現役隊員の活動相談や協力隊経験を帰国後の仕事や生活に生かしていく際、心強いネットワークとなるのが職種別OV会だ。先輩隊員が派遣国で活動する際にぶつかった壁や失敗談を、自分たちの活動の参考にもできるため、派遣前からつながっているという現役隊員もいるかもしれない。ここでは二つの団体に、現役隊員との関わり方を聞いた。
マレーシア/保育士/1989年度3次隊・東京都出身
2023年に結成30周年を迎えるJICA海外協力隊幼児教育ネットワーク。発足当時から実施しているセミナーや勉強会は、数えること62回。隊員の活動報告をはじめ、各国の保育事情や話題の保育など、現役隊員やOVから学生まで、保育に関わる人なら誰でも興味を持てる内容になっている。セミナーの講師はメンバーのほか、外部から招くこともある。コロナ禍前は対面で年に1~2回、コロナ禍をきっかけにオンラインで始めるようになってからは、21年度は9回、22年度は4回と頻繁に行ってきた。
「オンラインが使えるようになって、可能性が広がった」と話すのは、会長の久保田美幸さん。「JICAシリア事務所に勤務経験があり、現在は広島の大学の非常勤講師をしているジアードさんに、昨年〝イスラムの子育て〟をテーマに話してもらったところ、大好評。続編もやってもらいました」。
コロナ禍で一時帰国になっていた現役隊員が立ち上げた自主セミナー「子どもに関わる隊員オンラインセミナー」との交流もある。「自主セミナーを立ち上げたメンバーの一人は、JICA海外協力隊幼児教育ネットワークの運営メンバーの一人で、大学教員をしているOVの教え子の橋本千鶴さん( エジプト/ 幼児教育/2019年度2次隊、2022年度7次隊)です。橋本さんは現役隊員ですが私たちの勉強会に毎回参加し、子どもに関わる隊員オンラインセミナーのメンバーにも、情報共有してくださっています。まさに私たちとの橋渡し役だと思います。私も先日、子どもに関わる隊員オンラインセミナーにお呼びいただき、インクルーシブ保育をテーマに私の実践例をお話ししました」。
そんな久保田さんが現役隊員の方に、ぜひ参加してほしいというのが、オンライン懇談会だ。22年に行った第1回は、坪川紅美技術顧問を囲んで行われた。「活動の心構えなどを坪川技術顧問から直接聞ける良い機会となりました。また参加した方の活動報告をそれぞれ聞いて、みんなで話し合う時間もありました。さらにガボン、エジプト、セネガルの任地ともつながり、ガボンに赴任中のシニア隊員の方が、任期後半の活動の考え方について質問する場面もありました。坪川さんや参加者の方の意見を聞いて、安心されたようでしたね」。
物のない途上国で保育をつくり上げることは、まさに保育の原点。その協力隊経験こそ、日本の保育実践に生きるものだが、その伝え方には難しさも伴うという。「帰国後、協力隊経験を現場に生かそうと思っても、なかなかうまくいかないのが現実で、そんな時に共感し合える仲間がいることは貴重です。JICA海外協力隊幼児教育ネットワークのメンバーは全員協力隊OVなので、帰国後も保育の現状や悩みについて安心して語り合えます。私自身、子育てや仕事に追われる時期はつかず離れず活動に参加してきましたが、仲間の存在は大きく、人生が豊かになりました。保育に関わる人は誰でも、活用してほしいと思います」。
代表者:久保田美幸(会長)
2023年3月現在の会員数:106名
結成した年:1993年
入会資格:協力隊の保育・幼児教育分野のOV (シニア隊員含む)、障害児教育など子どもに関わる職種OV(2022年度より) ※オンライン懇親会は現役隊員も参加可能
会費:2000円/年
総会などを行う頻度:年1回
問い合わせ先や入会方法:jocvyoukyou@gmail.com 久保田美幸。
入会希望者には、上記メールアドレスより申込書を送付
Text = 池田純子 写真提供=久保田美幸さん