先輩隊員のシューカツ記

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

【今月の先輩の就職先】菊川市市民協働センター

鈴木貫司さん
鈴木貫司さん
エクアドル/青少年活動/2018年度2次隊、2022年度9次隊・静岡県出身

就職先:菊川市市民協働センター
事業概要:市民団体や企業、学校、行政などをつなぐ中間支援センターとして市民活動を支援。地域の講座・セミナー、活動の情報収集・発信なども行っている。

鈴木貫司さんの略歴

  • ▶1992年          静岡県生まれ
  • ▶2016年          大学時代にNPO法人わかもののまちの活動に関わる
  • ▶2018年3月     大学卒業
  • ▶2018年10月   青年海外協力隊員としてエクアドル赴任
  • ▶2020年3月     コロナ禍による一斉帰国
  • ▶2020年6月     小学校の臨時採用教員に
  • ▶2022年3月     教員を退職
  • ▶2022年6月     エクアドルに再赴任
  • ▶2022年12月   任期を終え帰国
  • ▶2023年1月     菊川市市民協働センター入職

若者に関わる仕事がしたい
学生時代から一貫した思いが現職に結びついた

   東日本大震災の時、仮設住宅でのボランティア活動に携わったことがきっかけで子どもに関わる仕事をしたいと思い、大学の教育学部に入学し直した鈴木貫司さん。学生時代に若者の社会参画を促進するNPO法人わかもののまちで活動し(※1)、若者の交流拠点の運営に携わったことで、学校教育よりも社会と若者をつなぐユースワーク(※2)に関心を持つようになった。そんな時に、JICA海外協力隊でエクアドルの青少年活動隊員を募集していることを知った。

「エクアドルのロカフエルテ市役所に赴任し、市内に複数ある青少年活動団体を支援するという要請でした。まさに自分がやりたいことだと思い、すぐに応募しました」

   エクアドルでの活動は、約1年半後にコロナ禍で中断した。待機期間は教員として地元の小学校に勤務した。

「その間、活動終了後に何をするか、ずっと考えていました。若者に関わりたいという思いは一貫していたのですが、自分が企業で働くことは想像できず、どういった仕事が良いか、いろいろと探していました」

   そんな鈴木さんに声をかけてきたのが、静岡県の菊川市市民協働センターだった。同センターでは、若者に特化したスキルを持つ専門スタッフを探していたところ、鈴木さんが学生時代に活動していたNPO法人を通じて鈴木さんのことを知り、センター長自らアプローチしてきた。

「自分の経験を生かせる、そして自分を必要としてくれている。これも何かの縁だと思い働くことを決めました」

   若者支援と聞くと、すでにある地域の活動に若者を巻き込み地域活性化につなげることをイメージしがちだが、そうではないと鈴木さんは言う。

「若者は未熟な支援対象ではなく、一緒に社会をつくっていくパートナーとして関わっていくことを大切にしています。若者が地域の中で、自分のやりたいことを実現できるようにサポートし、結果、地域への愛着やまちづくりにつながっていけばと考えています」



1.協力隊時代   2018年10月~2020年3月

市内の若者グループを巡回し青少年の健全育成やリーダー育成に取り組んだ

市内の若者グループを巡回し青少年の健全育成やリーダー育成に取り組んだ




要請内容は、エクアドルのロカフエルテ市内に複数ある青少年活動団体への支援や助言でした。私は地域に点在する団体を回り、活動がスムーズに進むようにファシリテーター、コーディネーターとして活動しながら、余暇活動として料理教室や日本語教室を行いました。その中で、地域の課題に関心のある若者たちのグループの立ち上げにも関わりました。1年たった頃、活動の中心を地域の中学校や高校への出張授業に移し、異文化理解やリーダーシップについてより多くの若者へアプローチするよう努めました。しかし、任期途中の2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大により一斉帰国となりました。

2. 小学校の臨時教員   2020年6月~2022年3月

帰国後は、静岡県浜松市の教員採用試験を受験し、産休の先生の代替教員として小学校で働くことになりました。その後、再赴任を希望する隊員は「待機」を選べることになったため、私は待機を選び、再赴任できる日を待ちました。

3.協力隊時代(再赴任)   2022年6月~12月

エクアドルの若者に書道を教える鈴木さん

エクアドルの若者に書道を教える鈴木さん




2022年1月に再赴任できるとの連絡があり、小学校を退職して、再度エクアドルに向かいました。しかしコロナ禍によりさまざまな活動が中止され、私が立ち上げに関わったグループも自然消滅していました。とはいえ前回の活動や人脈が基盤となり、多くの方の協力が得られるようになりました。そこで青少年グループ立ち上げに取り組む現地のNGOとも協働し、若者向けのプロジェクトの企画・運営に取り組みました。護身術(柔道)や日本語、日本文化教室を開催したほか、若者キャンプや日本の高校とのオンライン交流会も実施しました。

4.オンラインで面接   2022年11月

エクアドルに滞在中、菊川市市民協働センターから若者のまちづくり活動を支援するコーディネーターを探しているとの連絡がありました。学生時代に活動していたNPO法人わかもののまちから私のことを聞いて連絡をくれたのです。そしてオンラインで、センター長から活動内容や私に求めていることなどについて話を聞きました。私からは、若者に関わる活動がしたいと一貫してきたことや、エクアドルでの活動を説明しました。表現が苦手な若者には、考えや思いを引き出せるような場を整えることを重視したことなど、活動で工夫していることも伝えました。自分がやってきた活動をきちんと伝えられることは大事だと思いますし、ストーリーに組み立てて伝えると相手に響くと思います。

5.帰国   2022年12月

帰国後に協働センターを訪れ、入職の意思を伝えました。

2023年1月 入職

現在の仕事

現在の職場で若者たちの活動をサポートする鈴木さん

現在の職場で若者たちの活動をサポートする鈴木さん

市民協働センターでは「菊川まちづくり部プロジェクト」を実施しています。菊川のまちづくりに興味のある高校生、大学生、社会人が、自分たちがやりたいことを実現することで、自分たちの住みたいまちを自分たちでつくっていくという活動です。私が中心となって担当し、コーディネーターとして、場づくりやプログラム、事業計画の作成、イベントの企画など、忙しく動いています。若者が地域と関わりながら自分のやりたいことを実現していく姿を見るのは、私にとって大きなやりがいになっています。

後輩へメッセージ

会社に就職すること以外にも、いろいろな働き方があります。働き方を限定せず、何をしたいのか、どう生きたいのかを自分に問い、それを実現するための仕事を選んでほしいです。私の場合、協力隊の活動で、若者の気持ちをしっかり聞くこと、誠実に向き合うことなど、若者との向き合い方を学びました。また、菊川市には南米出身の労働者が多いため、協力隊で培った語学(スペイン語)や、多文化理解が役に立っています。人脈を大切にしながら、協力隊で得られた力を生かして進んでほしいと思います。

※1 今年度4月から再びNPO法人わかもののまちのスタッフになり、静岡市で行われている高校生まちづくりスクールの講師を担当。

※2 ユースワーク…家庭・学校・職場以外の場所で、若者の居場所づくりや地域参加などの活動を通し、青年の成長を支える取り組み。専門的に担う人材は「ユースワーカー」と呼ばれる。

Text =油科真弓 写真提供=鈴木貫司さん

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