Q&Aで不安や疑問を払拭!JICA海外協力隊ガイド

浅川純子さんと脇田雄気さん

JICA海外協力隊に応募するにあたっての疑問や不安、心配事に、協力隊OB・OGでもある青年海外協力隊事務局の浅川純子さん(写真左:スーダン、エジプト/家政・生活改善)と脇田雄気さん(写真右:ベナン/村落開発普及員 ※現コミュニティ開発)がお答えします。

Q そもそもJICA海外協力隊は何をする人たちですか?

A JICA海外協力隊は、「青年海外協力隊」「海外協力隊」「シニア海外協力隊」「日系社会青年海外協力隊」「日系社会海外協力隊」「日系社会シニア海外協力隊」の総称であり、開発途上国で現地の人々と共に生活し、同じ目線で課題解決に貢献する活動を行っています。独立行政法人国際協力機構(JICA)が派遣国からの要請内容に基づいて、それに見合った技術や経験を持つ人を選考し、派遣しています。JICA海外協力隊は、青年海外協力隊事業として1965年に発足し、2022年12月現在までの派遣実績国の累計は98カ国です。

浅川純子さん

派遣された国や地域の人々と共に活動することで、協力隊員が学ぶこともたくさんあります。視野が広がり、帰国後の生き方が大きく変わる隊員もいます。

Q 語学が覚えられるか心配です

A 訓練前には、自宅で受けていただく「語学事前学習」があり、語学教材(e-ラーニング)などを用意しています。また、二本松・駒ヶ根の両訓練所で行われる派遣前訓練の「語学授業」では、語学講師が現地で活動と生活をスムーズに始めるために必要な語学力を身につけるための授業を実施します。
派遣国に赴任してから配属先に着任するまでの間にも、数週間~約1カ月にわたって「現地語学訓練」があります。より実践的な力を養う目的で、派遣前訓練で学んだ言語や現地語を学びます。

脇田雄気さん

派遣前の日本国内だけでも100時間以上の語学授業があります。語学漬けになることで、グンと語学力がつくはずですよ!

Q 途上国で体を壊さないか、安全面も心配です

A 健康、安全、生活面のサポートもあります。派遣前には赴任にあたって必要な健康診断や、予防接種を案内・実施しています。予防接種は自己手配で接種いただくものと、訓練所で接種いただくものがあります(詳細は合格後にご案内します)。また、派遣前訓練中に、現地での活動と生活に必要な健康と安全の管理に関する意識を養うための講座を実施しています。派遣中は、看護師免許取得者である「在外健康管理員」が健康に関する相談、病気や医療に関する情報の提供、疾病発生時の対応などを、現地の医療機関や医師と連携しながら行ってくれる国も多くあります。
加えて在外事務所では、「安全対策の情報提供」を行っています。現地の治安状況、犯罪防止や交通安全対策に資する情報を提供するほか、通信連絡手段の確保、必要に応じて住居の防犯対策強化なども実施しています。

浅川純子さん

各在外事務所でも安全を第一に考え対応しています。

脇田雄気さん

例えばウガンダ事務所では安全情報に関するLINEグループをつくり、出張者も参加できるような体制とし、円滑な情報提供をしています。

▶クロスロード2022年8月号 特集「JICA健康管理室が監修 派遣国の病気・ケガ対策」もご覧ください
▶ クロスロード2022年11月号 特集「年末年始は特に注意を!セルフディフェンスの見直しと徹底」もご覧ください

Q 職種の専門性があまりないので、派遣国で役に立てるのか心配です

A 派遣前訓練に入る前に「1.講座事前学習」や「2.派遣前課題別支援」があり、派遣前訓練中も「3.各種講座」で知識や経験を増やしたり、同じ職種の隊員と情報交換したりすることができます。また、派遣中は技術顧問・技術専門委員への「4.活動支援依頼」のほか、「5.課題別支援LinkedInグループ」で、先輩隊員ともつながることができます。現役のJICA海外協力隊員に向けた実践ガイド「6.クロスロード」で情報を得ることもできます。

1.講座事前学習
JICA海外協力隊員として活動を行うために必要な一般知識をオンラインで学べるよう、教材を用意しています。

2.派遣前課題別支援
各活動分野に特化したオンデマンド型講座の提供や、オンラインセミナーを実施しています。

3.各種講座
JICA海外協力隊の基礎、活動管理手法など、現地での活動と生活に必要なさまざまな講座を実施しています。

4.活動支援依頼
JICA青年海外協力隊事務局では、各職種・分野の技術に精通する人を「技術顧問」や「技術専門委員」として配置しています。派遣中に技術面で困難に直面した際に、技術的支援を受けられます。

5.課題別支援LinkedInグループ
派遣前・中・後のJICA海外協力隊員をつなげるSNSツールです。JICA海外協力隊の職種ごとにグループを構成し、技術顧問や技術専門委員もメンバーとして加わっているため、赴任後に気づく課題や知りたいことへの質問や相談もできます。

6.クロスロード
派遣中の隊員に向け、現地での活動と生活の参考となる実践的な情報などをまとめた「クロスロード」を毎月発行しています。ウェブサイトから閲覧やダウンロードができます。また、楽天Koboの電子書籍版もあります。

浅川純子さん

「クロスロード」は最新号もバックナンバーもJICA海外協力隊ウェブサイトにアップされています。活動の悩み事から料理レシピまで、先輩隊員たちのノウハウが詰まっています。

Q お金のサポートはありますか?

