[特集]私はこうして乗り越えた   語学の壁との向き合い方

CASE5【スペイン語】
シニアでスペイン語に初挑戦
「話す」ことに注力し、オンラインレッスンや通訳も活用

武山久恵さん
武山久恵さん
SV/アルゼンチン/ソーシャルワーカー/ 2008年度2次隊、高齢者介護/ 2012年度9次隊、高齢者介護/ 2014年度4次隊、
SV/コスタリカ/ソーシャルワーカー/2010年度2次隊・東京都出身

書籍編集者やインテリアコーディネーターを経て、40代で社会福祉士を目指して日本社会事業大学研究科に入学。資格を取得して高齢者支援の仕事に就く。50代からシニアボランティアとして2カ国で4回の活動を経験した。


3度目の派遣ではアルゼンチンの特別支援校へ赴任。ヘルパーの養成に尽力した

3度目の派遣ではアルゼンチンの特別支援校へ赴任。ヘルパーの養成に尽力した

   2008年、シニア海外ボランティア(以下、SV)として1年間アルゼンチンへ赴任することが決まり、50代で初めてスペイン語を学ぶことになった武山久恵さん。派遣前訓練では「若い訓練生たちの上達が早くて焦った時期もあった」。そんな武山さんが語学を習得する中で特に力を入れたのが「話す」こと。「話せるようになると聞き取れるようになる」という講師の教えで、とにかく口に出すことを意識した。「朝のランニングの前後も、授業で覚えた短文などを発しながら歩き回っていました」。

   派遣されたブエノスアイレス市役所では、高齢者福祉に関する市民からの相談を受け付ける部署に配属された武山さん。赴任から2カ月半ほど経った時期に大きなセミナーがあり、日本の介護保険制度について話すことになった。「一度日本語で書いた原稿を自分でスペイン語に訳し、赴任前から自費でお願いしていたオンラインレッスンの先生に文章をチェックしてもらったりして、念入りに準備しました」。

通訳を頼み、活動の充実を図る

   ただ、専門的なやりとりが増えるにつれ、「現地の福祉サービスや介護保険制度を理解し、相手が必要とする情報をしっかり伝えられていない」というもどかしさが募った。事前に準備した内容は話せても、それ以上のやりとりへの対応には難があり、会話のスピード感が求められるアルゼンチンの文化では拙いスペイン語を丁寧に聞いてくれる人も少なかった。

   そこで武山さんはオンラインの勉強を続けつつも、セミナーや施設訪問の際には日系の通訳者を伴うようにした。「限られた期間で習得できる語学力には限界があり、専門分野の経験や知識を伝えられなければ意味がないと感じたのです。思い切って、自分の力だけで乗り切ろうとするのをやめました」。そうしてさまざまな場に顔を出すうち、福祉関係者からデイサービスの実践などの依頼も受けるようになった。「任期終盤にはたくさんの業務が舞い込んでいて、日本へ帰るのが名残惜しいほどでした」。

    帰国後はスペインへの語学留学を経て、再びSVとしてコスタリカへ2年間赴任した。現地大学で日本文化講座や、日本の福祉制度についてのセミナーを開設した。「学内の授業は前日に配属先の人にチェックしてもらうなどしてスペイン語の準備を欠かさず、おかげで語学力は向上しました。オンラインレッスンでの添削も引き続き活用し、いろいろな手段を駆使して専門性を出し切ることができました」。

私の語学メモ

派遣ごとにオンラインレッスンを活用していたのですが、個人指導だったので内容の自由が利き、発表原稿の添削だけをお願いすることもできました。直筆の場合だと添削コメントが読みづらいこともあると思いますが、オンラインならばキーボードで打ったメッセージを受け取ることができるので重宝しました。


言語を学ぶための参考ツール

武山久恵さん

Text=新海美保   写真提供=武山久恵さん

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