※2023年6月30日現在
出典:外務省ホームページ
※2023年9月30日現在
出典:国際協力機構(JICA)
50年続いた内戦に和平合意が成立し、経済成長が期待されるコロンビア。
平和構築を重視するJICA事業の下、協力隊員が進める格差是正や地域開発にも期待が高まる。
お話を伺ったのは
PROFILE
JICAコロンビア支所長。民間企業を経て、1998年国際協力事業団(現JICA)入団。ブラジル事務所、経済開発部、JICA横浜などで勤務。アンゴラフィールドオフィス代表、ブラジル事務所長、評価部次長を経て、2022年5月より現職。
「日本ではあまり知られてはいないかもしれませんが、コロンビアは中南米の国の中では、大きな国の一つです。人口は約5100万人で、ブラジル、メキシコに次ぐ第3位。面積は日本の約3倍で、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ペルーに次いで第5位。南米で唯一、大西洋・カリブ海と太平洋に面している国です。カリブ海や太平洋沿岸、アマゾン地域は低地ですが、国土の南北をアンデス山脈が縦断し、首都ボゴタはアンデスの高地、標高2600メートル付近にあります。カリブ海沿いは熱帯性気候ですが、ボゴタは年中気温が低く、断熱性の衣類が手放せません」と話すのは、JICAコロンビア支所の佐藤洋史支所長だ。
国名は、1492年にアメリカ大陸に到達したクリストファー・コロンブスに由来する。15世紀以降、先住民やその土地はスペインの支配下に置かれ、さらに、多くの黒人奴隷がアフリカから連れて来られた。19世紀に入るとクリオージョ(現地生まれのスペイン系白人)がスペイン本国からの独立を志向し、コロンビア共和国(グラン・コロンビア)として現在のエクアドルやベネズエラ、パナマといった地域と共に独立を果たす。その後、各地域の分離独立が続き、1903年には現在の領土となった。
人口の約1%が先住民で、75%が混血。欧州系と先住民、欧州系とアフリカ系、先住民とアフリカ系などの混血があり、地域によって特徴がある。
60年代以降、貧富の格差も要因となり、政府と左翼ゲリラとの内戦が続いて麻薬組織も暗躍したが、2016年、政府と約50年にわたって戦闘を続けてきた左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」との間で和平合意が成立した。22年の大統領選挙では、グスタボ・ペトロ氏が勝利し、同国初の左派政権が誕生。ペトロ政権は、貧困層が多い地域の開発を重視している。
JICAがコロンビアに拠点を開設したのは1980年。「和平合意以前から平和構築を柱に据え、地雷対策や地雷で被害を受けた障害者の支援に力を入れています。格差縮小のための農村振興や特産品開発、人材育成も進めています」。
協力隊の派遣は85年に森林経営隊員と体育隊員から始まり、和平合意の前も安全確保を最優先にしながら、脈々と途切れることなく続いてきた。累計の派遣者が最も多いのは教育分野で、日本でJICAの研修を受けたコロンビア人(帰国研修員)と連携した活動もあり、理科や数学の教科書を一緒に作った事例もある。さらに、農業や漁業など第1次産業に関する隊員の派遣者数も多い。
「仕事があり、生活水準が向上すれば、武装ゲリラや麻薬組織に加わる住民は増えないでしょう。コーヒーや花卉が有名ですが、協力隊員の活動からこれらに続く特産品が生まれることも期待しています」
Text=三澤一孔 写真提供=佐藤洋史さん