青年海外協力隊事務局では、2019年度以降、毎年度、帰国5年後隊員に対してアンケートを実施している。その中に「隊員活動を通じて獲得が期待される19の資質・能力」についての実感調査がある。今回、22年度に帰国したOV6人に、協力隊経験を通じて「身についた」「発揮されている」と感じる資質について、派遣国でのエピソードと共に話を聞いた。
看護の専門学校を卒業後、看護師として関西の病院で約15年間勤務。その間、フランス語を学ぶため1年間フランス留学も経験する。協力隊に参加するため2020年1月から派遣前訓練に入ったが、コロナ禍となり派遣が延期に。待機期間を経て21年3月に派遣。現在は都内の病院で看護師として勤務。
大学時代にバックパッカーをしながら、アジアやアフリカのNGOなどでボランティア活動に従事。卒業後、スポーツメーカー勤務を経て協力隊に参加。2019年12月にマダガスカルへ派遣されるも、コロナ禍の帰国を経て21年9月に再派遣。現在、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン職員。
大学卒業後、医療機器メーカー勤務を経て大学院へ。在学中に協力隊に短期で参加。その後小・中・高校の教員免許を取得し、神奈川県の公立高校で5年間勤務後、現職教員特別参加制度を利用して協力隊に参加。コロナ禍で派遣予定国が4回変わった。帰国後復職し、高校教諭。
体育大学を卒業し、教員として千葉県内の公立中学校と小学校勤務を経て、協力隊に応募。2020年3月に派遣前訓練は終えたが、直後にコロナ禍で派遣が延期となり、21年1月にカンボジアへ派遣された。現在は広島大学大学院で国際教育開発プログラムに所属しており、広島県の高等学校でも保健体育を教えている。
大学で看護を学び、養護教諭として5年間勤務。2018年10月より協力隊員としてスーダンで活動していたが、情勢悪化によりエジプトへ任地変更。渡航半年で新型コロナウイルス感染拡大により一斉帰国し、待機期間を経て22年6月に再赴任した。現在は保健師として大阪府内の役場に勤務。
中学1年から剣道を始める。大学卒業後、都内公立学校の教員となり、校長職などを歴任。定年退職後、シニア海外協力隊としてエクアドルへ。2019年1月に長期派遣でアルゼンチンへ。コロナ禍の待機期間を経て、22年6月に再赴任。現在はシニアボランティア経験を活かす会などで自らの経験を発信中。
1. 主体性:物事に進んで取り組む力
2. 働きかける力:他人に働きかけ巻き込む力
3. 実行力:目的を設定し確実に行動する力
4. 課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
5. 計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
6. 創造力:新しい価値を生み出す力
7. 発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
8. 傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
9. 柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
10. 状況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
11. 規律性:社会のルールや人との約束を守る力
12. ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力
13. 外国語でのコミュニケーション能力
14. 異文化理解・活用力:異文化の差の存在を認識し、異文化の差を良い悪いと判断せず、興味・理解を示して柔軟に対応すること。また、多様な人々の強みを認識し、それらを引き出して新しい価値を生み出すこと
15. 現場力:持っている技術や知見を環境に合わせて創意工夫し実践する力
16. リスクマネジメント能力:健康や安全管理をはじめとするさまざまなリスクを事前に予測し、その回避や軽減のために周囲の環境や自己を管理・運用する力
17. へこたれない力:困難な状況でも諦めずに努力する力や、物事を前向きに捉える力
18. 自己肯定感:自分の在り方を積極的に評価でき、自らの価値や存在意義を肯定できる力
19. 社会貢献意識:社会のために役に立ちたい意欲
※「隊員活動を通じて獲得が期待される19の資質・能力」は、JICAが設定したもの。過去の調査研究や資料において、隊員の資質・能力に係る記述を確認し、類似するものを24の要素にグループ化し、分析して設定した。2019年度~21年度の帰国後5年後隊員に実感調査を行った結果は、以下の「JICAボランティア事業第4期中期計画評価報告書概要」で公開されている。
https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/publication/report/pdf/evaluation_02.pdf
Text=新海美保 写真提供=ご協力いただいた各位