派遣国の横顔   ~知っていますか?
派遣地域の歴史とこれから[ラオス]

1965年に協力隊初の派遣国となったラオス。
中華人民共和国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーに囲まれた内陸国。
ボリビア

ラオス人民民主共和国

  • 面積:約24万平方キロメートル
  • 人口:約733.8万人(2021年、ラオス統計局)
  • 首都:ビエンチャン
  • 民族:ラオ族(全人口の約半数以上)を含む計50民族
  • 言語:ラオス語
  • 宗教:仏教

※2023年2月3日現在
出典:外務省ホームページ     

  • 派遣実績
  • 派遣取極締結日:1965年11月23日
  • 派遣取極締結地:ビエンチャン
  • 派遣開始:1965年12月
  • 派遣隊員累計:1,051人

※2023年5月31日現在
出典:国際協力機構(JICA)

隊員が首相へ活動報告
政府からも信頼を寄せられる協力隊事業

フランスの植民地を経て1953年に独立したラオスでは、65年に青年海外協力隊の第1号が派遣された。戦乱や政変で派遣は一時中断したが、協力隊への信頼は厚い。JICAラオス事務所の長瀬利雄事務所長と、NGO–JICAジャパンデスクの田澤克之さんに取材した。

お話を伺ったのは

長瀬利雄さん
長瀬利雄さん
JICAラオス事務所長

PROFILE
1989年海外経済協力基金(OECF、現JICA)入職。OECFハノイ事務所駐在員などとして勤務。組織変更・統合後、JICAベトナム事務所次長、タンザニア事務所長を経て、2021年より現職。現在までに円借款の案件形成、審査、案件監理、事後評価を中心に、総務部、財務部、研究所などで幅広い業務に携わる。「信頼で世界をつなぐ」「ラオスに寄り添う」をモットーに、日々奮闘・精進中。

田澤克之さん
田澤克之さん
村落開発普及員/2009年度3次隊・北海道出身

PROFILE
中学校の社会科の教諭として3年間勤務後、協力隊に参加。ラオス南部のサラワン県教育局に配属され、小学校を巡回して算数や保健の指導、身体測定などを実施。週末は子ども文化センターで日本の昔話の読み聞かせなどもした。国際協力NGO「IV-JAPAN」スタッフとしてラオスでの職業教育などに従事。2022年より、JICAラオス事務所でNGOデスクとして勤務。

   青年海外協力隊の初派遣から今年で58年。「第1号となったラオスの稲作、野菜、日本語教師職種の5人の写真は、今もJICAラオス事務所に掲げられています」と話すのは、長瀬利雄所長だ。戦乱や政変で派遣は一時中断したが、ラオスには現在までに1000人以上の隊員が派遣されている。

「近年の課題は、教育や保健医療、都市と地方の経済格差です。教育では2016年から、小学校の算数の教科書と指導方法を開発するJICAの技術協力プロジェクトが進んでいます」。この教科書を使って教える隊員の派遣要請も多く寄せられているという。

   また、スポーツ分野では「隊員たちが指導した柔道や水泳の選手が東京2020オリンピックや東南アジア競技大会(SEA Games)などに出場しています」。

   村人の収入向上を目指すコミュニティ開発や手工芸の隊員は、各地の特産品作りを後押しする。経済発展で伝統文化が失われないよう、文化保護の役割を担うことも期待されている。

王政だった1970年頃のビエンチャンの街中。左上に日本語の店名の看板がある(写真提供=桑原さん)

王政だった1970年頃のビエンチャンの街中。左上に日本語の店名の看板がある(写真提供=桑原さん)

「ラオス政府の協力隊への厚い信頼を感じるのは、ラオスの首相への表敬が02年以降、コロナ禍の一時期を除き毎年行われていることです。現役隊員のほぼ全員が首相官邸に伺い、代表者がラオス語で活動報告を行います」。23 年春募集も公共・公益事業、農林水産、人的資源、保健など、幅広い分野に新規で50件の要請が挙がった。

   ラオスでは、首都ビエンチャンを中心に経済発展が著しく、近年は中国などの融資によるインフラ整備が進んでおり、コーヒーなどの農作物への投資も増えている。首都と中国・雲南省の昆明を結ぶラオス中国鉄道はその象徴だ。

「債務の残高はラオスの国内総生産(GDP)を超えるともいわれ、懸念の声もあります。しかし、この鉄道は人や物の流れを活発にし、内陸国のラオスに大きな恩恵をもたらしています」

   ラオス事務所NGOデスクの田澤克之さんは、「ラオスの人々は、10年後、今より良くなっていると明るい未来を信じている人が多く、成長の様子が感じられます。若い世代が多いので、将来の話になると『収入が増える』『国外にも旅行に行ける』といったポジティブな答えが返ってきます」と話す。

   SNSの配信サービスを活用した衣類や雑貨のオンライン販売も広がり、町には店舗が増え、経済成長を感じられるラオス。協力隊OVでもある田澤さんに活動する際の注意点を伺ったところ、「ラオスの人ははっきり断ったり、否定したりしません。曖昧な返事に腹が立つこともありますが、これも優しさの一つであると理解することが大切です」とアドバイスいただいた。焦らず、場に慣れながら協力者を探していくことが大事なようだ。

Text=三澤一孔 写真提供=ご協力いただいた各位

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