先輩隊員のシューカツ記

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

【今月の先輩の就職先】和歌山県庁

原 奈央さん
原 奈央さん
サモア/小学校教育/2018年度3次隊、2022年度9次隊・和歌山県出身

就職先:和歌山県庁
事業概要:紀伊半島の南西側に位置する和歌山県は、豊かな海と山地に囲まれ、果物や野菜栽培、漁業が盛んなほか、観光資源も豊富。各地域に県の振興局があり、地域に密着した県政を行っている。

原 奈央さんの略歴

  • ▶1992年          和歌山県生まれ
  • ▶2017年4月     大学院卒業後、小学校の講師として勤務
  • ▶2018年3月     小学校を退職
  • ▶2019年1月     協力隊員としてサモアに赴任
  • ▶2020年3月     コロナ禍のため一時帰国
  • ▶2020年12月   JICA和歌山デスクに国際協力推進員として勤務
  • ▶2023年1月     JICA和歌山デスクを退職
  • ▶2023年2月     サモアに再赴任
  • ▶2023年3月     帰国
  • ▶2023年4月     和歌山県庁に入庁

JICA和歌山デスクの経験が
地域の魅力に気づくきっかけになった

   大学院時代にバングラデシュ出身の留学生と出会い、海外に興味を持つようになった原 奈央さん。「いつか海外で働きたい」と思いながら小学校で理科の講師をしていたが、友人から「『いつかやろう』は、結局、やらないよ」と言われ一念発起、退職して海外に行くことを決めた。

「社会人の経験が浅い自分に何ができるか考えた時に、協力隊なら挑戦できると思い応募しました」

   配属先は南太平洋サモアの小学校。基礎計算力アップを目指し、原さんは学習到達度が遅い子どもたちに少人数での授業を実施。簡単な問題で解ける喜びを感じてもらうことで、子どもたちのやる気を引き出していった。

   しかし、2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大により日本に一時帰国。JICA和歌山デスクで働きながら渡航再開を待ったが、サモアは水際対策が特に厳しく、渡航再開も見通せなかった。「サモアには戻れないかもしれない」と考え始めた原さんが、就職先として真っ先に思い浮かべたのが県庁だった。

「和歌山デスクの仕事では、県内全域あちこちに出向いて活動していました。その中で、和歌山で生まれ育った私も知らなかった地元の良さに気づくと共に、いろいろな人と出会うことで地域の役に立ちたいという思いが強くなっていきました。県庁で働いている協力隊OVに、海外出張や海外赴任があることも聞きました。そこで、チャレンジする気持ちで県庁の採用試験を受けることにしました」

   県庁の採用が決まった後、協力隊事務局からサモアへの渡航が再開されたとの連絡が来た。再赴任するか聞かれたが、迷わず再赴任を決断した。県庁にも事情を説明し、入庁前の短期の再赴任が実現した。

   現在は、和歌山県の新人職員として、有田地域の魅力発掘に取り組んでいる原さん。

「いずれは、県庁職員の立場で、教育や国際協力にも携わりたいと思っています」



1.協力隊時代   2019年1月~2020年3月

配属先のレウルモエガ小学校の生徒たちと原さん

配属先のレウルモエガ小学校の生徒たちと原さん

要請内容は、小学校4~8年生(日本の小学3年生~中学1年生)の理科・算数の指導です。配属先の小学校は先生の数が足りないため、1人の先生が複式学級で2学年同時に授業をしていました。最初の半年は、担任の先生を手伝っていましたが、途中からは授業についていけない子どもたちを別の教室に分け、私が計算の基礎を教えることにしました。また、宿題が学力に合っていなかったため、子どもたちが解ける簡単な内容に変えました。問題が解けることが嬉しかったのか「もっと宿題を出して」「答え合わせをして」と、算数に興味を持ってくれるようになり、私も嬉しかったです。

2.JICA和歌山デスク   2020年12月~2023年1月

帰国後しばらくは短期のアルバイトをしていましたが、再渡航には時間がかかりそうだということで、募集していたJICA和歌山デスクに応募し、国際協力推進員として働くことになりました。主な仕事は、学校の出前授業、協力隊の応募相談、民間連携の推進など、和歌山県でのJICAの窓口、広報活動でした。

3.和歌山県庁に応募   2022年5月

提出書類 ▶履歴書、自己アピール論文

一般行政職には「通常枠」の他に特定分野の活動に打ち込んだ人を対象にした「特別枠」があり、私はJICAでの経験を生かすため特別枠に応募しました。自己アピール論文には、協力隊の経験がJICA和歌山デスクの仕事に生かせたことや、視野が広がったこと、そして、和歌山デスクの仕事で改めて気づいた和歌山の魅力を広く知ってもらいたいと思うようになったことを書きました。

4.1次試験   2022年6月

1次試験は、公務員として必要な一般知識や能力を問う基礎能力試験、行政や法律など専門的知識を問う専門試験、論文です。論文のテーマは、「コロナ禍で生じた課題を一つ挙げ、その解決のために県が取り組むべき施策について、あなたの考えを述べなさい」だったと思います。テーマは試験当日に出されるため、過去の問題から傾向を考え自分なりに準備はしていましたが、予想外の出題にパニックになり、何を書いたかあまり覚えていません。

5.2次試験   2022年7月

2次試験の面接では、サモアでの協力隊の活動や生活について聞かれました。それについては想定していたので、簡潔に、しっかり答えられたと思います。一方で、「特別枠で応募しているが、協力隊の経験は特別なのか」という想定外の質問にはうまく答えられませんでした。

6.採用決定   2022年8月

7.サモアに再赴任   2023年2月

前回とは違う首都近郊の小学校に配属され、主に8年生を担当しました。再赴任中、1日休みをもらって以前の学校を訪問し、かつての教え子やホストファミリーに再会することができました。子どもたちが大きくなっていて感動しました。短期間でも、戻れたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

2023年4月   入庁

現在の仕事

山々に広がる畑で育つ有田みかんは全国的に有名

山々に広がる畑で育つ有田みかんは全国的に有名

パンダの着ぐるみを着て有田地域のPRイベントを盛り上げる原さん

パンダの着ぐるみを着て有田地域のPRイベントを盛り上げる原さん

和歌山県の有田地域を管轄する有田振興局地域振興部企画産業課に所属し、地域の観光をPRする仕事をしています。有田地域は有田みかんが有名ですが、他にもしょうゆ発祥の湯浅町、有田川町の棚田、広川町のビーチ、熊野古道など、魅力がたくさんあります。今はそれらを日本や世界に発信するため、地域を回って新たな魅力を発見しようとしているところです。県庁は数年ごとに異動があるので、これからもいろいろな経験をさせてもらえると思います。



後輩へメッセージ

私は学生時代も、協力隊時代も、県庁に入りたいと思ったことは一度もありませんでした。しかし、協力隊での活動がJICA和歌山デスクでの仕事につながり、そこでの経験、出会いから地域のために県庁で働く道もあると気づくことができました。将来の夢、目標も、出会う人、経験によって変わっていくものだと思います。その時々の人との出会い、経験を大切にしたら、いろいろな将来が見えてくると思いますし、それを大事にしてほしいです。

Text =油科真弓 写真提供=原 奈央さん

知られざるストーリー