中学時代にニュージーランド、高校時代にカナダへ短期留学。大学時代にもアメリカへの1年間の留学を経験した。2018年よりグアテマラ郊外の村落に派遣され、観光開発などに携わる。現在は熊本県山都町に移住し、地方創生に関わるコンサルティングの仕事に就いている。
高校時代から憧れていた協力隊にホワイトマクファレインさんが応募したのは23歳の時。特に引かれたグアテマラの案件があったのだが、まだ社会経験も実務経験も浅く、語学という武器があれば合格の可能性が高まるのではと考え、応募書類の提出と同時に自らスペイン語の学習を始めた。
「1コマ30~40分ほどのオンライン授業を週に2、3回程度、出勤前に受けていました。その後、合格が決まって派遣前訓練に入る前まで、半年ほど続けました。訓練所に入ってからは、単語を覚えるのに自分の記憶や思い出とひもづけると定着しやすいと考え、特に身の回りにある物や『今自分が感じている感情』をスペイン語で言えるようにいつも意識して過ごしていました」
早くから熱心に勉強したかいあり、グアテマラ赴任後の現地語学研修では、早々に現地の人の言葉をおおむね聞き取れるまでになっていたという。
国外のNGOと共に任地で実施したコミュニティツーリズム会議にて。開催側として中南米各国や北米、欧州からの参加者をもてなした
語学力の伸びに手応えを感じながら、任地での活動を始めたホワイトマクファレインさん。要請は、グアテマラの古都アンティグアの郊外に位置するサンクリストバルエルアルトという人口数百人ほどの村での観光開発。村で暮らしながら順調に人々の間に溶け込んでいったのだが、3カ月ほどして壁に直面した。
「スペイン語力が研修時から伸びていないと気づいたんです。特にアウトプットする時に、同じ単語や言い回ししか使えていない。限られたコミュニティでは毎日同じようなことしか話しませんし、住民たちは完璧でない私のスペイン語に慣れ、間違っていても合わせてくれるようになっていました」
観光開発の活動を発展させるには、自治体や国の役職のある人たちとのやりとりも必要になる。「伝わればいい」レベルの語学力では話を聞いてもらえないと考え、空いた時間にアンティグア市街の語学学校へ通うことに決め、グループレッスンを受け始めた。そして先生の勧めで、スペイン語検定の一つ、DELE(※)の勉強を通じてビジネスやオフィシャルな場で用いられる表現を重点的に学習するようにした。 「経験上、興味のある内容はとても覚えが早いので、同じビジネススペイン語を学ぶにしても、例えば『スポーツビジネスのテーマで教えて!』と自ら教材を持ち込んだりしました」
アンティグアの街中に出た際には、アウトプットする相手を増やそうと街の人に積極的に話しかけて交友関係を広げ、任地以外の人が話すスペイン語にも触れ続けたホワイトマクファレインさん。赴任から1年ほどたつ頃には行政の担当者らとの会合にも不安なく臨めるようになった。さらに、アンティグアの友人や知人に込み入った話をできるようになったおかげで、村への観光客誘致のPRに協力してくれる人も現れ、一石二鳥の成果を得た。
「伝わりやすいからと身近な人とばかり話すのではなく、多様な立場の人と話すことが大切だと実感しました。隊員の任期は決して長くないので、早く、積極的に人々の間へ入っていくのが間違いなく有利だと思います」
※DELE…スペインの教育・職業訓練・スポーツ省が定めるスペイン語検定試験で、「Diplomas de Español como Lengua Extranjera(外国語としてのスペイン語免状)」の略称。
Text=海原美帆 ホワイトマクファレイン美樹さん