※2024年1月19日現在
出典:外務省ホームページ
※2024年2月29日現在
出典:国際協力機構(JICA)
中米で2番目に協力隊派遣が始まったコスタリカ。
中進国であるこの国での協力隊事業の特徴をJICAコスタリカ支所に聞いた。
お話を伺ったのは
PROFILE
JICAコスタリカ支所長。1982年国際協力事業団(現JICA)入団。ホンジュラス、中南米部、ジャマイカなどでの勤務を経て、2022年5月から現職。
テノリオ火山国立公園内を流れるセレステ川の美しい滝。エコツアーが盛んなコスタリカでは、隊員たちもよく自然散策を楽しんでいる
中米に位置するコスタリカは、四国と九州を合わせたほどの国土に約500万人が住む小国だ。豊かな生態系を守るため全土の4分の1を国立公園や保護区にし、電力のほぼ100%を再生可能エネルギーで賄う環境先進国として知られる。16世紀以降、スペイン植民地を経て1821年にグアテマラなどと共に独立するも、メキシコへの併合などがあり、48年に真の独立を果たす。20世紀に入り、1948年に内戦を経験するも翌年に憲法を改正し軍隊を廃止。中米で最も進んだ民主主義国家として教育と医療・福祉に力を入れ、安定した社会を築いてきた。
青年海外協力隊の派遣は中米で2番目の74年に始まり、この50年間の協力分野は教育や農林水産、保健医療、日本語教育と多岐にわたり、現在は特に環境教育、日本語教育、社会的弱者支援に関わる要請が増えている。また、初代隊員4名全員が柔道や水泳などスポーツの職種で、スポーツを通じた青少年育成に長年貢献していることも特徴だ。特に野球では、2023年から長期派遣では初の女性の野球隊員が活動中であるほか、桜美林大学と連携し多数の短期隊員派遣を行っている。
既に高中所得国の仲間入りを果たしたコスタリカだが、カリブ海沿岸・国境地域などの地方と都市部の格差が大きく、環境保全でも廃棄物処理などの課題が残る。コスタリカ支所の高野剛所長は、「対コスタリカの協力は格差是正と環境分野が主な柱です。今、隊員派遣は都市部中心ですが、24年度中には地方へも増やしていきたいと考えています」と話す。さらに「コスタリカは50年に及ぶJICAの協力で多くの技術や知見を培っており、それを他の中南米域内に共に広げる心強いパートナー国です。隊員活動の成果も域内協力につながっていくと期待します」。
本土から550キロメートルの太平洋上に浮かぶ国立公園のココ島。国土面積と比べて領海が広いことを誇りとするコスタリカ人も少なくない(写真提供=Área de Conservación Marina Coco)
OVで、今はJICAコスタリカ支所に企画調査員[企画] として勤める大澤正喜さん(生態調査/パナマ/1991年度3次隊、シニア隊員/コスタリカ/村落開発普及員/2001年度0次隊)は「技術水準の高い要請が多く配属先の知識も豊富ですが、それを実行に移す上でギャップがあり、その理由を共に探って実行策を考えていくことが重要です。そうした活動成果が中南米地域のスタンダードになる可能性を秘めています」とつけ加える。
コスタリカ人の気質は日本人にも理解しやすいというのは、ナショナルスタッフとしてボランティア事業を担当する五十嵐彩子さんだ。「距離感が近すぎず、相手を尊重して話し合いで物事の解決を図る平和主義な気質があります」。また、他のスペイン語圏にはない独特の〝プーラ・ビダ〟という言葉があり、「直訳すると『ピュアな人生』という意味ですが、『最高』『絶好調』などのポジティブなメッセージとして使われます。家族が元気なこと、ご飯が食べられることなど、ささやかなことを幸せだと感じられる人たちです」。
Text=工藤美和 写真提供=JICAコスタリカ支所