔さん:ニカラグア/環境教育/2015年度1次隊・京都府出身

   コロナ禍によって訓練生同士のコミュニケーションが少なくなっている中、よりよい訓練生活を送っていただけるように、万全なサポート体制で臨んでいます。生活上で困っていることがないかや、モチベーションについて、面談を行ったり、スタッフが協力隊時代の体験談を話す機会を設けたりと工夫を重ねています。

   訓練生の定員減:最大204人入れる施設で、コロナ禍前は多い時で190人弱が入所していましたが、現在は半分以下で運営しています。今年度は、一番多かった1次隊が80人、それ以外は50人前後です。

   対面での訓練日数の短縮:2019年度は、二本松訓練所で70日間の訓練を行っていましたが、コロナ禍の訓練再開後は、期間を59日間に短縮しています。来年度以降については、感染状況などを踏まえ改めて検討を行います。

   オンライン授業の増加:現在、コロナ禍で密を避けるため、オンライン型授業が増加していますが、カリキュラムについては、感染状況などを踏まえながら今後も見直しが行われる予定です。

   基本的なコロナ対策:訓練生は毎朝部屋を出る前に検温・体調を確認、異常があった場合は部屋を出ずに診療室の指示を仰ぎます。マスクの着用、飛沫(ひまつ)対策、距離を取ることなど、基本的な対策を実施しているほか、各教室では、換気の徹底はもちろん、二酸化炭素濃度を測る機器を設置し、基準値を超えると音で知らせる仕組みになっています。

※2022年11月14日取材当日の情報です。今後、変更になる場合があります。



施設他紹介

朝の会

朝の会
朝一番で訓練生全員が集合し、派遣国の国旗の紹介や連絡事項の伝達が行われる。左からJICA海外協力隊の旗、日本国旗、派遣国の国旗(日替わりで取材当日はルワンダ共和国)、JICAの旗。

講堂

講堂
講堂での講義は、三密(密閉・密集・密接)を避けながら充実したカリキュラムが提供されている。取材時にはオンラインで東京の講師と結び安全対策に関する講義が行われていた。

語学教室

語学教室
言語別に分かれて学ぶ。取材時は1クラス2~3人と少人数で学んでいた。各教室の雰囲気は和気あいあいとしていて時々笑い声も聞こえてくる。

居室

居室
宿泊棟は4棟あり、各居室にはベッドと机とクローゼットが設置されている。

食堂

食堂
素晴らしい眺めの食堂は、各テーブルに1人ずつが座り黙食となっている。バランスを考えて和食が多い。週に1回は各国料理がメニューに登場する。

研修棟

研修棟
左に延びている建物が研修棟で、各語学教室が並んでいる。二本松訓練所では英語・仏語以外にも希少言語を対象にしている。

エントランス

エントランス
二本松訓練所のエントランス。天井に空と雲が描かれ、開放的な空間。エントランスと奥の資料室は、一般の方も見学が可能。

厚生棟

厚生棟
高地にあり見晴らしがよい二本松訓練所。左に見えるのは厚生棟で、食堂や大浴場が入っている。三角の屋根は羽ばたく鳥のクチバシをイメージ。

浴室

浴室
広くて清潔な共同の大浴場。他に個室のシャワー室も男女1つずつあり、こちらは早朝に運動する訓練生らのために朝5時半から利用可能。

洗濯室

洗濯室
合宿生活に欠かせない洗濯・乾燥機。無料で使用できるが、洗剤は各自で用意する。洗濯室の隣は室内乾燥室になっている。

応援メッセージ

応援メッセージ
二本松訓練所は、東日本大震災の際に避難所として利用された。その際に各国からの応援メッセージが寄せられ、中には、日本国旗に寄せ書きされたものもいただいた。

図書資料室

図書資料室
先輩隊員の報告書、語学の参考書、職種に関する書籍など訓練に重宝する資料が満載。自習に使う人も多い。

体育館

体育館
雪が多い地域だけに設備、各種スポーツ用具とも充実。基本的には、訓練生が体力維持のために自由に使ったり、運動系の訓練生の自主講座などに使われる。

出張売店(※)

出張売店(※)
週に2回、二本松駅前にある加藤売店の出張売店が開かれる。「自分の子どもと同じ年代の訓練生も多く、心から応援しています。現地でも頑張ってほしいですね」とスタッフの山中さん。

※二本松訓練所には、二本松市内の商店が定期的に出張販売している。

Text=阿部純一(本誌) Photo=飯渕一樹(本誌) 写真提供=二本松訓練所

知られざるストーリー