A 訓練所までの往復交通費、派遣国の赴任・帰任にかかる旅費はJICAが負担します。現地での住居は派遣国の政府またはJICAが用意します。国や地域によっては住居に警備員が配置される場合もあります。業務連絡用に携帯電話(SIM)が貸与されます。「国内手当(※)」や「現地生活費」(派遣国での生活費で、JICAが、派遣国の住民と同等程度の生活を営むに足る金額を、物価、為替変動などを勘案の上、定めています)などの支給もあります。
(※)支給要件に合致する場合のみ

浅川純子さん

派遣中の住まいは、ホームステイや住居シェア、一人暮らしなど、派遣される国や地域の状況によりさまざまです。

Q 派遣されている2年間に、余暇や休日、長期休暇はありますか?

A あります。活動先により、勤務時間や休日・長期休暇の日数は違い、朝7時から昼過ぎまでで活動が終了する隊員もいれば、夕方くらいまで活動が続く隊員もいます。あらかじめ申請して現地のJICA事務所の承認があれば、私費で任国内旅行や任国外旅行をすることもできます。

■平日のスケジュール例

 廣瀬芽里さん(ドミニカ共和国・青少年活動)の場合 廣瀬芽里さん(ドミニカ共和国・青少年活動)の場合

浅川純子さん

休日には買い出しや家事をしたり、地域の人の家に招待されたり、任地が同じ隊員同士で集まったりすることもあります。

Q 仕事を辞めずに協力隊員になる人もいると聞きましたが、どんな人たちですか?

A 勤務先の承諾が得られれば、現職のまま参加することが可能です。特別な制度としては、学校の教員がその身分を保持したままでかつ有給で参加できる「現職教員特別参加制度」もあります。また、所属先が組織として派遣する意味が強くなりますが、自治体職員がその身分を保持したまま参加できる「JICA海外協力隊(自治体連携)」、企業と連携してグローバル人材の育成に貢献するプログラム「JICA海外協力隊(民間連携)」などもあります。 

脇田雄気さん

各企業のボランティア休暇制度などを利用して参加する方もいます。また、勤務先が参加者の雇用を継続することを支援する仕組みとして、勤務先に対して支給する現職参加促進費の制度もあります。

Q 帰国後の就職支援はありますか?

A 青年海外協力隊事務局では、「1.進路開拓支援」「2.キャリア支援」「3.進学・研修支援」を通じて帰国した皆さんをサポートしています。

1. 進路開拓支援
帰国隊員を対象に、研修やセミナー、勉強会などを通じて進路開拓や協力隊経験の社会還元に関するサポートを実施しています。また、「進路相談カウンセラー」や「青年海外協力隊相談役」を全国に配置し、進路相談などのカウンセリングも行っています。

2. キャリア支援
帰国隊員の採用に関心がある地方自治体や企業と、協力隊経験者との交流会の実施や、多文化共生・地方創生に資する地方自治体・公的団体・NPOなどの求人を個別にご紹介する「無料職業紹介事業」、国際協力分野のキャリア情報サイト「PARTNER」による求人情報の提供などを行っています。また、教員・自治体職員の特別採用枠や、JOCV枠UNV制度(JICAが国連ボランティアの派遣にかかる費用を負担する制度)も設けています。

3. 進学・研修支援
大学・大学院の特別入試制度や、国際協力人材を目指す人向けの研修制度などがあります。また、進路開拓に役立つ技術の習得、免許・資格の取得につながる学習に対して必要な経費を支援する「教育訓練手当」制度や、帰国後2年以内の帰国隊員のうち、JICA海外協力隊への参加で得た知識および経験を、国内外で生かす社会還元を促進するために、国内外の大学院への進学を志望する方および進学している方を対象とした、奨学金給付事業があります。

脇田雄気さん

派遣国での経験から、将来進みたい道がはっきりしたり、変わる隊員もいます。そんな時は進路相談カウンセラーや青年海外協力隊相談役に相談してみてください。

2019年度帰国隊員の進路状況は?(回答743人)

2019年度帰国隊員の進路状況は?(回答743人)
※2019年4月1日~20年3月31日までに帰国した青年海外協力隊および日系社会青年海外協力隊(合計919人)に対して、青年海外協力隊事務局が行ったアンケート結果より。  19年4月~21年5月までに回答があった743人の進路状況を集計。

JICAの支援体制の詳細についてはこちらをご覧ください。


課題別支援LinkedInグループで悩みも共有できる
LinkedIn(リンクトイン)は世界最大のビジネス特化型SNSです。2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大により、派遣中のJICA海外協力隊員が一斉帰国しました。再派遣後に先輩隊員がいない中で活動を行う協力隊員を支えられるよう、青年海外協力隊事務局では翌21年4月からリンクトインの運用を開始しました。「課題別支援LinkedInグループ」は、同じ職種の隊員が国や地域、隊次を超えて情報を共有したり、活動の悩みを相談したり、帰国後のキャリア形成の実現をサポートする場などとして、活用され始めています。人数の多い職種を中心に16グループに分かれ、技術顧問や技術専門委員なども加わっているため、活動時の具体的なアドバイスも受けられます。
▶ クロスロード2022年7月号特集「活動時のお悩み解消 課題別支援LinkedInグループ徹底解剖」もご覧ください

Text&Photo=ホシカワミナコ(本誌)

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